十四、真面目な恋
「お兄さん、出掛けちゃったね」
「多分、小牧先生と会うんよ。晶楽君の、快気祝いの打ち合わせ」
「でも、晶楽君、凄いよね。意識不明だったのに、もうリハビリしてるんだもん」
「公式から色々発表されるけど、その度に俺、舞い上がってる」
ゲームを止め、お菓子タイム。
一息ついてから、他のゲームの予定。
「和葉ちゃんさ、俺と自然に話せるようになったね」
「当たり前だよ。付き合ってるんだもん」
「最初の頃はさ、凄く俺に敵対心を向けてた」
あの頃が嘘だったかのように、今では自然に話せるようになった。
それに、たくさん遊べる。
「俺さ、いつか、和葉ちゃんと暮らしたい。絶対に、幸せにするから。だから、いつか必ず、結婚しよう」
束の間の沈黙。
「いきなりだね。びっくりしたよ」
「和葉ちゃんのこと、本気で好きだから」
「私も。紘斗君のこと好き。ちゃんとしたプロポーズは、その時に受け取るよ」
***
本当に時間の流れは、とても早い。
気がつけば、高校を卒業し、就職していた。
そして、二十四歳の今日は……。
「いよいよ今日か……。紘斗、おめでとう」
「まさか、紘斗に先を越されるとはね。おめでとう、紘斗」
「ありがとう。水希君も晶楽君も、忙しいのに来てくれて、ありがとう」
「新婦様のご準備が整いました。新郎様は、こちらへどうぞ」
スタッフの方に案内され、俺は、和葉ちゃんが待つ部屋へ。
「うわーお。めちゃくちゃ綺麗だよ。和葉ちゃん」
「紘斗君も、凄くカッコいい」
「行こうか。皆、待ってる」
「うん」
純白のドレスに身を包んだ和葉ちゃんをリードしながら、チャペルへと移動。
「紘斗君。あの時の私は、きっと想像さえしなかったと思うよ。今は、紘斗君で良かったって、思える」
「俺も、和葉ちゃんを好きになって良かった。今日は、世界中で一番、幸せになろう」
「紘斗君となら、これからの人生が楽しくなるね。高校の時は、皆、反対していたけれど、私は、紘斗君を信じていたから」
「皆じゃない。水希君と晶楽君、小牧先生。兄貴だって、応援してくれてた」
「そうだったね」
十月の秋空は、高く澄み渡り、今日の晴れ舞台を、祝福してくれているよう。
閉められた扉の向こうで、俺は、和葉ちゃんに永遠の愛を誓う。




