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裏庭に行きたいよ!ヴィルヘルムくん!

いつもありがとうございます!


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走って走って、柱の影に隠れる。

後ろを振り今度こそ彼は追ってきてないことを確認する。

よかった、ならば次の関門はここだ。


チラリとそこから様子を伺うと案の定、既にすごい人だかりだった。

その中心には、一人一人の生徒に呼びかけるシオンくんがいる。


「ね、ちょっと質問があるんだけど?」


「きゃあああああ!シ、シオン様!私でよければなんなりと!」


「ありがとう。ねぇねぇ、ターキーガール見つかりそう?」


「も、申し訳ありません!まだ見つかってないですわ….!」


「はぁ、困ったな。そろそろヴィルが限界そうなんだけど。」


「「ああん!!その表情も素敵ぃいい!」」


わーい、無理。


何度か気合を入れて柱の影から身を乗り出すが、その度にいい匂いのするお姉様方に弾き飛ばされてしまう。

ちくしょう…強い。

というかなんだターキーガールって。


あの人気者の後ろが裏庭への入り口である。

あそこまでなんとか進めないものかと考えていると、私と同じように困ったようにオロオロしているおじさんの姿が目に入った。


(あのおじさん、確か購買の……)


両手に抱えているのはタッパーで、おそらく商品を取りに行って戻れなくなったのだろう。可哀想に。

その様子を見て思わず手を叩く。

1人より2人であの荒波に立ち向かった方が遥かに心強い。

早速シオンくんに夢中な皆様の間を縫って、おじさんに声をかけた。


「おじさん。こんにちは。」


「ん?あ、ターキーガール……。」


「…………はい?」


「あ、しまった。」


「ターキーガールって私のことですか?」


「いや…うん。真ん中にいる彼に1週間前に裏庭に入った子を見かけなかったかって言われて、そういえば夕方にスモークターキーを丸々一本買っていったターキーガールがいたよって話をしたんだよ。」


おじさんの言葉に頭を抱える。

戦犯はアンタか。なんてあだ名をつけてくれたんだ。

これじゃあますます友達ができないじゃないか。


「す、すまない。君の名前を知らなかったから思わず…。」


落ち込んだ私の様子を見ておもむろにスモークターキーを差し出してくる。

おじさん、あんまり申し訳ないって思ってないでしょう。

それでもありがたく頂戴する私にホッとしたように息を吐くと、言葉を続けた。


「なにか手伝えることがあれば、なんでも協力するよ。」


「…なんでもですか?」


「お、おじさんにできることなら。」


そんな会話を購買のおじさんとしていると、ふと横から熱い視線を感じ取る。

その視線の方向に目を向けると、先程シオンくんに問いかけられていたお嬢さんが私を凝視していた。


スモークターキーを持った、私を。


ただでさえクリクリの大きな瞳を見開いた彼女は、その後口を大きく開ける。


「おじさん、協力お願いします!!」


「ぐぇ!」


直感的に危険と判断した私は、おじさんを盾にして一直線に裏庭の入り口へと駆け出した。


「タ、ターキーガールですわ!!!」


「はーい違います!!しがない購買のバイトです!ね!?店長!!」


「うん!?」


「ほらほら下がってください!?ターキーとおじさんの油が飛びますよ!」


先ほどの少女の掛け声で一気にこちらに視線が集まるが、購買のおじさんを振り回して道をあけてもらう。

全員が引いたように一歩後ろに下がるなか、ただ1人だけは面白そうにこちらを眺めていた。

…シオンくんめっちゃこっち見てない?

隠し持ったターキーが見えてないことを祈りながら、裏庭の入り口にたどり着くと軽く伸びてしまったおじさんに声をかける。


「そ、それじゃ店長!!お仕事頑張ってくださいね!お疲れ様です!!」


「お、お疲れ様です…。」


ごめんなさいおじさん。

これでおあいこってことにしといてください。

心の中で土下座しながら、逃げるように裏庭の中へと避難した。









◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






思った以上に目立ってしまったが、きっと大丈夫だ。

こんな地味女のことなどすぐ忘れてくれるだろう。


「ま、魔犬ちゃんいますか…?」


小さく声を出しながら、気を引き締めて1週間ぶりの裏庭を散策する。

少しずつ少しずつ進んでいると、林の向こうから音が聞こえた。

もしかしたらあの魔犬かもしれない。

そう思った私はゆっくりと音が聞こえた方向へと歩いて林の中を覗き込こもうとすると。


「ブーーーーン!!」


「おおお!!?」


蜂のような魔法生物が大量に飛び出してきた。

たまらず踵を返して入り口に戻ろうとするが、二手に分かれて退路を塞いでくる。

なんてこった、利口だな君たち。


私を威嚇するように羽を擦らせて摩擦音を出す彼らの様子を見るに、おそらくテリトリーに侵入してしまったのだろう。


「ご、ごめんね。あの、その、出来れば話し合いを…」


「ブブブブブブ!!!」


「ですよねー!!」


双方向から近づいてくる気配を感じて頭を抱えて襲撃に備える。

すると強い力で上から地面に押さえつけられ、身動きが取れなくなる。


「グルルルルルル………」


「ブブブブ!?ブブブブブブーン!!」


なに?なに?なにが起こってるの?


しばらくよく分からない音が聞こえた後、羽音が遠ざかりあたりが静寂に包まれた。

同時に圧迫感がなくなり、そこから這い出て押し倒した正体に視線を向けると。


「あ!!」


「ッワン!!!」


堪えられないとばかりに私に飛びつき、顔を全力で舐めてくるのはあの魔犬だった。


「わ、わ、わ!ちょ、ちょっとストップ!」


「クゥン?」


怒涛の舐め攻撃に両手で顔をガードすると、不服そうに甘えた声を出す。


「ご、ごめんね。上手く呼吸ができなかったから……嫌ってわけじゃないんだよ?助けてくれてありがとうね。」


「ワンワンッ!」


嬉しそうにクルクル回り、尻尾を振る姿はもはやただの大型犬である。

頬が綻んだ私は持ってきたスモークターキーを与え、束の間の休息を楽しんだ。


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