04 両家の対面
04:両家の対面
婚礼がはじまった。
その前には、ぼくとぼくの両親でもある王とその王妃と、ぼくの結婚相手のダークエルフ族の両親である族長とその夫人が一室で対面していた。ぼくの結婚相手である当事者である姫君は、その場にはいなかった。当日は、婚礼式で初めて対面するということが、オーク族の昔の慣習でありそれに則ったために姫君はこの場にいなかったのだ。姫はいなかったが、そのほかには、ぼくの兄がふたりのうちの一人とぼくの弟妹合わせて計七人、ダークエルフ族では、姫のお兄さんが、両家(両族?)の対面の場に出席していた。
そう、ぼくには上に二人の兄がいた。ぼくはつまり三男なのだ。
でもぼくことジョブ・ウガルが次期ブダータン王国の当主になることはすでに周知されている。
なぜそうなったか?
それは、ぼくに王としての資質である「毛」が生えていたから他ならない。
オークという種族は、基本体毛がない。頭部にも、脇にも、脛にも、アソコにもないのが基本。しかし稀に、体毛を伴ってこの世に誕生する赤子がおり、そういう赤子はもれなく成長するにつれ、他のオークよりも強靱な体力や筋力を身につけていくのだ。つまり王たる資質を生まれながら保有しているわけである。ぼくの父親、ペジャも金色の体毛を有しており、オークの中でも、その膂力は屈指だ。
今のところブダータン王国で父とぼくのほかに体毛が生えている兄弟や住民はいないようだ。
が、体毛がないといっても、オークは全体的に怪力の持ち主が多く、人間やエルフと比べても、戦士としての能力は見劣りせずかなり優秀だ。
しかし、父としては、その体毛を伴った赤子を誕生させたい。だから正妻の他にも妾を数人傍らに置いて、子作りに励んでいた。いわゆる一夫多妻制というやつだ。だからぼくには、兄弟姉妹が多くいた。現実世界では、4人兄弟でもびっくりされていたが、そんなもの一笑されるぐらいの人数の兄弟姉妹だ。
そのうちの9人が両家の対面の席に参列していた。
両家の対面は本当に対面だけであり、数分で終了。
続いて場を婚礼会場へと移して、いよいよ婚礼が始まったのだ。
婚礼会場は、王と王妃が居住する王城内にある礼拝堂で行われた。
対面組が礼拝堂に赴いたとき、すでに大勢の婚礼の参列者がそこで儀式が始まるのを長椅子に座って待っていた。ぼくは一人、司教が待つ祭壇前に案内された。ちなみに司教は、オーク族では数少ない暗黒神を信仰している者だった。彼は、ブダータン王国では数人しか操ることのできない暗黒魔法という恐ろしい術が使えて、王に重宝がられていた。その司教のそばでぼくは、婚礼相手であるダークエルフの姫君が礼拝堂まで来るのを待っていた。
緊張する。
ざわめいていた礼拝堂が静かになった。
その数秒後、オルガンのような鍵盤楽器の音色が礼拝堂内に響き渡った。
いよいよ姫君の入場のようだ。