表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/51

狙い

同じことを何度も言っている気がしてしまう。くどかったらすみません

本日二回目の荷解きだ。一回目がついさっきなのもあって手慣れたものである。

良い部屋だ。多分、貴族の屋敷の中では小さいんだろうけど、私からしてみればめちゃ広い。前世の私の部屋より広いよこれ。


と言うか、セヴァラスもパイを少し食べただけでお昼とか食べていかなかったけど大丈夫なのかな。そんなこと心配している私の方がおかしいのかとも思ったけど、アナさんが食事に呼びに来てくれた。


「レナさん、さっきはありがとう。大切な魔導具を貸してくれて、正直驚いています。セヴァラスの事をとっても信頼して想ってくださっているのね」

『いえ、あの……いつもセヴァラスさんは助けてくれるので。それに、大変な状況ですし』


魔導具は貴重なものだから、それを貸すのはやっぱり信頼の証とも言える。

もちろん私はセヴァラスのことは完全に信頼しているけど、それはゲームでの知識があるからだしね。


一階の広間に用意されたランチは私にしてみれば素晴らしいものだったけれど、アナさんには簡易的なものでごめんなさいと言われてしまった。状況的にそれどころじゃないし、人もいないし仕方ない。


「何があるか分からないから、今のうちに食べておきましょう。魔法は体力と気力を使うのでしょう?」

『ありがとうございます。そうみたいです、深い傷を治すと意識を失っちゃうこともあります』

「そうなの、私は魔法を使えないから……トーマスは魔法を使えるのだけれど、今はそれで苦しんでいて……。貴方に辛く当たってしまってごめんなさいね」


アナさんがはぁとため息を吐いた。魔法が使えることで苦しむなんて、どういうことだろう? 少し躊躇ったけど、わざわざアナさんから口にしてくれたことなので思い切って理由を聞いてみる。


「トーマスは素晴らしい魔導士よ、けれど先祖代々のこの土地を守るために領主として働いているわ。もちろんそれ自体は問題ないけれど……問題は今まさにこの状況。相手は当然、武器を使ってくるわ。もちろんこちらも。でも、魔法で相手を傷付けることは許されないの」

『えっ、どうして!? っ……どうしてなのですか?』

「戦争ではないから」


戦争ではない……?

現地では血が流れているのに、国が開戦していないから、魔法は使えないってこと?


『それは……禍魔法になるという事でしょうか?』

「国同士が開戦を認めていないと魔法を使った攻撃は国際問題になってしまうわ、相手もそれを狙っているのよ。魔法の力は全世界で恐れられているから……私たちが非道だと非難されてしまう。でも、命を懸けて一瞬を争う戦場で、あえて魔法を使わずに戦うのは難しいことなの」


そりゃそうだ。自分が死ぬかもって時に魔法を制御しようなんて考える余裕ないでしょう。と言うよりずるくない? それなら尚更こちらは開戦した方が良いのに、何で開戦しないんだろう。


「トーマスは……ロイシュークの民兵にほとんど無抵抗でいるしかないの。武器を振り切った時に魔法の力が影響する可能性もあるから……。彼は元々責任感が強くて……前線にはほとんど出られないことを苦痛に感じているのよ」


それってあまりにも切ない……。自分の領地なのに、魔法の関係ない武器で戦う事すら出来ないなんて。

だから私が魔法を使うのを見て複雑な思いだったのかな。領土の危機に自分は他人任せにするしかない状況なのに、私が何も考えなしで魔法を使って傷を治したから……。


トーマスさんが傷を負って1人で帰ってきたのも、一人で町まで傭兵を集めに行ったのも、自分が前線にいても出来る事がないからなのかな。


『そんな辛い思いをされていたなんて……。理解できません。国から兵士も来てくれていないみたいだし、一体どうして……』


ロイシュークの方が私達の国アルベドより国土は大きく、住んでいる人数も多い。土地全体が寒冷地帯で冬こそ生活が厳しいようだが、文明的にはアルベドよりやや進んでいるとされている。


ただ魔法と言う点でこちらが圧倒的に有利なはず、というか、アレクサンダーとジェームズルートで開戦すれば圧倒的に有利に進む。今開戦したとしてもアルベドが勝つ可能性は高いはずだ。それなのに何故、国王陛下はウィンドレイクへの攻撃を止めず、開戦もしないんだろう。


いや、それ以前に、ロイシュークはどうしてこんなに強気なんだろう。開戦したら負けてしまう相手に延々と攻撃を仕掛けるなんて。何か考えがあるんだろうか。


「私たちは、国王陛下はロイシューク側を完全な有責として開戦したいのだと考えているわ」

『完全な有責、ですか?』

「そう。例えば領土を侵して砦を制圧した、とか。国宝とも言える光魔法の魔導士を害した、とか」


―――光魔法の魔導士を害する……?


ゾクリと背筋が凍る。

それって、来年起こる事じゃん……。しかもアレクサンダーとジェームズルートではそれをきっかけに開戦する。アナさんの言うとおりである可能性が高い。


え? 私、と言うか、ヒロインって王子様達に愛されているんだと思っていたけど、戦争するための道具として利用されていたの?


いや、王子様達の気持ちはともかく、国王陛下は内心そのつもりでいたのかも……。


と言うか私ってもしかして、この国にとってものすごく大きな存在なの?

いや、そりゃそうだよね、私の誘拐をきっかけに戦争になるんだから……。そうなんだけど、それはアレクサンダーやジェームズの恋心のせいだと思ってた……。ただ単に、私が光魔法の魔導士ってだけで、私に何かあれば戦争になってしまうかもしれないんだ……。


少なくとも、アナさんとトーマスさんは、その可能性があると思っている。


「この国境線上の争いを制したところで、アルベドの国そのものには何の利益もないわ。現状、私達の領土は国益に大きな影響を与えていないし、毎冬の戦いも国からの援助はほとんどない。国にとってはほとんどマイナスがないの。それを自衛したところで、意味がないの」

『……国王陛下はロイシュークに……砦や屋敷を落とさせたい?』

「可能性の話よ。そうであれば、アルベドはロイシュークへ侵攻することが出来る。自衛でなく侵攻が出来るわ。国王陛下はロイシュークの土地を手に入れたいのではないかとトーマスは考えているわ」


でも、そうなったらウィンドレイクの人達はどうなるの?

砦が落とされて開戦したからって、その後は? 自分の領地を奪われてしまったことで不利益は?


国王陛下はプライス家を見捨てるつもりなの? ゲームでヒロインが誘拐された時はセヴァラスが死んでしまったからそれで済んでいたけど、プライス家の嫡子であるセヴァラスが死んでしまったら、ある意味プライス家の直系は途絶えてしまったと言う事だよね?

プライス家がその後どうなったのか、私は知らない……。


『……だから、トーマスさんは私がここにいるのを嫌がるんですね。私が誘拐されたら、プライス家の責任にされかねない』

「そういうことです。本来ならこんなことを貴方に話すべきではないのですが、貴方は何の躊躇いもなくトーマスの傷を治して、セヴァラスに魔導具を貸してくれました。それに貴方の行動が私達に大きく影響することは理解して欲しいと思ったの」


―――あぁ……私、バカだったな。

ゲームの世界を知っているだけで、なんでも知っているつもりでいた。ヒロイン目線の話しか知らないのに、あれこれ出しゃばって。大人は皆、私よりもっと複雑な世界で生きているんだ。


『すみません。自分の立場を自覚して、行動を改めます』

「貴方は本当に、とても良い子なのね。やっぱりセヴァラスのお嫁さんに来て欲しいわ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ