ヒロイン属性に負けてなるものか!
初投稿です。何番煎じか分かりませんが、異世界転生が大好きすぎてとうとう自分で書いちゃいました。よろしくお願いします!
60位 レナ・ブラウン
羅列された名前の中央に自分を見つけ、思わず苦笑する。
いくら生まれつきのヒロインステータスがあっても、中身が私ならこの程度なのである。
時を遡ること10年。王都の南の村で平穏に暮らしていた6歳の私は、ケガをした母に光の魔法を使った。
そう、この世界には魔法がある。多くは火水風土の4つの属性からなり、光はとても珍しく貴重とされる属性だった。魔法はほとんどが親から子に受け継がれるもので、魔法を使える者は王都で働き強い力を持つ者ほど要職を望めるため、それが何世代も続いてきたこの国では魔法は基本的に王族貴族の家系特有と言えた。
そこへ平民の私が、突然、光の魔法を使ったのだ。両親だけでなく村中が相当な騒ぎだった。
しかし、当の私はそれどころではなかった。光の魔法を初めて使った瞬間、前世の記憶が流れ込んできたのだから。
前世の私は本当に平凡な人間だった。
勉強させても運動させても偏差値50前後。外見もとくに目立たない、村人A。数人の友達とまぁまぁ楽しく学校生活を送っていた。
そんな私が受験勉強の真最中に、参考書を読みつつバスを待っていたら真っ赤なスポーツカーが突っ込んできて……多分死んだ。
あの野郎!!! なんだあの真っ赤なスポーツカーは!
朝っぱらからスポーツカーで暴走してバス停に突っ込むとかどんな生き方をしているんだ。私の人生に喧嘩売っているのか!
そんな怒りが6歳の身体に一気に流れ込んできて私は茫然自失となってしまったが、周りはとにかくそれ以上に大騒ぎで訝しがる人はいなかった。
そんな大慌ての両親を見て、私はもう1つの事実に気が付いた。
―――これ『学園プリンス』じゃん。
中世ヨーロッパ風な世界の学園で魔法を学びながら恋をする王道の恋愛ゲーム、学園プリンス。通称学プリ。
前世の友人がプレイしていたこのゲームで、あるキャラクターに惚れ込んだ私は次の日即購入し、やり込んでやり込んでやり込んで……もうこのゲームの事なら何でも聞いてくれ状態である。
ヒロインである少女レナ・ブラウンは、平民であるにも関わらず光の魔法を扱える前途有望な存在として入学することになる。
貴族ばかりの学園の中に突然入るヒロインは、見下されたり嫉妬されたりその他もろもろ、多くの困難を乗り越えて攻略対象と恋を育んでいくのだ。
―――ある人物を犠牲にね!
このゲームでは攻略対象の他に、友人キャラが2人いる。
学プリの特徴は、ヒロインとキャラの好感度が他のキャラとの好感度やイベントに影響することで、特定の攻略キャラとトゥルーエンドを迎えるため、この友人キャラの好感度を上げる必要があるのだ。
攻略対象は4人。
1人目はこの国の第一王子であるアレクサンダー・カーライル。
金髪碧眼の王子らしい王子で、時々思い込みが激しい時もあるが心優しく責任感が強い。実は身体が弱く、癒しの力がある光の魔法に強い興味があるという設定で、婚約者がいながらもヒロインに興味を持っている。
2人目はアレクサンダーの腹違いの弟であるジェームズ・カーライル。
黒髪に黒い目のワイルド系王子。優秀だが野心家でもあり王位狙っている。母方の親族に光の魔法を使えた者がいたため、自分がヒロインと結婚すれば光の魔法が使える子どもが生まれるのではないかと考えている。
3人目はジョシュア・フローレス。
プラチナブロンドに青い目をした公爵家の嫡男。穏やかな性格の眼鏡キャラ。友人キャラであるエマの従兄で、あるイベントでエマを支えたヒロインと光の魔法に心を惹かれる。
4人目はウィリアム・ハント。
赤毛に緑の目をした王国の騎士団長の嫡男。割と良い奴だけど脳筋。このキャラは好感度が上がるとヒロインから離れなくなり他の攻略対象キャラとの好感度が上がりにくくなってしまう、ある意味お邪魔キャラである。
そしてメイン攻略対象であるアレクサンダーかその弟ジェームズとトゥルーエンドを迎えようとすると、ある友人キャラが死亡してしまうのだ!
私の最推し、セヴァラス・プライスが!
あぁセヴァラス! どうして貴方はセヴァラスなの!?
攻略対象じゃないどころかメイン攻略対象と結ばれるための踏み台……!?
絶対にそんなことさせない! 私はあんな風にセヴァラスを死なせたくない。
そしてあわよくば私がセヴァラスと愛を育みたい!!!
と言うかなんなんだアレクサンダー王子は。心優しくて責任感あったら婚約者さしおいて平民と浮気しないだろ!
私は光の魔法が使えたって、中身は平凡な人間だ。王子に興味を持たれない人間になる!
ヒロイン属性に負けてなるものか!
そして冒頭に戻る。
60位、レナ・ブラウン。
私、あまりに平凡でいることが優秀過ぎないか。120人中60位って。やろうと思ってもなかなか出来ないんじゃないか。
ゲームのヒロインは本来この入学前試験で3位を取る。1位はアレクサンダー王子、そして彼の婚約者であるエリザベス・リッチは31位。
クラス分けは1位から30位がAクラス、その後30人ごとにB、C、Dクラスとなる。つまり、ヒロインはアレクサンダーと同クラス、エリザベスはBクラスという屈辱を味わい、第一印象から最悪となってしまうのだ。
ちなみに同学年となるウィリアムは112位。
つまり私は今回のテストで31位~90位程度の点を取るのが理想だったのだ。
私は60位だからBクラス、エリザベスは繰り上げで……あれ。
31位、エリザベス・リッチ。
なんで!?
私が3位から60位に落ちたんだからそこは繰り上げでしょう!
くそ、エリザベスとは同じクラスか。
同じクラスにはなりたくなかったものの、エリザベスはよくいる悪役令嬢という訳ではない。アレクサンダーほど優秀ではないものの、努力家で貴族として相応しい品位を常に纏っている。
王妃教育にも余念がないのだが、それが逆に彼女の時間を奪い勉学は教科によって偏りが出てしまっている。実際ヒロインがアレクサンダー以外のルートに入れば、エリザベスは卒業試験では3位まで順位を上げるのだ。
パッと出の平民にテストで圧倒的な差をつけられBクラスに組み分けられてしまったこと、そして王子が光の魔法に並々ならぬ興味を持っていることは、彼女にとってかなり屈辱だろう。
そんな嫌われスタートではあるものの、エリザベスは初めヒロインに親切にしてくれる。ただ真意は分からない。光の魔法が使える者は国の財産、王妃となる者がいきなり邪険に扱うわけがないのだから。
とにかく、この世界の私はエリザベスよりずっと下の順位な訳だし、今のところ嫌われる要素はない。それにBクラスなら王子とも親しくなるきっかけがグッと減る。
表向き婚約者がいるためか、1年目の王子との恋愛イベントはほとんどが同じクラスだからこそ起こるものばかりだ。
何と言っても、Bクラスには私の最推しセヴァラスがいる!
エリザベスのすぐ下に書かれた、32位セヴァラス・プライスの名前を眺めた。
存在するんだ。本当に。セヴァラスがいる、会えるんだ。
そうとなったら早くセヴァラスとの出会いイベントのために図書館に行かなくちゃ。余計なイベントに遭遇する前に……。
「君がレナ・ブラウンかな」
うっ!
聞き覚えのある声にゆっくりと振り向く。ザワザワと一歩下がる群衆。私の目の前に立つイケメンと美女は。
「私はアレクサンダー・カーライル。彼女はエリザベス・リッチだ」
「ごきげんよう、ブラウンさん」
間違いない、出会いイベントだ。
ゲームでは初めてのテストで家庭教師も付いていないはずの平民が試験3位ということで、王子が婚約者を連れて声をかけるイベントがある。私は60位なのに、ご苦労な事だ。
~~~~~~~~~
「私はアレクサンダー・カーライル。彼女はエリザベス・リッチだ。平民出身とのことだが入学前試験では3位、何とも驚くべき結果だ。並々ならぬ努力をしたに違いない。光の魔法は王国にとって代えがたい宝だが、それを授かったのがレナ・ブラウン、君であることがこの国の幸福だ」
『恐れ多いお言葉です』
この時頭を下げるヒロインの肩から、美しい金糸の髪がサラリと流れる。
なんと王子はその髪に手を添えるようにヒロインの頬を撫でるのだ。
「美しい髪だ。君の扱う魔法もこの髪と同じように美しく輝くと聞いている。この目で見るのが楽しみだ」
驚いて顔を上げるヒロインに王子はニコリと笑いかけ、それを婚約者であるエリザベスは驚きと怒りを交えて見つめるのだった。
~~~~~~~~~
いやいやいや。婚約者を連れて声かけておきながらおかしいだろ王子様!心優しく責任感があるってその設定ヒロインにだけじゃん!
ヒロイン騙されてるよ!
第一もうゲームの主旨おかしいじゃん、プレイヤーが王子を落とすゲームじゃなくて王子がヒロインを落とすゲームになってるじゃん。
むしろ何しても攻略出来ない私の推しのセヴァラスが主人公なんじゃない!?
そんな恐ろしいイベントを回避するため、私は今日キツく髪を結んでいる。そもそもゲームのヒロインほど髪がサラサラじゃない。
ヒロイン効果かと思っていたけど、ヒロインが毎日ちゃんと髪のお手入れをしていたからこそあのサラサラツヤツヤが保たれていたんですね。すみませんでした。
それにしても王子様、性格はともかくやっぱり格好良いな。メイン攻略対象だけある。
横に並ぶ公爵令嬢のエリザベス・リッチも赤毛に緑の目がとても綺麗。目が釣り目で鼻も高いから少し気位の高そうなツンとした顔立ちをしているけど、誰もが振り返る美人だ。
「平民出身とのことだが入学前試験では60位と、よくよく勉学に励んでいたようだ。君の光の魔法は王国にとって代えがたい宝だ。これからも磨いていくように」
『はい、この身を尽くす所存です』
こちらに一歩踏み出した王子と距離を取るように腰を引き、頭を下げる。
声掛けの内容がゲームとは違う、学年3位のフラグが折れたからだ。それでも、あまり距離を詰められたくはない。
「エリザベス、君は彼女と同じクラスだ。これも神の導きと考えて彼女の手助けをするように、平民出身では苦労も多いだろう」
なにそれ、いらんお世話!
私は困ったらセヴァラスに頼るんだから!
そうやって好感度を高めていくんだから邪魔しないでくれ!
「はい、お心のままに。ブラウンさん、何かあったら遠慮なく私を頼ってくださいね」
『身に余る光栄でございます。リッチ様』
周りがザワザワとしている。アレクサンダー王子が平民に自ら声をかけた、リッチ様が平民の後ろ盾を、と。
と言うかエリザベスさんゲームより優しい!ゲームでの対応は貴族からしたら普通と思っていたけど、やっぱりエリザベスさん的には塩対応だったんだな。
うん、もう十分だ。そのまま立ち去ってくれ、頼む。
「アレクサンダー様。学園長からお声がかかっているのでは……」
「あぁ、そうだな。ではこれで」
―――やったー!
この身体がいくらヒロインとしてのポテンシャルを持っていたとしても、中身が私ならしょせんこの程度よ!
私は周りにこれ以上注目されない程度の早足でその場を立ち去り、図書館に向かった。




