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ロックオンだよ!ヴィルヘルムくん!

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軽やかな足取りで帰路に向かう少女を笑顔で見送った後、静かにこの大馬鹿者へ視線を向ける。


「どこへ行くつもりじゃ。」


「ワウ?」


すっとぼけたように首を傾げ、小さくなりながら草むらに逃げようとするがそうはいかない。

バレてないとでも思っているのか。

身体からはみ出しているその膨大な魔力が、この魔犬の正体を現しているのだから。


「さて話を詳しく聞かせてもらうぞ……ヴィルヘルム。」


「………………分かった。」


その言葉とともにバキバキと身体が変形するような音が鳴り響き、見慣れた姿へと変わっていく。

そして正座状態で気まずそうにこちらに向き直る馬鹿弟子が姿を現した。

足早に近寄り奴の頭にチョップを繰り出す。


「こんの大馬鹿者めが!魔法生物への変幻魔法は上級魔法使いのみが許されるもの!お前さんのような若造が使うにはまだ早いと、あれほど言い聞かせただろう!」


「………すみません。」


「しかもなんじゃ!カンザキさんの話ではやはりお主、死にかけたそうではないか!好奇心で弟子を失ったと知れたら、もうワシは外に出歩けんわ!」


「おっしゃる通りです…アダム師匠。」


自分に非があることを理解しているのか、早く終わらせるために聞き分けよくしているのか。

はたまた全く違うことに意識を持っていかれているのか。

滅多に使わない敬語で返事をしてくるヴィルヘルムに大きくため息を吐いた。

そして、先程からこちらを見ているもう1人の大馬鹿者にも声をかける。


「お主も同罪じゃシオン。」


「あはは、バレてましたか。」


「なにニヤニヤしとるんじゃ!!お前さんの師匠にもきっちり報告させてもらうからの!」


「えー……僕は変幻魔法使ってないのに。」


「どうだか!お主もそこに直れ!性根叩き直してやるわ!」


それから数時間、ひと通り説教を喰らわせて随分と日も落ちてきた頃。

ついにあの話題を切り出した。


「それで、カンザキさんのことじゃが。お主…………まさか()()()ではあるまいな。」


「………は?い、いや?そ、そんなわけないだろう。誰があんな可憐に笑う慈悲に満ちた眼差しの少女を…」


「絶対好きじゃん。」


明らかに動揺し、地面に円を書きまくる弟子に疑いの眼差しを向ける。

となりのシオンに至っては笑わないよう堪えているが、さっきから空気が漏れる音が聞こえている。


「そうか、じゃあカンザキさんの入学した当初の写真はいらないの。」


「金はいくら必要だ?」


「課金しようとするんじゃない。」


即座にポケットから財布を取り出し、真顔で返事をしてきたヴィルヘルムの様子に確信した。


「お主は将来、有能な魔法使いの血筋を残すために相応のお家柄の女子と結婚することになるのじゃ。カンザキさんと結ばれることは99%なかろうて。」


「知ったことか。他の雌猿など興味ない。それにあの女神は……お、俺の相棒になると言ってくれた。これはもう相思相愛だろう。」


「なに言ってるのこの馬鹿弟子。あの子が相棒になると言ったのはお主ではない、魔犬のクロじゃ。」


「とうとう脳細胞がイかれたのかお師匠。病院に行った方がいいんじゃないか?」


前髪を搔きあげドヤ顔を決めた弟子は仮にも師匠である私に向かって暴言を吐いたあと、言葉を紡いだ。


「魔犬クロは俺だろう。つまり俺の相棒じゃないか。」


「違う、()()()()()じゃ。カンザキさんはお前さんとクロが同一人物であることを知らんだろう。」


「……………………あ。」


一気に血の気が引いた弟子の様子にため息が止まらない。

こんな愚かだったか自分の弟子は。

同時にとなりでずっと笑いをこらえていたシオンが堪らず吹き出した。


「ブフォッ!もう無理!!まさかそんなことも理解できてなかったのヴィル!恋は人を愚かにするって本当なんだね!あっはっは!」


「そ、それじゃあ今すぐ告げれば!」


「そんなことはさせんよ。」


「なぜだ!」


「頭を冷やせヴィルヘルム・サリマン。」


もう一度脳天にチョップを食らわせ、気持ちをリセットさせる。


「仮にお主がカンザキさんに打ち明けて、それで彼女もそのまま相棒になってくれると……一万歩ほど譲ってなったとしよう。」


「そんなに可能性は低くない。訂正しろ。」


「いいから聞きなさい。だが周りにはどう説明する?出会った経緯は?まさか師匠に黙って魔法生物への変幻魔法を使った際に、助けてもらったと言うわけにはいくまい。そんなことを言えばヴィルヘルム、お主だけでなく相棒となったカンザキさんにまで責任問題が降りかかるのだぞ。」


「………。」


「さらに今のカンザキさんとお主のパワーバランスは…はっきり言って月とスッポン。明らかにお主の足を引っ張る。そんな状態をお主を手に入れたい魔法貴族どもが見過ごすわけないじゃろう。」


意味を理解したヴィルヘルムは舌打ちをしながら深く深く俯く。

そして数秒後勢いよく顔をあげて私に訴えてきた。


「だが彼女以外もう考えられない。」


「誰も諦めろとは言うとらん。ワシとしてもカンザキさんは可愛い教え子じゃ、お主を安心して任せられる。だから…」


一呼吸置いて、ヴィルヘルムの肩を思いっきり叩く。


「もしお主が周りの人間が納得するよう上手く立ち回り、かつカンザキさんが自分の力でクロとお主が同一人物だという事実を見抜けるほどになったら、ワシは全力でお前さんたちをバックアップしよう。」


「…………アダム師匠。」


「ワシの言っている意味が分かるな?ヴィルヘルム。周りに文句を言わせない環境を作り、全力で彼女を落とすんじゃ。」


私の言葉に浮かべた表情はいつも通りの、余裕たっぷりの笑みだった。


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