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冬の予定

庭の木々の多くが葉を落とし、11月も過ぎ去ろうとしているのに不思議なことにこの世界はあまり寒さを感じない。王都なのもあって環境的に過ごしやすいのもあるのだろう。

前世で私が住んでいたところは海からの風が強くて気温以上に寒かったから本当にありがたい。


入学からもうすぐ3か月、皆の生活も噂話も大分落ち着いてきているように見える。


結局アレクサンダーは意を決して国王陛下に話を聞きに言ったそうだが、濁されてしまったらしい。ただどうも機嫌が良さそうだったと言っていたため、やはりアレクサンダーの動向を窺っているのではないか、というのがエリザベスの見解だ。


私も王城に行ったが、その時はジェームズと2人きりにされることはなかった。

ただジェームズはその場に同席し、私が明かりの魔法を使うのを感心した様子で見ていた。


フルフルは元気かと尋ねると、乗馬の大会に出るのだととても嬉しそうに答えてくれて、なんだかまだ幼い子どものようにも見えた。


その日はまた何か新しい魔法が出来る様になったら見せて欲しいと言われ解散となり、次の約束はされなかったためホッとした。


エリザベスとは今でも週1程度のペースでお茶会をしている。エマや他の令嬢はいたりいなかったりで、意外と楽しいものだ。


「お茶会じゃなくてサロンよ」


エマには呆れたようにそう言われる。確かにエリザベスをオーナーとしたサロンで間違ってはいないだろうけど、ギスギスした雰囲気もなく過ごしやすい。

このお茶会のおかげでBクラスにエマ以外の友達も出来た。


エリザベスが上手くやってくれているおかげなのか、Bクラスではヒソヒソと噂をされることはほとんどない。

私もお茶会で何度もジェームズとの関係を否定したし、陛下に頼まれて傷を治した時に気絶してしまった事を話したら『貴方も鍛錬の最中なのね』なんて優しく声をかけてもらえた。


ジョシュアの件に関しても、エマが一緒にいてくれるおかげで矛先が彼女に向くことが多く助かっている。

ジョシュアの好みの女性やどんな贈り物をすれば良いかなど延々と聞かれているのを見ると、なるほどジョシュアがエマを心配する理由も分かる。


アレクサンダーとジェームズ、そしてジョシュアの中で誰が一番好きか、と婚約者のエリザベスが目の前にいるにも関わらず話題になったこともあった。


その時ばかりは皆私の返答に注目してきたので、苦し紛れに『Bクラスに気になる人がいる』と答えたらそれはもう大騒ぎで、ただそれ以降皆との距離がグッと縮まった気がした。


セヴァラスは残念ながら今も孤立している。セヴァラスの方から打ち解ける努力をしていないこともあり、状況はあまり良くない。


お茶会でもセヴァラスの話はほとんど出ない。まるで存在しないかのように避けられている。

それでも、私が彼と魔導具学を受けていたり図書室で勉強したりしている事は皆知っているはずだ。私が気になる相手というのがセヴァラスだと勘付いている生徒も多いだろう。


エリザベスには何も言われていないが、彼女からも触れられたことはない。

セヴァラスは彼女と席が隣り合っている。会話することはないのだろうか。


―――冬休みにはプライス家の領地に行くんだよな。


ゲームでもヒロインは冬にウィンドレイクに行くことになっている。雪が積もるところを見たことがないヒロインが、セヴァラスに頼むのだ。


冬は敵襲があるかもしれないと苦言を言っていた彼も、最後には渋々といった様子で受け入れてくれる。


ヒロインが訪ねるとセヴァラスの母親はとても喜んでくれるので、セヴァラスが学園で肩身の狭い思いをしていないか心配していたのではないかと考えている。


来年の冬のイベントを考えると、彼の領土に行かなければ良いのではとも考えたが、実は例によってロイシュークからの攻撃があり、見回りをしていたセヴァラスの父親が肩を負傷してしまうイベントがあるのだ。


恐らく私が訪ねなくても負傷は避けられないだろうし、右肩の負傷というのは結構厄介だ。治せるなら治してあげたい。あわよくば彼のご両親に好印象を持ってもらいたいし……。


もちろんそのイベントでセヴァラスからの好感度もグッと上がる。出来れば避けたくないイベントだ。来年の冬の事は来年なんとかしよう。


『だから、ね? 良いでしょ? セヴァラス』

「ダメだ」

『雪が積もっているのを見たいの、それに湖が凍るんでしょう?』

「寒くて危険なだけだ」


まぁセヴァラスの言う事は最もだ。例えば前世の南の県から、雪が見たいって北の県に気軽に遊びに来られたら困るもんね。


前世で私の住んでいた土地だって、風の強さを知らないでマンションのベランダに布団とか干している人がいたら迷惑だもん。

リアルふとんがふっとんだ、になりかねない。これが高い所からだと結構危ないのだ。


『ちゃんと厚着していくから、ね?』

「もしもロイシュークが攻めてきて君に何かあったら一大事だ」

『え、心配してくれてるの?』

「光魔法の使い手に何かあったら、国から何と言われるか」


うぅ……。セヴァラス冷たい。ウィンドレイクの風みたいに冷たい。


『だって、冬休みの間中セヴァラスに会えないのは寂しいし……』

「…………」


ムスっとした表情でセヴァラスは地理学の課題をやっている。でもさっきから手は動いていない。


『お願い、すぐに帰るから。お昼について夕方には』

「……夜に出歩くのは良くない。一泊していけ」

『良いの!? やったぁ!』

「静かにしろ、図書室だぞ」


むぅと唇を結ぶ彼に思わず抱きつきそうになるのをこらえる。

早く冬休みにならないかな!


エマに相談して、可愛い洋服とか一緒に買いに行ったりして。あ、もちろんちゃんと防寒もしないと、セヴァラスそういうの怒りそうだから。

後何か手土産も考えないと! あまりお金はないけど、手作りのお菓子とか……うーん、食べて貰えるんだろうか……。


「何を百面相しているんだ?」

『嬉しすぎて、色々考えちゃって!』

「……治安が悪いから馬車は絶対に途中下車するなよ」


―――治安、か。


ゲームではプライス家の領地に住む人々はあまり現れない。屋敷と、ロイシュークとの国境線である山林だけだ。最寄りの町がどのようになっているのか、よく知らない。


『分かった、気を付けるね。でもとっても楽しみ。また予定を決めましょう』

「……あぁ」


僕も楽しみだと言ってくれたら良いんだけど。そこまでは望めないようだった。

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