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魔法学の先生

ちょっと文字数が多いなと思ったのですが、まとめることを諦めました

中庭に魔法学の特別クラスを受ける生徒が集まってくる。

残念な事にまだ友達と言えるような子は出来ていない。私は完全に浮いている。


エマとは知り合いなのだから彼女にジョシュアを紹介してもらえば良いような気もするが、学年も違うし親族とはいえジョシュアは公爵家の嫡男でエマは伯爵家だからなかなか難しいのかもしれない。


ゲームでも初めて言葉を交わすのは夏休みという事になっている。

ジョシュアとは出来れば早くに会いたいんだけど……。


ミラー先生はいつ頃来るかな。授業の前に話せた方が、アレクサンダーを避けられてありがたいけど。


「美しい髪だね」


ぼんやり生徒を眺めていたら、ふいにかけられた言葉に息を飲んだ。

振り返ると、ベンチの裏の大きな木の後ろからいつの間にかアルバート先生が覗いていた。


『あ、アルバート先生』


ビックリした。

アレクサンダーのイベントの言葉かと思った。


「良いリボンだ。品が良いし、君の髪にとても合っている」

『ありがとうございます。友人に貰ったんです』


先日エマに貰ったリボンはまるで誂えたように私の髪色に合っていて、エマも毎日褒めてくれる。

私の髪もエマの侍女であるジェーンが整えてくれるのだが、整髪剤まで借りていて申し訳ない。彼女が怪我をしたら真っ先に治さないと。


それにしても何でこの先生こんなに親し気に話しかけて来るんだろう。

前回変なところを見られたからかな、虐められていると思われているとか……?


「君は人に好かれる性質のようだね」

『あの……たった今一人ぼっちなのですが』

「アレクサンダー殿下やリッチ嬢と話せる仲だと聞いているよ。それにセヴァラス・プライスと親しいのだろう?」


……ゲームよりエリザベスやセヴァラスと親しく見えるのか。

セヴァラスに関しては傍から見たら図書館で一緒に勉強しているだけで、ゲームと変わりない気がするけど……頻度が多いのかな。


Bクラスなのもあってゲームと比べるとエリザベスとの関係の方が違う気がするけど、新学期以降そこまで一緒には行動していないし……。


『アレクサンダー殿下もリッチ様も、平民の私が大変な思いをしないよう気遣ってくださって……本当に素晴らしい方々です。プライス様もお優しい方で、初めて図書館で会って以降勉強をお教えてくださいます』

「お優しい方、ね……」

『……プライス様をご存じなのですか?』


何の断りもなく、当たり前のようにアルバート先生は私の横に座った。


……え?

あの、生徒もう結構中庭に来てるんですけど?


「あの家には気を付けた方が良い。深入りすると危険だ。君は知らないかも知れないが」


……まだ入学して一ヵ月なんですけど?

深入りって言ったって、え? 一体どうなってるの?


セヴァラスの家ってそんなにヤバいの?

私が平民だから何も知らないと思ってるの?


『五年前の件なら、プライス様から直接聞きました。ですが彼は関係ないのでは?』

「それが無知だと言うのだよ」


無知か……。まぁ確かにそれはそうだろうけど。


「一度裏切った者は何度も裏切る。そう思われても仕方ないだろうね。さらに言えば、一度裏切った者は……今度は裏切られる」

『……つまり、王国はあえてプライス家を援助していない?』

「君は賢いが、言動にはもう少し気を付けた方が良い」


何なのこの先生……。


『あの、私、ミラー先生にお話が合って……』

「それはすまなかった」

『失礼します、アルバート先生』


貴族流に軽く礼をして、ミラー先生の元に向かう。


「あら、ブラウン嬢」

『ミラー先生に聞きたいことがあるんです。その、水の魔法のことで』

「何かしら、私に分かることなら良いけど」

『光魔法の使い手が病を癒す魔法を使った時、水魔法の使い手が一緒にいたという話をご存じですか?』


ミラー先生は目を丸くした。


「私もあの話はとても興味深く感じています」

『水魔法の使い手の方が重要な役割を担ってると思うのですが……どうお考えですか?』


「まぁ……とても嬉しいわ。水魔法は一番下級な魔法と思われがちですから。私もあの魔法は、水魔法である浄化の魔法が関わっていると思っています。もちろん、光魔法との相乗効果でしょう。歴史に残るような魔法は、複数人の協力で成り立っているものが多いのです」


浄化の魔法は、エマが言っていた不純物を取り除く魔法だった。しかし不純物が複雑になるほど高度な魔力が必要らしく、使い手の考える真水のイメージと言うのも重要らしい。


軟水硬水とかそういうのかな? 水はミネラルウォーターしか飲まないって人がいたら、それがノーマルになるんだろうか。私には違い分かんないけど。


本に書かれていた時代は瀉血と言って、患者から血を抜いて悪いものを血と共に排出するという文化が一般的だったようで、ミラー先生は水魔法によってその瀉血と共に膿などが出たのではないかと考えている様だった。


瀉血って映画で見たなぁ。病人からさらに血を抜くなんて今の文化から考えるとどうかと思うけど。

傷の膿とかには効くかも知れないけど、感染症とかにならなかったんだろうか。


透析についてなんて聞けないよね……。


またミラー先生の話では、入学前試験にあったエリザベスの曽祖父の戦果も、彼の部下である火魔法や風魔法の使い手の協力があってこそらしい。

火に酸素を送るとか風向きを変えるとか、そういう事かな。


「魔法は奥深いものですから、そういった相乗効果を使おうと思える事こそ手練れの使い手である証明とも言えます。貴方がもし癒しの魔法を使いたいなら、貴方以上の水の使い手と協力する必要がありますね。まぁ、私の考えですけれど」


『ありがとうございます。助かりました。もしこの学院で体調不良の生徒がいたら、先生と一緒に癒しの魔法が使える様に練習してみます』

「まぁ楽しみですね。さぁ、授業が始まりますから」


先生に礼をして、すぐ近くで出席を取っているスミス教授の所へ向かう。


そうしたら、悪いものを外に出すイメージで練習かなぁ。

ライトの魔法は自分のイメージで練習した訳だけど、病を癒すってどういう感じだろう。

想像が出来ないし、練習するには病人が必要だ。失敗して何かあったら困るし。


そう言えば、傷を治す時に何を考えているかとか、意識した事なかったな。


出席を取った後、生徒は皆それぞれ自分の属性の教授に教えを請い、それぞれの魔法を教えて貰っている。光魔法を使える教授はいないので、私は生徒の人数が少ない火魔法のスミス教授が担当だ。


「貴方の練習のために毎回怪我をする訳にもいきませんし、新しい魔法がないか調べたのですが、何分昔の話で不確実なものばかりです」


スミス教授は四人の中でも長く教えているようで、全てを取りまとめている。魔法における基本を踏まえながら、自分でも光魔法を勉強してくれているらしい。


『光の魔法はイメージが難しくて……』

「そうですね……。風の習得が難しいのもそこにあります。四つの属性の中で風だけは目に見えませんからね。それでも花や紙などが動く様子で判断したりするものですが」


うーん、日の光が分かるものっていたら何だろう。でも光を強くしたり動かしたりしたい訳ではないよね……。

と言うか、だとしたら光と癒しはどう関係してるの?


日の光でお布団を暖めるみたいに、人の体を温めたら低体温とかは解消しそう。

でも確かに寒い土地だったらそれが癒しの魔法と言われてもおかしくない。暖炉の前で温かい飲み物飲むぐらいしかないもんね。


それに行軍中とかだったら、火もつけられない、みたいな事もあり得るのか。


「魔法が好きなのですね」

『え? そうでしょうか』

「ミラー先生との会話が少し聞こえていました。本に学び、自分の身近な師に助言を求めるのはとても良い事です。そしてどういう理由で魔法が起こるのか考えるのも、とても重要な事と言えます。……ですが、それよりも私に話すべきことはありませんか?」


え、話すべきこと?

なんだろう、思いつかないけど……。


え、スミス教授とのイベントとかあったっけ?

アルバート先生が、私が虐められているみたいな報告をしたとか?


「ホーン先生から聞きましたが、暗闇を照らす魔法を開発したのでしょう? 陛下に報告すべき重要な案件です」

『えっ! そうなんですか? でもホーン先生は何も……』

「ホーン先生は王宮魔導士ではありませんから。ですが私は違います。私から陛下に報告してもよろしいですか?」


う、でもそれって……大丈夫?

なんか面倒くさいことにならない?


『あのぉ……大事になるのはちょっと避けたいのですが……』

「えぇ、私も学園にいる間は他言無用で済ませようと考えていました」

『良かった、それなら大丈夫です。スミス教授、お手数おかけしますがよろしくお伝えください』


暗闇を照らすだけなら火の魔法でも同じことが出来そうだけど、光の魔法は色々と特別なのかな。

もし癒しの魔法が使える様になったら大事になるんだろうなぁ……。


「ただ忠告しておきますが、貴方自身が、ホーン先生に披露して見せたから発覚したことですよ。あの方は悪い人ではないですが、口が軽いとは言えません」

『はい、すみません……』

「他に知っている人はいますか?」


スミス教授は周りの生徒を確認しながらそう聞いた。

水は湖、風は木陰、土は花壇、火は焚火に向かって、真剣に魔法の練習をしている。


『えっと、同じ席にセヴァラス・プライス様がいらっしゃいました』

「プライス家の子息が?」


スミス教授の声色が険しくなった。


これってもしかて、ゲームの影響なのかな。

教師まで皆一様にセヴァラスの事が嫌いなんてありえる?

ホーン先生は優しかったのに。


『あの、彼はいつも勉強を教えてくれて……』

「……彼の立場は辛いものでしょう。貴方はそれでも、彼のそばに居たいと、そう思っているのですね?」


スミス教授の表情は真剣だった。その瞳は嫌悪と言うよりも、何かとても辛いことを耐えているように見える。


『はい、まだ会ったばかりですが、彼が好きです』

「それなら私は何も言いません。もしも困ったことがあったら、私の所に来るように。力になれるとは言い切れませんが、知恵を貸すことは出来ます」

『本当ですか? ありがとうございます。スミス教授』


ニコリと笑いかけると、スミス教授は片眉をあげた。

え? 私変なこと言った?


「ブラウン嬢、何故私の事だけは教授と呼ぶのですか? 先程はミラー先生とおっしゃっていたでしょう。それにダン先生のことは『アルバート先生』と名前で呼んでいたではありませんか」


……もしかして気にしてたのかな?

ゲームではずっとスミス教授だったけど……。


『あー……皆がそう呼ぶので……。お許しいただけるなら、スミス先生と呼ばせていただければ嬉しいです』

「もちろん構いません」

『ありがとうございます』


もしかして、思っているより可愛い先生なのかな?

アレクサンダーを避けるならミラー先生よりスミス教授……じゃなくて、スミス先生と話していた方が都合は良いし。


『授業中にお時間を取らせて申し訳ありません。もし良ければ、魔法の成り立ちについてもう少し聞きたい事があるのですが……授業後はお忙しいですか?』

「……今日はこの後すぐに王宮に戻らねばなりません。それにこの学園の私の部屋はホーン先生の部屋程生徒を迎える準備が出来ているとは言えませんから……次回の授業後で良いですか?」


おもてなししてくれるつもりだ!


『もちろん、大丈夫です! 来週が楽しみです。質問をメモにまとめておきます』

「勉強熱心なのは良い事です。……では他の生徒を見て回るので」

『はい、ありがとうございました。スミス先生』


やった、来週が楽しみだ。今日はとりあえず、授業が終わったらダッシュで帰ろう。


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