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エリザベスとのお茶会

2人だけってお茶会って言うんですか?

恋愛ゲームには珍しく、学園プリンスの世界にはクリスマスという文化がない。

その代わりなのか、年越しを盛大に祝い、12月20日と1月10日は特に祝うべき祭日とされている。


ゲームでは分からなかったが、冬休みはさらにその前後5日間を含めるらしい。


早く冬休みになれば良いのに。そしたら私を取り巻く噂話も鎮静するだろうか。


「大丈夫よ、心配しなくて良いわ」


エマが私の肩に手を置いて、慰めてくれる。


私が先日王城に呼び出され国王陛下やジェームズ殿下と会っていたことは、王城から帰ってきた時には既に広まっていた。


平民のくせに、と言う言葉はヒロインもかけられていた。

だけど私は不可抗力なのでは? 何にもしてないんですけど。


『ケーキとお馬のフルフルくらいしか楽しいことはなかった。治癒の魔法で気を失うし』

「言いにくいんだけど、フルフルって悪魔の名前よ」

『えぇ……』


悪魔の名前を何で自分の馬に付けるのさ! 飼い犬にルシファーとか名付ける感覚なのか!?


「今日この後リッチ様のお茶会に呼ばれているんでしょう?」

『……うぅ』


王城に呼ばれた件だと言われた訳ではないが、リッチ様から話があると声をかけられている。二人で話したいと言われ、エマの同席は不可だ。


お茶室にお茶の席を用意してあるらしい。

この学園には大広間や東屋など、お茶の席を用意できる場所が整っていて、一定の距離を保ちつつ利用している。


寮を使っている生徒は寮の談話室使うため、学園の大広間などを使うのは自分の使用人を連れてきている王都周辺に屋敷を持つ貴族の子女だけだ。


暗黙の了解で身分の高い者しか利用できない場所もあるようだが、私は詳しくない。


詳しくないが、お茶室と言うのはあまり人目に触れたくない、プライベートな話がある時に利用する部屋だと言うことは知っている。


―――いや、この段階でエリザベスから警告を受けうることなんてありえない。


ゲームでもエリザベスはかなり寛大だ。アレクサンダーとヒロインが一緒に行動しているのをみて声をかけ窘めることはあれど、一年目はほとんど何も言われない。


アレクサンダーとの仲が親しくなり、周りに噂されるようになっても多少棘のあることを言われるだけだ。


現状エリザベスに何か言われる理由がない。


助けてくれる、なんてことはないよね?

エリザベスも生徒達に色々聞かれたりしているだろうから事実確認?


彼女が噂の終息に協力してくれたらありがたいんだけど……。


「ブラウンさん、突然の呼び出しなのにありがとうございます」

『いえ、こちらこそお誘いありがとうございます』


お茶室、初めて入ったけど綺麗なところだな。

これは暗黙の了解とかなくても庶民には使いづらい。談話室で十分だよ。


「実は貴方について色々と噂を耳にしまして……」


エリザベスはニコリと笑った。


「そんなことでわざわざと、そう思うでしょうけど、少し……1つだけ気になることがあります」

『なんでしょう』

「アレクサンダー様が、貴方が王城に呼び出されたことをご存じではないと言うのです」


え?

アレクサンダーは私が呼び出されたことを、国王陛下に聞いていなかった……?


ジェームズは私と会ったのに?


「貴方が王城に呼び出されたこと自体、私は驚きません。光魔法は百年以上見られていない魔法です。国王陛下が一目見たいと思って当然でしょう。ですが、貴方の同期であり魔法学でも同じクラスであるアレクサンダー様が、同席しないばかりかご存じないというのは、少し……気になったのです」


『リッチ様、私には分かりません。お言葉の通り、私は国王陛下に魔法をお見せしました。陛下が連れられていた騎士は腕に深い傷を負っていて、魔法でなければ長い間の療養が必要だったでしょう。期待に応えられたかは分かりません。私は、その傷の深さに失神してしまいましたから。ですので、私は呼び出されたのはその方の傷のためだと考えています。アレクサンダー様が同席されなかったことも、疑問には思いませんでした』


エリザベスはゆっくり頷き、深呼吸をした。


「実は……ある方が、その場にジェームズ殿下が同席したと噂しておりますの。噂が急速に広まったのは、その方が意図的にそうしているのだと考えています」


突然王城に呼び出された光魔法が使える平民。第一王子である王太子は呼ばれず、第二王子だけが国王陛下と共に迎える。それを意図的に噂する第三者。


……ゲームより状況が悪くないか?


『ジェームズ殿下は……いらっしゃいました』

「長くご同席を? 会話をされましたか?」

『国王陛下が席を外されて……その間ジェームズ殿下が城を案内してくださいました』


素直に言った方が良いよね?

だって私はエリザベスとアレクサンダーが上手くいって欲しいし、ジェームズとどうこうなる意思もない訳だから……。


『リッチ様、私はどうすれば良いでしょうか? 出来れば穏やかに過ごしたいと考えているのですが……』

「現状、それはなかなか難しいでしょうね。アレクサンダー様とジェームズ殿下との関係は一筋縄ではいきません。国王陛下が意図的に貴方を巻き込んだと考えると事態はもっと複雑です」


それもそうだ。

国王陛下はアレクサンダーよりずっと周りが見えているのだろうし、私とジェームズを会わせた事は国王側から誰かが広めているのだ。


まぁエマには話したけど彼女の部屋の中だったし、ゲームでの事はもちろん、この世界のエマの性格を考えても彼女が広めているとは考えにくいし、だとしたら広まるのが早すぎる。


「今日貴方を呼ぶのも迷いました。私がこうして話す事で、噂がより信憑性を持って広まってしまうかも知れません。ですがアレクサンダー様が……その、その日は王城に居たそうなのですが、かなりはっきりと貴方が王城に来た事を知らないとおっしゃるので……」

『……』


アレクサンダー、大丈夫か? メイン攻略対象なんだよね? ゲーム的には一番の推しなんだよね?


「この学園には保守派である貴族の令息もいらっしゃいます。その方達が……不安がっているのです」


私が彼らでも不安ですとも!

推している王太子は周りからの言葉の裏を理解せずに馬鹿正直に答えちゃうわ、国王陛下に蚊帳の外にされているかもしれないのに不安がる様子もないなんて!


「それに……貴方は学園でアレクサンダー様を避けていらっしゃるでしょう?」

『……お言葉ですがリッチ様。王太子殿下の傍にはいつもアンダーソン様がいらっしゃって、私の家族や村の事を侮辱されるのです』

「それでは、私と三人でお茶会はどうでしょう?」


いやだ! アレクサンダーとは関わりたくないんだ!

正直嫌だけどこれを断るとエリザベスの信頼を損なう気がする!


『それは……構いませんが、昨日の今日で三人のお茶会となると、まるで王太子殿下とリッチ様がジェームズ様と対抗しているように見えませんか?』

「そうでなければ、アレクサンダー様はただの間抜けに見えるのでは?」

『……結構言いますね』


エリザベスってこんなはっきりした性格だったんだ。アレクサンダーと一緒にいるとなんだか芯はしっかりしていても控えめな人に見えたのに。


「他に手があるなら考えます」

『いえ、リッチ様にお任せします。が、私はもう一度王城に呼ばれています』

「国王陛下はどういったおつもりなのでしょう。わざわざアレクサンダー様が王太子と宣言しておきながら……それが分からないと我々も行動に困ります」


アレクサンダーとジェームズのトラブルに、戦争が関わっているのが大きな問題だろう。近いうちに戦争が起こるかも知れないという事を、国王は予測している。それに対するアレクサンダーの対応が良くないのかもしれない。


そりゃあロイシュークは戦争をする気なんだろう。だって来年の冬に私を誘拐するんだもんね。

王国は魔法が使える貴族が国外に流出するのを防ぐ法律を出しているのに、寄りにもよって光魔法が使える私を誘拐するなんてもう決定打だ。


ゲームでもそれを契機に戦争となる可能性がある。

国王陛下は戦争を避けられないと感じ始めているのだろうか。


もしくは単純に、ジェームズが過激派の貴族令嬢と婚約するのを防ぐために私を推しているだけ、という可能性もあるけど。


「どちらにしろ、ブラウンさんの口から王城に呼ばれたことはアレクサンダー様にお話しいただけますか? それで少し現状を理解していただけることを期待します」

『分かりました……』


地獄のお茶会始まるな……。

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