01 後悔
01:後悔
(なんてことをお願いしてしまったんだ)
ぼくは後悔していた。
なんであんなことを願ったのか・・・・・・。
そう、ぼくはあることを願った。
そしてそれは叶った。確かに叶った。
願いが叶うということは通常嬉しいことなのに、ぼくはその願ったことに対して今とても後悔していた。
ぼくは四人兄弟の長男。 年齢は16歳になったばかりで、高校一年生だ。
兄弟は、弟が二人と妹が一人。
各々の年は、上の弟が十歳。下の弟が七歳。妹が四歳。順番に、小学四年、小学二年、保育園の年中組だ。
僕だけが兄弟の中で突出して年齢が高い。
ぼくの両親は共働きで、大抵、ぼくが弟と妹の面倒をみている。
両親の帰宅時間はとても遅く、ぼくは高校から帰ると制服から私服に着替え小学校の学童保育に預けている弟たちを迎えに行き、弟たちをそのまま連れ保育園に妹を迎えに行って、帰宅後母親が朝作ってくれている夕食を電子レンジでチンして彼らにそれを食べさせ、次に彼らをお風呂に入れて寝かせるということを平日は毎日している。この生活が始まってもう半年。
慣れたといえばなれたが、やはり疲れるし、自分の時間が欲しいのは事実だ。
両親はぼくたちのために頑張って仕事してくれていて、それが分かるからこそ、ぼくも弟たちの面倒をみているわけだが、やはりなにもしたくないときだってぼくにはある。
そんな弟と妹を寝かしつけたある日の夜、
「――王子さまみたいな生活がしたいなぁ」
と、ぼくはベランダに出て夜空に輝く名も知らない星に向かい何気に言ったことがあった。
何気だった。テーブルに座っていれば料理が運ばれてきて、それをフォークとナイフで食す。全て平らげれば、召使いが食器グラスを下げてくれ、ぼくは椅子に座ったままその様子を眺めていればいいのだ。
そんなことを薄ぼんやり考えながら王子さまみたいな生活がしたいなという文言をほしに向かって口にしていた。
それからぼくは自室に戻り、上で小四の弟が眠る二段ベッドの下に横たわり眠りについた。
それから何時間寝ていたかわからなかったぼくは、ある時間に目が覚め、ぐっすり寝た気がしたので翌朝と思ったのだが、辺りは暗くまだ夜だった。
今何時だろうと枕元にある時計を探すが手に当たらない。
そこで気がついた。妙に上布団がフワフワしているということを。それにベッドの弾力もいつもより心地よい。顕著だったのは枕だ。これは、いつも使用している中に小豆が入っている枕ではない。この中には多分、羽毛かそれに似たなにかが入っている。
ぼくは寝とぼけているのか?
それなら寝とぼけているままもう一度眠りに就こうと目を瞑つむり身体全体をベッドに預けたときだった。
「――ぼっちゃま、起床のお時間です」
とぼくの耳に届いた。
(ぼっちゃま?)
だれのことを呼んでいるんだ?
いや、そもそもさっきからなにかおかしい。
目覚まし時計はないし、寝具の様子も変だ。
どうやらこれは夢の中のことのようだ。
寝とぼけているもなにもこれは夢の出来事。
ぼくの夢で誰かが、ぼっちゃまを呼んでいるのだ。
リアルに声はぼくに響いたのだがこれは夢。
力を抜いて夢の続きを見ようとぼくが思ったとき、ぼくの体が揺れ動いた。
そして、
「ぼっちゃま、起床のお時間です」
とまた同じ言葉が聞こえた。
が、よくよく考えてみるとその言葉は、
「ボッチャマ、キショウノオジカンデス」
という発音ではなく、ぼくが聞いたことのない言葉、または言語だった。
その発音を記すとこうなる。
「ボホベ、ムナーガチャンズロ」
といった具合。
でもその「ボホベ、ムナーガチャンズロ」が、「ぼっちゃま、起床のお時間です」という意味を表していることはぼくには理解できているのだ。
夢の中の出来事だから全知できているのか?
ともかくぼくは目を開けた。
目の前にはブタ。
ブタだ。ぼくの目線の先にはブタがいる。
そう、ぼくが目を開くとブタがぼくをを覗き込んでいたのだ。