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イヤーフック

『あのぉ……もしかしてこの席固定ですか?』

「? 私はここで構わない」

「わざわざ変更する意味もないだろう?」


今年最後の魔法学は残念ながら座学だった。そして残念ながらまた私はハンサムと美形に囲まれて座っている。断れなかったのだ。


いや、圧がすごい。

両側もそうだけど色んなところからの視線がすごい。


魔法学は人数が少ないのが救いだけど……。

それでもドリスがいたら、場合によっては噂は竜巻のようにめちゃくちゃに広がってしまう。


アレクサンダーはドリスに何て言ったんだろう。クラスでの様子が分からないから何とも言えないけど、先日中庭で実技の授業をした時はドリスと一緒だったし……。


ゲームでもドリスには嫌われていたから、彼女からの好感度、と言うか嫌われ度は嫌がらせの内容で分かるはず。ゲームの進行度も予想できるかな。


座学の講師は今日もスミス先生のようだ。これはかなりラッキーなのだろう。本人が講義をやりたがっているとはいえ、スミス先生は特に忙しいらしいから。


あ、目が合った。

どうやらこちらに向かってくるようだ。何か話でもあるのかな? 王城にまた来いとかじゃありませんように……!


「ブラウンさん。話があります。授業が終わったら少し残ってください」

『はい、分かりました』


……王城に来いとかじゃありませんように!!!


今日の授業は禍魔法の続きだった。禍魔法については絶対に試験に出る、と言われていたが、範囲がかなり広い。過去の実例で何が有罪となり何が無罪となったか、かなり詳しく問われることもあるようだった。


誘拐されそうになって抵抗した件はセーフ、自分の恋人に手を出され逆上した件はアウト。だけど口論が行き過ぎて火を出してしまい火傷させてしまった件はセーフ……?


なんでやねん!

感情が高ぶると火が出ちゃうとかあるのか? 起こると雷がドカーンみたいな、そういう感じか?


―――魔法で切りつけるとかも出来るんだな。


火、水、風、土、光の属性があるものの、強い魔力はそれを直接相手の身体にぶつけると属性は関係なく負傷させてしまうことがあるらしい。


この事例では襲ってきた暴漢を切り裂いてる。風属性の人……。


もしかしてかまいたちを起こした、とか?

かまいたちって言葉では聞いたことあるけど、どういう仕組みで皮膚が切れているのかは知らない。

妖怪だ、超常現象だって話もあるけど、実際に起こりうる話なんだろうか。


それだったらさ……光の魔法ってフラッシュみたいに使って相手の目を眩ませたり、もっと言えば失明させたり出来るんだろうか……。


虫眼鏡と黒い紙を使って火をつけたりとか……。


考え込んでいると、ふいにトントンと指で手をつつかれた。ジョシュアだ。


(冬休み、楽しみにしているよ)


おかしいな。元々このゲームはヒロインが攻略対象を落とすゲームであって、攻略対象がヒロインを落とすゲームじゃないはずなんだけど。


最近はアレクサンダーの方がジョシュアより大人しい程だ。


……もしかして、アレクサンダーは私が自分の思い描いていたヒロインじゃないことを察し始めたのかな?


私に、と言うよりも、光魔法の女の子ってイメージに恋してたみたいな感じだったのかも。

ゲームのヒロインはアレクサンダーの思い描いた女の子そのものだったんだろうけど、私は私だしね。


(私も楽しみ。今は授業だからごめんね)


授業がめちゃくちゃ長く感じた。もう王城にでもどこにでも呼んでくれて良いからスミス先生の所に行きたい。

あのジンジャークッキーでさえ恋しい。


「……貴方はあの席で良かったのですか?」


先生に部屋に呼ばれて第一声がそれだった。


『出来れば距離を取りたいんですけど、色々あって……』


スミス先生は気の毒そうな顔をして紅茶を勧めてくれた。クッキーは先日のとは違うクッキーのようだ。


う、ものすごく……麦……。バサバサしてる……。


「貴方に良いニュースです」

『ケホッ、なんでしょう?』


パッサパサ、口の中パッサパサだよ! 紅茶を一息で半分ほどゴクリと飲み干す。ちょっと熱いけど頑張れ私!


「冬休み以降、貴方が医務室に協力するというお話ですが、学園長と医務室のポット夫人から了承されました。この件については国王陛下も賛成されています」

『それは良かったです。助かります』


スミス先生が言うには、怪我をした中で傷がやや深い生徒を中心に、まずポット夫人が生徒に了承を取り、私を呼ぶようにするらしい。

基本的には学園内を出歩ける時間に限り、私の授業中は呼ばないこと、呼び出されても私には断る権利があることが説明された。


『分かりました。でも、怪我人が出た時にどうやって連絡を取り合えば良いのでしょうか?』

「そのために、国王陛下がこちらの魔導具を貴方に差し上げたいとのことです。最先端のものですよ」


最先端! 最先端のものが国王陛下から? なんで国王陛下?

渡された魔導具は、シルバーに青い宝石のついた少し大きめのイヤーフックが2つ。全く同じデザインだ。


「それは風の魔法が込められた魔導具です。中央の青い宝石は元々1つだった宝石を魔導具師が2つに分けたもので、魔力を込めながら話すとそれを付けている者同士で会話をすることが出来ます」

『えっ!? すごい……!』


前世でこういう耳に引っ掛けるタイプのワイヤレスイヤホンが一時期流行ったけど、本当にそういう風に使えるんだ。しかもマイク機能付きってこと?


こんなの作れるなんて魔導具ってすごいな!

授業ではまだ魔導具が生み出された歴史とか、一般的に使われている魔導具の仕組みはどうだ、みたいなことをやっているから、最先端の魔導具は見たことがなかった。


「学園で生活する間は、片方はポット夫人が預かることになりますが、あくまでも貴方の所有物です。冬休みなど長期休暇の間は2つとも貴方が持っていて構いませんし、卒業後も貴方の物です。片方を誰かに貸しても良いですが、なくさないように。多少傷つけても壊れはしませんが、宝石が割れると効果はなくなります」


『えぇ!? そんな受け取れません! 壊したら困るし、それにまだ誰一人として傷を治していないんですよ。私がポット夫人からの呼び出し全部断っても知りませんよ!?』


最先端って言ってたし、めちゃくちゃ高そうじゃん。宝石も結構大きいし!


「貴方は既に王城で、国王陛下の部下の傷を治しています。剣士の腕の傷ですよ? 彼はあの後すぐに復帰して、腕には何の傷跡も残っていないそうです。魔導具はその褒賞でもあるとおっしゃっていました」


確かにあの傷は結構深かったけど! 剣士としては致命傷だったかも知れないけど!


「壊したらまた王城でどなたかの傷を治せば良いかと思います」

『そんなタイミング良く誰か怪我します!?』


随分けろっと言うなぁ……。スミス先生も火の魔法が使えることで色々優遇されてきたんだろうか。まぁ国王陛下と同期でお気に入りって事もあるかも知れないけど。


いや、まぁ正直くれるならありがたい。魔力を込めて話すって事は、この学園に入学している人は全員使えるってことだもんね。


と言うか、これをセヴァラスが持っていてくれたら、来年の冬に万が一私が誘拐されるイベントが起こってもセヴァラスと連絡が取れる?


……そんな訳ないか。腕が縛られていたような気がするし。多分。

それでもないよりはマシかな? いやこんな目立つ宝石一番に取られそうな気がする。そうだよ、盗まれるかも知れないよね!?


あ、でも対になってるってことは、両方一度に盗まないと意味ないか。売ってもすぐバレそうだし……。まぁこれが通信機になっているって知っていればだけど。


「どちらにしても、学園ではこれを使っていただきます。冬休みの間に慣れておいても良いかと思いますよ。相手が耳に着けていなければ、それが分かるようになっていますので、プライベートな時間や眠る時などは遠慮なく外して構いませんからね」

『……分かりました。ありがとうございます。』


良く考えて、大事に使おう。

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