危険分子
「となると、部屋の数が足りないか?」
ゼアークは、どんどんと質の高いモンスターを作りながら、そんなことを考えていた。
(このままいくと、ほぼ無限のモンスターが生み出せる。
さすがに、そんなことはしないが、それでも結構な軍拡をする以上、足りなくなってくるかもしれない。)
それに、自分たちが攻めている間に、人間側が攻めてくるかもしれないということから、ゼアークは、そもそもダンジョンの形を少しだけ変えることにした。
(それに、もともとダンジョンは、引き入れてなんぼだ。
ちょうど上には人間の町があるんだし、それを利用するか。)
言ってしまえば、ゼアークのダンジョンは、この世界にいきなりできたことになっている。
それは、この世界がゲームと若干違う時点でそう感じた。
しかし、この世界は、ゼアークの知っているゲームの世界にひどく酷似している。
だからこそ、人間も、このダンジョンには魅力を感じて、来てくれるようになるだろう。
そして、他の人間とのかかわりがいい加減ほしいと思った、ゼアークはあることをし始めた。
「誰かいるか?」
「なんでしょう。」
ゼアークの呼びかけに答えたのは、執事服を着た、それなりに年を取ったように見える、ほぼ人間のお爺さんだった。
「上の町にて、我々にしっかりと忠誠を誓っている者は何人いる?」
「そうですな…ざっと10人くらいでしょう。
上の人間たちは、ここから抜け出そうと考えている人はいないですが、それでもしっかりとした忠誠心を持っているわけではありません。
しかし、そういった者たちの管理には、こちら側にしっかりとした忠誠を誓っているものを近くに置いておく必要があります。」
「そうだな。」
「よって、大体10人くらいは、このダンジョンの特殊課のほうが、完全な忠誠を誓わせていると思います。」
この中世というのは、それこそ狂信者のような勢いで、このダンジョンのために死ねと言ったら、喜んで死んでいってしまうほどの忠誠だ。
それは、このダンジョンの特別課というところにいる、拷問や魔法によって人間や他の生物の心を操ってしまう幹部によって行われているもので、この処置によって、完全にダンジョンに寄り添う形の人間が誕生したのだ。
「それでは、特別課のほうに行って、抜き出せるだけその者たちを使わせてくれ。」
「おそらく、人間たちも、もう逃げる気がないので、全員抜いても大丈夫だと思いますが…」
「それでも、その専門家のほうに聞いておいたほうがいいだろう。
それに、今回の計画に関しては、できるだけ数が多いほうがいいとはいえ、そこまでの数はいらないのだから。」
「ちなみに何を…」
「ああ、簡単な話だ。」
そして、ゼアークはこのダンジョンに人間を呼び込む最高の手を言った。
「彼らには、人間の国で我々のダンジョンに魅力を感じるように言ってもらう。」
魅力を宣伝することだ。
もともと、このダンジョンに関しては、結構眠っている資源なんかも優秀なものが多いので、嘘はついていない。
しかし、いつかは自国を攻めてくるようなことになるような兵器なのだ。
それに、このダンジョン攻略にて、その国を攻めるときに邪魔になりそうな冒険者がいれば、今のうちに無理やり殺してしまえばいい。
こうやって、少しだけでも、人間国の危険分子を消していくのだった。