絡まれたよ!ヴィルヘルムくん!
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(クロなにしてるかなぁ。)
購買によってご飯を買って、スキップ混じりで裏庭に入ろうとしたその瞬間。
「ちょい待てお前!!」
ドゴォッと抉れるような音が顔の横から響き渡り、衝撃で動きが止まる。
あれ、なんだろう。
真っ赤なスポーツシューズらしきものが裏庭の扉を押さえつけているのが見える。
え、あれ靴?だったら身体柔らかくない?
そんな足あがるもんなの?
恐る恐る後ろを振り返ってみれば、緑とオレンジというなんとも奇抜な髪色をした少年が私を睨みつけていた。
そしてその赤シューズの少年の後ろには彼の友人か、同じような髪色をした少年たちが同じように鋭い目つきで睨みつけてくる。
制服は着崩しており、彼らのメタルのいかついネックレスがジャラジャラと鳴り響く。
これは…新しいファッションなのか。
そして私はなにを求められているんだろう。
「す、ステキなお召し物ですね…?」
「ああん!?」
「ヒィ!!」
違った!!服装を褒めて欲しかったわけじゃなかった!!
買ったばかりのスモークターキーを抱えながら、プルプルと震えている私はさぞかし滑稽だろう。
周りの生徒たちも遠巻きで眺めているだけで助けようとはしてくれない。
「あ、あのえっと、なにか……」
「すっとぼけるつもりか!?コイツらの溜り場をぶんどったくせによ!!」
「え?」
Q.ぶんどるとは?
A.他人のものを奪い取ることです。
Q.私にそんな度胸はありますか?
A.ありません。むしろその前に返り討ちにされる自信しかありません。
その結論に一度頷き、大きく深呼吸をして叫んだ。
「究極の人違いです!!」
「嘘つけ!!ボコボコにされた俺の仲間が『黒髪』が犯人だって言ってんだよ!!テメェぐらいしかいねぇだろうが!!」
「無理無理!!ボコボコになんてそんなの絶対無理!!見て後ろの子達!ポカーンって!ポカーンって口開けてるから!あなた絶対勘違いしてる!!」
「はぁ!?この俺が勘違いなんてするわけねぇだろ!」
「兄貴兄貴…」
「んあ!?なに!?」
「ちょっとちょっと…」
兄貴と呼ばれた赤シューズの少年は、自身の制服を引っ張ってきた男の子(ここではAくんとしよう)に耳打ちをされている。
「たしかにソイツは俺たちの溜り場で変な修行してる女だけどさ、コテンパンにされたのは別のやつだよ。」
「え?そうだっけ?」
「もう忘れたのか?俺たちを追い出したのはヴィルヘルム・サリマン。」
なにを間違えたら私と勘違いするの!?
思わず心の中で盛大に突っ込んでしまったが、恥ずかしそうに俯く赤シューズくんに冷たい視線を浴びせる。
「で、でもよ!お前ら黒髪だって言ってたじゃん!?コイツ黒じゃん!あってるじゃん!」
「いや言ったけどさ…そもそも性別からして違うよね。ソイツ女でしょ。」
「ほら私関係ない!冤罪だ冤罪!!」
「うるせぇ乗ってくんな!使ってんのはお前なんだから同罪だ同罪!!ばーかばーか!」
半泣きになりながら怒鳴ってくる姿に少し可哀想になってきた。
私が言うのもなんだけど、きっと馬鹿なんだなこの人。
地団駄を踏みながら私を指差す赤シューズくんは、勢い変わらず問い詰めてくる。
「毎日毎日暑苦しい特訓ばっか見せつけてきやがって!どういうことか説明しろよ!!」
「あそこが空いてるって聞いたから特訓してたんですけどね…。」
「だから取られたって言ってんだろうが!!このターキーおん」
ピタリと急に動きを止めた少年たちは、一点を見つめながらゆっくりと後退していく。
え、なに?私の後ろに何かいるの?
さっきまで見て見ぬ振りをしていた生徒たちも野次馬のように集まってきた。
やめてよちょっと!?怖くて後ろ見えないんですけど!!
厳ついお兄さんたちの顔を見回しながら、震える声で言葉を続ける。
「な、なに?どうしたの?」
「ベベベベベベ別に!?」
「や、やべーよ兄貴!ここは引こうぜ!?」
「やめて!?もったいぶらんといて!?後ろになにがいるの!?」
なんと絵に描いたような動揺の仕方!!
ダラダラと冷や汗をかいている赤シューズくんの後ろのいた男の子(仮にBくんとしよう)が、さらに声を上げる。
「もうこのターキーガールは放ってけ!俺まだ死にたくねぇよ!」
「ターキーガールって言うな!」
「そうだなカンザキ。安心しろ、俺が処分しておく。」
耳元近くで低音が響いて聞こえてくる。
いい声だけどなんだろう。
すごく不穏な言葉が聞こえた気がするのは、疲れているからなのかな。
するりと流れるように私の前へ躍り出たのは、紫の瞳が煌びやかに光る人気者。
そして颯爽と黒色のハンカチを取り出すと、私の手に握らせる。
「焼却して一帯を除菌するから、煙を吸い込まないようにしろ。吸い込んだら身体に毒だ。」
「え?いやあの」
「「キャアア!!ヴィルヘルム様素敵ィイイイ!!」」
言ってることは殺害予告なのに女子たちは血を吹き出して倒れていく。
そしてヴィルヘルムくんから預かったハンカチなんて存外に扱うことは出来ず、どうすればいいか困る。
「ヴィルヘルム・サリマン!!テメェ一体どういうつもりだ!」
「貴様に説明したところで理解できるとは思えん。サクッと灰にしてやるからそこ動くな。」
「誰もテメェの指図なんてうけねーよ!女子からキャーキャー言われやがって!!ちょっと顔がいいからって調子乗っ」
ドンっと空気が震える感覚がしたかと思えば、赤シューズくんの顔の近くの壁が黒く焦げていた。
ふるふると子犬のように震える赤シューズくんを叱るように、腰に手を当てたヴィルヘルムくんは深くため息を吐いた。
「だから動くな。照準がブレる。」
「嘘だろおい!し、死ぬ!死ぬ!」
なにが起こってるのか分からず、よく燃えそうな気がするからとりあえず預かったハンカチを口に当てる。
……あれ?超いい匂いだけど私みたいな猿が使うなんて殺されるのでは?
そのタイミングであろうことか、こちらを見たヴィルヘルムくんと目があってしまった。
たった数秒の沈黙。
すると次の瞬間、あのヴィルヘルムくんが胸元を抑えて片膝をついた。
「っく…!なんということだ…!」
「は、はぁ!?」
「心臓がいくつあっても足りん…!」
「ほんと何言ってんの!?」
その衝撃の光景にファンの皆様は戦慄し、あろうことか赤シューズくんに魔法の集中砲火を浴びせる。
「ヴィルヘルム様を煩わせるなんて断罪に値するわ!」
「この時代遅れのヤンキーが!キモいのよ!」
「ヴィルヘルム様の前から消えてなくなりなさい!」
可愛いお姉様方に悪い意味で詰め寄られ、徐々に目尻に涙が溜まっていく。
「いいし別に!俺気にしてないし!!好きでこのファッションだし!」
「あ、兄貴……」
「やめろ!そんな目で俺を見るんじゃねーよぉおおおお!!」
脱兎のごとく走り去る赤シューズくんを、追いかけるお友達とお姉様方。
赤シューズくんの豆腐メンタルぶりに親近感を覚えながらも、結果的に取り残される私とヴィルヘルムくん。
これさ、片膝ついたのって私がハンカチを使ったからだよね。
いよいよ生命の危機を感じて逃げたくなるが、未だに胸元を抑えて唸っている姿を見て放っておくわけにもいかず。
私は恐る恐る声をかけた。