一方その頃!シオンくん!
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僕ことシオン・ハリベルは、幼い頃から厄介ごとや面倒ごとが起こる前の、いわゆる嵐の前の静けさを感じ取ることに長けていた。
それはこの特異な容姿故に理不尽に騒動に巻き込まれることが多かったことが理由であり、何でも面白がる性格上敢えて巻き込またいという不純な理由からでもある。
そのせいで小さなことでは動じなくなっていき、親友であるヴィルヘルム・サリマンを中心にして巻き起こる事件しか心が踊らなくなっていたのだが。
(お、なーんか起こりそう。)
今この瞬間に彼が感じた嵐の予感は、類稀に見る大物の予感に等しい。
「ヴィルは敬愛する主人のところで元気よく尻尾を振っているはずだから……あ、盛大にフラれたとかだったらヤバそうだ。あはは、世界が終わるかも。」
手に持っていた紅茶を飲みながらさりげなく店内から天気や波の様子を観察してみるが、特に荒れている気配はない。
(よかった、流石に隕石とかが落ちて来たらどうしようもない。)
それならば店員にオマケしてもらった新作メロンケーキを食べてからでも遅くはないと、気を取り直してフォークを握ったその瞬間。
向かい側の席に淡い水色髪の少女が座ったのが見えた。
ふわりと漂う魔力の匂いに人間ではないことを悟る。
机に頬杖をつき数秒彼女の動向を観察した後に小さく呟いた。
「ねぇ君、人間じゃなさそうだけどどうしたの?僕に何か用?」
「キュキュッ!?キュキュキュ!?キュキュー!」
「きゅきゅ?あー…言葉が通じないパターンか。」
「キュ………?」
「悪いけど生物言語は専門外。人語は?話せる?」
「キュー……」
机に突っ伏してしまった少女は額を机にくっつけながら脱力気味に首を振った。
「そりゃ残念。ま、それでもこっちの言ってることが分かるなら…もしや大妖精レベルだったりして。」
「ッキュー!!」
「はいはい、からかって悪かったよ。とにかくこんな人間がうじゃうじゃいるところでなにしてるのさ。お仲間はどこにいるの?まさか単身でこっち側に飛び込んできたわけじゃないでしょ。」
「キューーーー……」
勢いよく机に手をついて身を乗り出した少女に座るよう促しつつ尋ねると、彼女は見たこともないぐらい渋い表情を浮かべて低く唸った。
なぜそんなに嫌そうな顔をするのだろうと思案していると、遠くで女性たちの悲鳴と誰かの怒鳴り声が聞こえてくる。
「なんだろう、随分賑やかだね。」
「キュ…?」
「気になる?いいよ、見てみようか。君のお仲間かもしれないし?」
パチンと指を軽く鳴らして白く光る蝶を生み出し、ゆっくりと宙を舞う。
同時に少女と自分の前に小さめのスクリーンを作り出し、小指で軽く円を描き蝶視点を確認しながら騒動の中心と思われる場所まで羽ばたかせた。
「え、なにしてんの。超ウケる。」
「ギュギュ…」
「もしかして君のお仲間って…コレ?」
飛び込んできた映像に驚くのも束の間、向かい側の少女が深くため息を吐いたのを見て思わず吹き出した。
「あはは、これがお仲間なら確かに最悪だ。ご愁傷様。でもそう来るなら話が楽で有難いや。」
「キュ?」
意味が分からないという表情をありありと浮かべた少女に再度微笑み、席から立ち上がって手を差し伸べる。
「世界は案外狭いってこと。さ、お手をどうぞレディ。彼を回収しに行こう。」
小首を傾げながら置かれた手を握り適当に勘定を済ませた僕は、少女をエスコートしながら数多の女性からドン引きされている哀れな同級生の元へと歩を進めた。
「へぇ、なるほど。面白いことになってるね。まさか本当に大妖精さんだったとは驚き。」
「キュキュッ!!」
好奇の視線には笑顔で対抗しつつ、共に行動することになった同級生から事の顛末を聞き歩を進める。
すると僕を盾にするように視線から流れていた彼は心外だと言わんばかりに口を開いた。
「お気楽なことを言いやがって!!お前を探すために俺がどれだけこの街を走り回ったと思ってんだ!!」
「くくくっ!!えー?その姿似合ってるからいいじゃん別に?可愛いよマル子ちゃん。」
「マルクスだって言ってんだろ!!」
走り回ったと言っていただけあってメイクは既に崩れ落ち、さらに見るに耐えないガニ股でこちらに食って掛かってきた彼を落ち着かせようと肩に手を置く。
「そんな怒らなくてもいいじゃない。僕が見つからなくて往来の真ん中で発狂し、挙句補導される一歩手前のところを救ってあげたのに。はぁーやれやれ。」
「そ、それとこれとは話が別だ!そもそもはヴィルヘルム・サリマンから近くのスイーツ店にいるって聞いて探してたのによ!どこにいたんだお前!」
「ヴィルの想像通り、ずっとこの街一番人気のスイーツ店にいたよ。現に君に愛想を尽かした大精霊さんは簡単に僕を見つけたよね?」
「キュキュ!」
「はい、ハイターーッチ。」
「キュッ!」
「うぉおおいセイレーネス!!おまっ、ふざけんなよ!?裏切るんじゃねぇ!!」
懲りずにまた大声をだして白い目で見られている馬鹿な人は放っておきつつ、親友の狙いを考える。
(彼曰くヴィルはターキーガールと一緒にいるらしい。せっかくの貴重な時間に後を追いかけてこいと伝言を残すだなんて……確実になにかあるな。)
「おや、そこの方。」
声をかけられ視線を向けると、ニコニコの笑顔のご老人がじっとこちらを見つめている。
その様子に若干の違和感を覚えて大妖精を背後に隠し、当たり障りないように笑みを浮かべた。
「あぁ、連れがすみません。すぐに退きますので。」
「いやいやいいんじゃ。それよりお前さんと彼女はいわゆる…これかのぉ?」
「はぁ!?なにふざけたことを!?俺はおと」
小指を立ててこちらを見つめるご老人に噛み付こうとした同級生の口元を押さえ、数秒考えた後にこちらも負けじとにこりと微笑む。
「ご想像にお任せします。」
「そうか、いいのぉ。いいのぉ。それじゃあ…とっておきのお話を教えてやろう。」
彼はゆっくりとこちらに顔を寄せ、小さく囁いた。
「この先の岬に休憩スポット兼デートスポットがあっての?なんでもその場所で愛を示せばお優しい龍・神・様・が祝福してくれて幸せになれるってもっぱらの噂じゃ。」
「それはそれは。僕たちにぴったりですね。」
緩く頷いたご老人はゆっくりと僕の背中に隠れている大妖精に視線を向け、さらに言葉を続けた。
「そうじゃろう?今すぐ、2人で、行って来なさい。………その子はワシが預かっておこう。」
「いえいえそんな。妹は友人に預けていきますよ。ね、ダーリン?」
激しく首を縦に振る彼の様子に満足したのか、ご老人はふと我に帰ったように目を瞬かせどこかへと帰って行った。
「…で?ヴィルもあれを聞いてその岬に?」
「あぁ。なんだか気味が悪いぜ…なぁ?なんだったんだあの爺さん。」
「キュー……」
大妖精と互いに顔を見合わせる彼の姿を見ながら、込み上げてくる笑いを噛み殺して呟く。
「でもお陰で彼女との時間になんで僕を呼びつけたのかわかった気がするよ。僕こういうの大好き……くくくっ!!!楽しくなってきた!」
「なにそれ怖っ!!?」
「とにかくありったけ人を集めて、大妖精さんを先頭にその岬へ向かおう。じゃ、よろしく大妖精さん!」
「キュッ?キュッ!?」
「大丈夫だって。おそらく君の大好きな海の声とやらもそこにいるはずだよ?じゃないとあのヴィルがそんなきな臭いところ行くはずないって。」
「ッッキューーーー!」
驚きで見開いた瞳を潤ませて元気よく頷いた大妖精の頭を撫でてやると、何もわかっていない人が1人大声で異議を唱える。
「で、でもよ!コイツ小さいし危ねぇんじゃねぇの!?それにお前だってさっき預けるって!」
「あのさぁ、彼女は大妖精なんでしょ?正直君よりよっぽど強いから。」
「………は!?そういえば!!」
「本当頭も顔も残念な人だね君って奴は。」
「率直な悪口やめろ!!」
「それに2人で行くようにって強調されると無視したくなるでしょ?大妖精さんには特に来て欲しくなさそうだったからねー………だからあえて関係ない人をいっぱい引き連れて、かつ彼女に先陣を切ってもらったらもう絶対面白いことになるって決まってるんだよ。」
「知らねぇよ!!なんだその法則!?っておい!どこ行くんだ!!」
「ちょっとあそこの魔人まで。」
「魔人!?」
吠え続ける女装家を無視して周囲を見回す。
そして太陽の光にキラリと光る後頭部を目印に颯爽と一歩踏み出した。




