時の見張員
いかなる世界であっても、それに類似している世界線は存在する。
当然、遠く離れた、全くこことは異なる世界線もある。
その世界戦ごとの差異を確認して、報告をするということが僕の仕事だ。
「第4436号、通信。現世界線は世界大戦が度々発生した影響で、全土のうち7割は荒廃。動植物が住めない砂漠と化している。その間を縫うように、人類の生息域が存在する。海は原則として海上のみ行動が可能で、海中は水深5メートルの範囲よりも深いところでは無酸素状態となっている。必要以上の人口爆発は望めず、ゆるやかなる滅亡が待ち受けている」
報告は音声で行うことが通例だ。
与えられた装置を使って報告を行うと、この世界線を観測し、それから次の世界線へと動いていく。
それが僕の仕事。
時を見張り、世界ごとの干渉を最小限にする。