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愛を示せ!ヴィルヘルムくん!


いつもありがとうございます!!

長い間更新できずすみませんでした…涙

もう一つの長編がひとまず区切りがついたので、こちらも更新していきます!!


というかこっちも中途半端なところで終わってましたね…。


今後もゆったりとはなりますが更新していきますので、よろしければブックマーク登録、評価、感想などお待ちしております!


「ふぅ…」


お姉様方の鋭い嫉妬の視線から逃れ、ようやっと一息ついた。

やはりイケメンと一緒にいると心臓がいくつあっても足りやしない。


「なるほど。」


ヴィルヘルムくんは荒れ狂う海原を見下ろして、納得したように呟く。

顎に手を置いて目を細めた彼は、ため息を吐いたあと私が座る古びたベンチの隣に腰掛けた。

長年潮風に当てられて錆びてしまったのか、ギシッと軋む音が響く。


「な、なにか分かった…の?」


「あぁ。全くなにが巷で人気なデートスポットだ。悪い冗談にもほどがある。」


田舎出身の私が言うのもおかしいけれど、お世辞にも胸がときめくような素敵な場所とは言い難い。

置いてあるのも荒れ狂う海原を一望眺出来る、この2人がけのベンチのみ。


「……なんか寂しい場所だよね。」


曇天の空模様も相まってか、見える景色は灰色一色。

華やかな港町が近くにあるとは思えないほど寂れた印象を受ける。


「この空間だけ切り取られて、置いていかれちゃったみたいな。」


「そうだな、流石はカンザキ。言い得て妙だ。」


おもむろに空に手をかざしたヴィルヘルムくんは、手のひらに魔力を込めて黄色い閃光を放つ。

その強烈な音に耳を塞いで天を仰ぐと、大きな風穴が空いていた。

しかし生き物のように分厚い雲が蠢くと、すぐ穴を塞いでいく。


「この場所は箱庭だ。」


「箱庭って?」


「魔法生物のテリトリー、隠れ家…傷ついた主を癒すためだけに存在する異空間。ちなみにここの主はこれだけの空間を箱庭にするほどの実力を持つ大物と想像できる。」


ちょっと待て。

ヴィルヘルムくんが言う大物は、私で言う神に等しい。


「は、早く逃げないと!テリトリーに入ったら攻撃されちゃうよ!!ってもう侵入してるのか!!?」


「安心しろカンザキ。さっきも言ったが箱庭を作るのは傷ついた主を癒すためだ。故に箱庭の主の怒りを買わない限りは特になにもしてこない。」


前髪を掻き上げたヴィルヘルムくんは一息吐くと、地面に手をかざして魔法陣を生成する。

青白い光が地面に紋章を刻むと、いつのまにかゆらりと輝く釣竿が彼の手に握られている。

あーなんだろう、すごく嫌な予感がする。


「何してるの…?」


「主を釣り上げる。カンザキもやるか?」


「やめてぇええ!?」


いたずらっ子のように舌を出してお茶目にウインクしてきた彼に絶叫し、手元から釣竿を奪い取った。

なぜか嬉しそうにニコニコするイケメンを思わず睨みつけ、説教を始める。


「だめだよそんなの!!なんでわざわざ刺激するようなことするの!!?」


「あぁ、セイレーネスの話では海の声は一時的にでも大厄災を一人で抑え込んでいたらしい。そんなことが出来るのは大精霊に匹敵する魔法生物だろう?ならここの主の可能性は充分に考えられる。」


「た、確かに…!」


「むしろそれらしい話が他に一個もないからな。試してみる価値はある。」


「そっか……うん!それなら私も手伝う!釣りはやったことないけど…!!」


「そうか……あと釣りは軽い冗談だから安心しろ。方法は別にある。」


「え、そうなの?じゃあその方法で。」


「だが、その、問題が少し…いや、俺は嫌ではないのだが……」


一瞬で私から釣竿を取り上げたヴィルヘルムくんは、なぜか汗をダラダラに流して私の手をぎゅっと握りしめる。


「さっきも伝えたように箱庭の主を召喚するには怒りを買う必要がある…。お、恐らくさっきあの場にいた男が言っていたように、カップルが愛を示しあうことがその条件だ…」


「はぁ!?」


「うっ………!!む、無理は承知している……だが、お、俺は…嘘でもほかの奴には…」


私の叫びにシュンとなったヴィルヘルムくんは小声でなにかを呟いている。

あまりに小さな声のため内容は聞き取れないが、項垂れる姿が何故か私の可愛い相棒に重なった。

耳が生えていたらきっとペタリと悲しげに垂れ下がってしまっているだろう。

その想像にクロを悲しませてしまったぐらいの果てしない罪悪感に見舞われた。

そうだ、ヴィルヘルムくんだってセイレーネスのために私のような劣等生とカップルのふりをしようと身を削っている。


あの天才がそこまでしようとするのだ。

ほぼ確実に、愛を示しあうことが条件なのだろう。

ならば覚悟を決めるんだ。

目の前にいるのはクロだと思え。


周りを見回して誰もいないのを確認して、私は震えながらヴィルヘルムくんの手を握り返す。


「あの!!」


「は、はい!?」


尻尾が生えていたらピーンと伸ばしているであろう硬直状態の彼を見つめ、私はこの空間の主に聞こえるように大声で叫んだ。


「…好きです!!!」


あれ?

でもカップルのふりで主は騙されてくれるの?


その疑問をスッキリさせたくてヴィルヘルムくんを確認すると、彼はこれでもかと顔を赤くして身体を震わせた。


「カンザキ………!!!!
















好きだぁあああああああ!!!!」


「お、おう……」


ザ・心の叫びと言わんばかりの咆哮に狼狽える。

すごい演技力だ。

なんか本当に恥ずかしくなってくる。


コポリ………。


互いに赤面していた私たちは、ヴィルヘルムくんの渾身の叫びに反応するようにドロドロとした黒い何かが目を覚ましたことに気がつかなかった。


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