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嫌い

自分の周りにコロナの人が出てちょっとバタバタしております

フローレス家とナイトリー家では随分と贅沢をさせて貰った。食事はもちろん、お風呂での石鹸やシャンプーのおかげで髪の毛もお肌もつるつるピカピカ。ゲームのヒロインに一歩近付いた。自分の家に帰った時にビックリされたくらいだ。


そして今はエリザベスのためのアップルパイを焼いている。どう考えても普段エリザベスが食べているものより劣るけど。お母さんがリンゴで飾りを作ってくれたので、見栄えは大分良いが。


『本当に大丈夫かな』

「お母さんは貴方が入学する時からそう思っていたけど、何とかなってるでしょう?」

『それはそうなんだけど……』


ゲームで見てるからなぁ……。ゲームで起こってないことの方が心配になっちゃうけど、私が今現在やってる諸々の方がとんでもない事なんだろうな。


「迎えの馬車が来たけど」

『ぎゃー! まだパイが焼けてない! おかぁさぁぁぁん!』


お父さんが声をかけに来てくれた。

学園への行き来は学期ごとの最低限は国が馬車を出してくれている。正直助かると言うか、ある意味当たり前なのか。平民が王都に通うお金なんかないしね。


「出発する素振りで荷物を先に積んでもらって、途中で忘れ物がある振りをしなさい」

『お母さん、策士……!』


お母さんの言う通りさも今馬車に乗り込みますといった様子で玄関に向かい、出発しようというタイミングで大袈裟に慌てた様子で忘れ物を思い出し、その場をやり過ごした。


「ちょうど焼けたわよ」

『良かったー……!』


お母さんからアップルパイを受け取り、もう一度馬車に乗り込む。

エリザベスが待っている学園へ出発だ。




「良い休みだったようだな」

『……えっと』


エリザベスと約束していたお茶室にはなんとアレクサンダーも当たり前のように一緒にいた。


「ごめんなさいね。今日の事をアレクサンダー様にお話ししたら、“是非”来たいとおっしゃって……3人でお話する必要もあるかと思いまして……」

『それは確かに……』


用意してもらっていたお皿とカトラリーでアップルパイをアレクサンダーにそっと差し出す。


「美しいな。切るのがもったいないくらいだ」

『飾りは母がやりました』

「仲が良いのね、羨ましいわ」


……エリザベスのところは仲が良くないのだろうか。あまり突っ込まない方が良いかな。


「とても美味しいわ。このアップルパイはプライス家に持って行ったのでしょう? 彼は褒めてくれた?」


ニコニコとエリザベスが話しかけてくる。セヴァラスとのことを聞きたいのが半分、プライス領の話を切り出してくれたのだろう。


「プライス家に? 何故」


アレクサンダーは一度アップルパイに伸ばした手をピタリと止め、こちらを真っすぐに見つめた。


『冬に遊びに行ったんです。ウィンドレイクの雪景色を見たくて……』

「この冬はまたロイシュークと小競り合いがあったのだろう」


アレクサンダーはあからさまに不愉快そうな顔をしている。プライス家への不信感があるのだろうか。私への好感度はまだ対して上がっていない感じだし、嫉妬とかではないと思うけど……。


『はい、そうなんです。思っていたよりも戦いも激しくて……。プライス家の領主様とセヴァラス様がお怪我をされて、それを治療したら丸一日寝込んでしまいました』

「傭兵のせいで治安が悪いのも考え物でしたね、レナさん。次にあのような性的な嫌がらせをされるようなら、相手の名前を確認して警告することも出来るかと思います。私達には権限がありますからね」

『リッチ様……もしかして、あれから対策を考えてくださっていたんですか?』


やばい、エリザベスへの好感度が爆上がりしてる。あの後ずっとどうしたら良いか考えてくれてたんだ……。確かにこの世の中にも警察っているもんね。まぁあの時それを言ったとしてもその場にいない警察が頼りに出来るとは限らないけど。


「一体どういうことだ。何故エリザベスがそんなことを知っている」

「レナさんがウィンドレイクに行っていると聞いていたので、ロイシュークが攻めてきたという話を聞いてすぐに伺ったのです。ウィンドレイクの状況は元々気になっていましたから」

「あの家の人々は裏切り者だ。我々が気に掛ける必要はない」


え、嘘でしょ。

アレクサンダーは吐き捨てるように言った。普段からは考えられないほど冷たい声と表情で。ゲームの設定だから、頑ななのだろうか。


『……お言葉ですが、王太子殿下、ロイシュークの人々はずっと長い間苦しんでいるんです。日々の生活が守られていない人々に正義を守れという言葉が届くでしょうか。領民はどうなるのですか? プライス家に守られている人達は?』

「国軍ではなく金のない農民が土地を荒らしているだけだろう。今まで一度も、小さな砦すら取られたことのないただの小競り合いで……」

「それではアレクサンダー様。ウィンドレイクの領土の何割が、何度焼け野原となったかご存じですか? 農作物の何割が損害を受け、何人が死に、怪我をし、移住したかご存じですか?」

「エリザベス……」


加勢してくれたエリザベスに感謝が溢れて来る。今現在、ヒロインからの好感度が一番高いのは間違いなくエリザベスだ。決定。今年のパーティはエリザベスと行く。無理だ、エリザベスは婚約者がいる。くそ、ライバルキャラめ!


「私も知りませんでした。レナを訪ねて現地に赴いて、初めて知ったのです。私達が毎年の小競り合いと思っている戦いで、あの土地が、わが国がいかに傷付いているか。そしていかに復興していないのか、領民が苦しんでいるのか。私達は戦争をしないために、北の国との問題を解決しなければなりません」


えー……エリザベスすごい。アレクサンダーよりちゃんと国のこと考えてるんじゃないの? アレクサンダー絶対エリザベスと結婚した方が良いよ。その方が良い国王になれるに違いない。


『アレクサンダー殿下、プライス家の嫡男は私の友人です。どうか、ウィンドレイクへの対応を今一度ご検討いただけないでしょうか』

「…………君が、Bクラスに想う相手がいると噂が流れている」


なんで今その話? 私がセヴァラスの事が好きだとなんか問題があるんだろうか。私情が入ってると思われているのかもしれない。だけどエリザベスだって同じようなことを言っているのに……。


『私が彼を想っていることで、何か不都合があるでしょうか。私は平民の出身、分不相応だとは承知しております。ですが、思いを寄せることは、罪ではないはずです』

「君は国を代表する魔導士になる。自分がいかに重要な立ち位置にいるのか、慎重に考えて欲しい」


はぁぁぁ? お・ま・え・に・だ・け・は! 言われたくないんですけど!?


『私が誰であろうと、彼を好きになってどうして悪いんですか? 私にも彼にも婚約者がいる訳ではないですよね。無理やり婚約しようとしている訳でもないのに、咎められる理由が分かりません』

「それではどういうつもりで国の対応に口を出している?」

『一平民の意見として、同級生の一人として、殿下の友人としてお話しています。光の魔導士として国に意見書を出している訳ではないですよね? 個人的なお茶会での話ではありませんか。そういうつもりなら……』


私はアレクサンダーの前に置いてあったアップルパイをお皿ごと取り上げた。


『そういうつもりなら、これは友人のために作ったパイですので! 王太子殿下にはお出しできません! お口に合うと思えないので! リッチ様。今日は失礼させていただきます。また明日、教室で』

「え、レナさん……!?」


まだ切っていないアップルパイも一緒にバスケットに戻してその場を飛び出した。


アレクサンダーのばぁぁか! 平民の意見が聞きたいとか言っておきながら都合良すぎ! 嫌い!

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