十二、続 GO! 東京!
上越新幹線に乗って東京駅に向かい、そこから更に、在来線に乗り換えて、五駅。
改札を抜けて外に出ると、水希君が待ってくれていた。
「紘斗~! 待ってたぞ! あれ? 和葉ちゃんと一緒じゃないのか……」
「もしかして水希君、会いたかった?」
「当たり前だろ!!? 紘斗の彼女を見ないで、生きていけるか!!」
「わかったよ。会いたいんだね? 和葉ちゃーん! こっち来ていいよ~!」
俺たちから少し離れた所にある、ベンチに座っていた和葉ちゃんを呼ぶと、顔を赤らめながら、こっちに向かって来る。
「は、はじめまして。二木和葉と言います。デビューされた時からのファンです。この前は、サインありがとうございました!」
「いえいえ。KiRaの水希です。こちらこそ、ありがとう」
握手でもしたいのか、水希君は右手を差し出す。それに気づいた和葉ちゃんは、理解したのか、握手。
「晶楽君の所には、行ってもいいの? 面会したいんだけど」
「無理だ。かなり重症だから、面会は出来ない。それにまだ、意識が戻ってない」
「それなら、どうしよう……。晶楽君に会うつもりで来たんだけど、早速予定が崩れた」
「今日は一日空いてるし、どっか連れてってやるよ」
「本当?! どこ行きたい? 和葉ちゃん」
「ええっと。チーズドッグ食べたいです」
原宿に向かう事にした俺たちは、水希君の案内で電車に乗り込む。
「人がたくさんいて、酔いそうです」
「和葉ちゃん、人混み苦手? 大丈夫? 無理しないでね」
「ありがとうございます。水希君」
「てかさ。水希君がなんで、和葉ちゃんの隣なの?」
「いいだろ。紘斗はいつも和葉ちゃんの隣だけどさ、俺はこういう時じゃないと隣にいけないだろ」
水希君。何言ってんだ?
和葉ちゃんの彼氏は俺であり、水希君は和葉ちゃんにとって、推しなのだから!
「嫉妬か? 紘斗」
「違う。そんなんじゃない」
「頬を膨らませている奴が、嫉妬していないのは、おかしい」
「だから! 違うって」
晶楽君もだけど。ふざけると、KiRaの二人にアクセルはあっても、ブレーキはないから、対応が面倒くさい。
「次の駅で降りるからな。忘れるなよ」
原宿に着くようで、水希君が教えてくれた。
和葉ちゃんがお目当ての、チーズドッグを食べに行こう。
***
それにしても、どこに行っても、人が多い。
原宿のスクランブル交差点なんて、すごいことになっている。
「はぐれるなよ。こっちだ」
スクランブル交差点を渡り、少し歩くと、チーズの香りが漂うお店に着いた。
「チーズドッグ、三本下さい」
「はーい。九百円です」
水希君が奢ってくれるって言うから、俺たちはその言葉に甘える。
「おいひー。和葉ちゃん、みてみて~!」
伸びるチーズ。
これが噂の、映える食べ物なのか。
でも最近、聞かなくなったな。
三人でチーズドッグを食べたら、後はウィンドウショッピング。
和葉ちゃんが楽しそうで、良かった。
その笑顔を、ずっと見ていたい。




