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悪戯されたよ!ヴィルヘルムくん!


大変長らくお待たせしております…!

いつもありがとうございます^_^


またブックマーク登録、評価、感想をいただきましてありがとうございます!


こちらもブーストかけて投稿していきますよー!


今後ともよろしければブックマーク登録、評価、感想などお待ちしております!



「クロー。」


裏庭の扉を開けて可愛い相棒を探す。

昼休みは時間が限られいる。

顔だけでも見れればと思ったのだが。


「クロ?」


あの大きな黒い身体は全く見当たらない。


(結構かくれんぼ得意だよね。)


狼ほどある巨体を隠せるというのはやはり魔犬としての特徴なのか特技なのか。

やはり狩猟本能が卓越している生き物は勝手が違うのだと1人納得する。

これ以上むやみに探してまた他の魔法生物に喧嘩を売ってしまってはたまらないので、とりあえずターキーを半分に分けて購買のおじさんから貰ったペーパーの上に置く。


……本当は手がベトベトにならないようにおじさんから貰ったものだけど、クロに会えなかったから仕方がない。


少し気落ちしながらも裏庭を出ようと踵を返すと、こちらをじっと見つめてくる悪戯妖精ジャックジャックと目があった。


彼らの蝶のように黒い羽根を煎じたお茶はデトックス効果があるとかで重宝されている。

だがその美しさとは裏腹に、迷惑行為ばかりを繰り返す暴れん坊。


その彼らが、なんとも不思議そうな顔で、こちらを見ている。


(嫌な予感がするのは気のせいということにしよう。)


東の国特有のお辞儀をして刺激しないよう慎重に扉へ向かうが、回り込んできたジャックジャックが興味深そうに扉と私を交互に見つめる。

そしてなにかを思いついたようにニヤリと笑った。


あれ、ちょっと……なにする気?


「ギャギャギャ!!!」


「あああああ!待って!それダメ!!」


なんとも可愛くない鳴き声を発した1匹のジャックジャックが、魔法で太い蔦を使って裏庭の扉を包み込んでしまった。


「え!?ちょ、え!?どうするのこれ!」


魔法使いの卵のくせになにも出来ない私は、蔦を力づくで取り除こうとするがモゾモゾと終始動いておりどうすることもできない。


「アギャギャギャ!!」


「ウギャギャギャ!!」


どんな魔法を使ったんだチクショウ。

私を馬鹿にするようにクルクルと旋回し、鼻をほじりだした。

あ、煽ってやがる………。


「この悪戯っ子め…。」


「ギャギャギャ?」


いいのかそんなことを言って?

とでも言うように彼らが人差し指を振った直後、蔦に棘が生えてもはや触れることすらできなくなった。


「ど、どうしよう……」


次の授業まではまだ時間がある。

解除の仕方が分からない今、私にできることは彼らの機嫌をとることだった。


「あ、お腹とか減ってない?」


「アギャギャ?」


「ほら飴ちゃんとかどう?美味しいよ?」


持ち歩いている飴を取り出しジャックジャック達に差し出すと、興味深そうに近づいてくる。

………飴を持ち歩くなんておばちゃんだなとか言わないで。


「アギャウギャ!」


「ほーらほらどう?いい匂いでしょう?ここ開けてくれたら飴ちゃんあげるよ?」


「ガウぺッ!」


「ガウぺ?ってえええぇえ!!」


飴を見て欲しくなっちゃったのか、ジャックジャックの口が凄い勢いで裂けていく。

そしてそのままの勢いで私の手に噛み付いた。


「いった!!え!?痛い痛い!!!」


「ガウガウアギャギャギャ!」


「無理無理ごめんなさい無理です!!食べていいよ!むしろ食べてください!」


思った以上に鋭い牙が食い込み、指からは血が出てしまった。

痛い、痛いがなによりも。


「ああ…飴ちゃんが……」


大事な取引材料が、食われた。


「アギャウギャギャ!」


先ほどの表情とは打って変わり、顔を赤らめ飴を食すジャックジャックは幸せそうである。


「気に入ったのか…ラムネ味…」


「アギャギャギャ?」


「もう一個?ごめんね、もうないよ。」


そんなに美味しそうに食べてくれるのは良かったけど、もうどうしようもなかった。

彼らの気が変わるのを待つしかあるまい。

深くため息を吐いて膝を抱えて座り込むと、ジャックジャックは私の顔色を伺うように飛び回る。


「アギャギャギャウギャ。」


「ウギャギャギャアギャギ!」


私の頭の上に乗っかり、髪の毛を引っ張ってくる。構ってくれってか?

いや違うな、自分たちで遊んでるだけだ。

そして無情にも響き渡るチャイムの音。

あーあ、昼休み終わった。


「次の授業なんだっけ。」


「ギャウギャギ。」


今回は裏庭で授業もないのか、誰もやってくる気配はない。


「このまま一人きりだったらどうしよう…。」


「アギャギャギ。」


「励ましてくれてるの?ありがとう。でもね、励ましてくれるならここを開けてほしいんです。」


「ギャギャギャ!」


「あ……お花。うん、とっても綺麗だねー。見事に伝わってないねー。」


嬉しそうに私にいろんな花を見せにくる彼らに悪気がないのは分かるが、これで単位落としたらどうしてくれようか。

また深くため息を吐いて足の間に頭を入れて項垂れる。


すると後ろから枝を踏んだ音が聞こえてきた。

ま、まさかまたあの蜂みたいな魔法生物が?

錆びついてしまった首をなんとか回し、後ろを振り向く。

そこで目に飛び込んできたのは紫の瞳をギラギラに光らせる私の相棒。


「ク、クロ!!」


「ワン!!」


飛びついてくれるかと思いきやジャックジャックに警戒しているようで、最初に出会った時のように低く唸って威嚇している。


「ガルルルル……ガウ!」


「ギャギャギャギュ!?」


クロは私の周りを飛んでいたジャックジャックを追い払おうと牙を剥いた。


あれ!?いつもの可愛いお顔が台無しだよ!?


突如魔犬に襲われてパニックになってしまったジャックジャックは、方向を見失ったように飛び回る。


「コラ!!いじめちゃダメだよ!」


ジャックジャックを前足で捕まえたクロはとてつもなく不服そうな顔をして私を見る。

言い聞かせるようにクロの顔を掴み、おでことおでこをくっつけた。


「クロは優しい子なんだから、いじめちゃいけません。」


「グルルル……」


「ほら、離してあげて?」


「……ッチ」


え?なんか舌打ちみたいな音が聞こえた気がする。

しかし気づけばクロはちゃんと捕まえたジャックジャックを解放してあげていたので、恐らく気のせいだろう。


というか犬が舌打ちなんてしないか。


そして私を気にするように頬を優しく舐めてくれるクロに安堵した。


「心配してくれたんだよね?ありがとう。」


「ワンワン!!」


尻尾を振るい私の言葉に嬉しそうに返事をする。

そんな嬉しそうに返事をしてくれるクロに気を良くした私は、やることもないのでお話をすることにした。


「もうクロどこにいたの?かくれんぼ上手だね。あ、ターキー食べた?」


「ワンッ!」


電光石火でさっき私が置いたターキーを口にくわえて持って帰ってきたクロは、一度ぺこりと頭を下げた。


「え!なにクロ!お辞儀できるの!?」


「ワンッ!!」


「ええー!嘘ー!凄いよクロ!流石私の相棒だね!謙虚な心は大事だよ!」


ワシャワシャと頭を撫でて気持ちよさそうにしているクロを見て、とても幸せな気分になる。

でも同時に襲ってくるのは私の無力さ。


「こんなにクロは賢いのに私ってばダメだなぁ………。」


「クゥン?」


「私、一応魔法使いの卵なのに…。ジャックジャックの悪戯魔法すら解除できないの。そのせいでお昼休みからずっと出れなくて、授業も無断欠席しちゃうし。ただでさえ成績良くないのにどうしよう…。」


「……………。」


一通り弱音を吐いてさらに自己嫌悪に陥った。

私、なに弱音を吐いてるんだろう。

クロだっていきなりそんなこと言われても困ってしまう。

私がこの子を守ってあげなきゃならないんだから、しっかりしないと。


そう思った私は一度大きく頬を叩き、クロに笑顔を向ける。


「ごめんねクロ!でも大丈夫!なんとかしてここから出る方法を…」


「ガウァアアアア!!」


開いた口が塞がらないとはまさにこのこと。

目の前の光景が信じられなくて思わず目を擦る。


なんかクロの口から尋常じゃない量の炎が出てるんですが、どうしたんですか。


しかも扉に巻きついていた蔦だけを器用に燃やし尽くし、悪戯魔法を解除してしまった。一度咳払いするかのように吠えたクロは得意げに私に視線を寄越す。


「え、凄い……」


魔犬って、火を吹けるんだ。


「ワフッ!」


自信満々に尻尾を振って私に褒められるのを待っているクロが神様のように神々しく、眩しさのあまりに直視することができない。


やっばい。私の相棒、天使で天才だわ。


めでたくここに、相棒ラブの馬鹿が誕生した瞬間である。


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