覚悟を決めたよ!ヴィルヘルムくん!
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食事もひと段落したところで、今一度魔犬……いやワンコを観察する。
怪我なし、魔力の流れよし、毛並みよし。
もうこれで心配はいらないだろう。
「よかったねワンコ。」
「クゥン。」
私の前で伏せをして頭を下にさげる姿は、まるでお辞儀をしているようだ。
「お礼……なのかな?いいよ気にしなくて。」
私の言葉に反応し、勢いよく頭をあげたワンコは舌を出してじっとこちらを見つめてくる。
その瞳を見つめていた私は、恐る恐る手を前に出してみた。
「……お手。」
「ワン!!」
「おお!………おかわり。」
「ワン!!」
「じゃあ……おまわりは?」
「ワンワンッ!!」
自身の尻尾を追いかけるようにクルクルと回る姿を見て、思わず瞳を閉じて天を仰ぐ。
「なんて………なんてお利口なんだキミはー!!!」
「アオーーン!!」
頭をワシワシと乱暴に撫で回して褒めまくる。
甘えるように身体を擦り付けてくるこのワンコに、私はすでにメロメロだった。
「なんだいなんだい!どうしてそんなに賢いのかね?ほれほれ!」
「ワウ!!」
「ここか?ここがええんか?ん?この可愛い奴め!」
「なんだかとっても楽しそうじゃのぉ…ワシも混ぜておくれ。」
後ろから聞こえて来た声に身体が飛び上がる。
ゆっくりと振り返ってみれば、目を細めてにこやかにこちらに微笑んでいるアダム先生の姿が目に入った。
なんだろう、めっちゃ怖い。
「カンザキさんの言う通り、この裏庭に魔犬がいるとはのぉ……学園の安全のためにここに置いておくわけにはいかん。」
「ガウッ!?」
ワンコはアダム先生の言葉に、耳をピターッと後ろに倒して顔を引きつらせる。
いや犬に引きつってるもなにもないと思うけど、とにかく明らかに怯えていた。
身体まで強張っているため筋肉を和らげるようほぐしてあげながら、少し不気味な笑みを浮かべているアダム先生に恐る恐る問いかける。
「せ、先生?この子をどこに連れて行くんですか…?」
「魔力摂取、血液検査……脳細胞分析をして隅々まで調べる研究所に行くことになるじゃろうな。裏庭にいるということは相棒がいないということ、それなのに人間の指示を正確に読み取るなんてありえないことからのぉ。……中身が万が一にも人間なら?話は別じゃが?」
「ギャイン!!?」
鋭くワンコを睨みつける先生の姿は、普段の優しい様子からは全く想像がつかない。
「どちらにせよ一度詳細を聞いておかなきゃならん。さぁこっちに来るんじゃヴィル……じゃなくて魔犬よ。」
「クゥゥン……」
尻尾をうちに巻いてうな垂れるように先生の方へ歩いていくワンコに、心が軋むほど痛む。
気がつけば先生に向かって両手を突き出して、立ちふさがっていた。
「どうしたんじゃカンザキさん。ソヤツは危険じゃ。」
「そ、そんなことありません!この子はさっき…私を他の魔法生物から守ってくれました!!」
「守った?コヤツが?他人を?」
信じられないという風に頭を振るうアダム先生に対して力説する。
「そうです!!この子は魔犬ですが、いい子なんです!!安心してください!」
「いやそのバカタレは魔犬じゃ…」
「え?」
「い、いや…ゔゔん……だとしても。相棒というストッパーがいないのに、放置しておくには危険すぎるのじゃ。分かっておくれ。」
「そんな…」
チラリと視線をワンコに向けると、紫色に輝く純粋な瞳が私を見つめている。
やば、可愛い。
そしてその瞳を見つめながら、深く考えず言葉を紡いだ。
「もし……もしどうしても相棒が必要だと言うのなら……私がなります!!」
「「ワウ!?/なんじゃと!?」」
血迷ったか私。
いやしかし、こんな怖がっているワンコを見捨てるわけにはいかない。
「相棒がいればそんなところに行く必要はないですよね?この子はきっとなにか理由があってこの裏庭にいるんだと思うんです…。こんなに賢くて優しい子だから…もしかしたら相棒がいて、帰りをここで待ってるのかもしれません!でもその相棒はなにかしらの理由があって…グスッ!迎えに来られないのかもしれない!!」
「ん?ん?カンザキさん?暴走しとるよ?『かもしれない』が暴走しとるよ?」
「だとしたら尚更、ここに居させてあげたいんです!!力になってあげたいんですぅ!!」
「一回深呼吸したらどうじゃ?」
「くっ!なんてこと!!忠犬ワンコ!今までずっと寂しかったんだよね!絶対そうよね!?」
「ワ、ワン!」
「よぉおおし!私が!あなたの相棒になって幸せにしてあげるからねぇぇ!!!」
「アオーーン!!」
「ワシは一体なにを見せられてるんじゃ。」
私に返事をするように遠吠えをするワンコに抱きつき、思いっきり撫で回す。
とろけるように目を閉じて私に身を任せるワンコの姿を見た先生は、口元に手を当ててなにかを思案する。
そして結論を出したのか、アダム先生は真剣な表情で私を見つめる。
「コヤツの相棒になるとすると、かなりの険しい道のりになるじゃろう。それでも…」
「が、頑張ります!この子の、立派な相棒になれるように頑張って勉強します!」
「うむ…ならワシも出来る限り協力しよう。頑張るんじゃよ。」
アダム先生………好き。
そんな思いを込めて大きく頷く。
嬉しそうに笑った先生は一度大きく手を叩くと、いつもと同じ穏やかな口調で話しかけてくる。
「とりあえず、ワシはこの魔犬を調べなくてはならん。今日はとりあえず帰りなさい。」
「そ、そうなんですか?」
「なに安心せい。身体検査のようなものじゃ。結果は今度カンザキさんに伝えよう。」
「ありがとうございます…!よかったねワンコ!」
「…………ワン。」
小さく吠えたワンコの頭を撫でてゆっくり立ち上がる。
「これからよろしくね。あ、そうだ名前!名前つけてもいいんですよね?先生!」
「ん?そうじゃな、好きにしなさい。」
腕を組んでワンコを凝視する。
照れたようにクネクネする様子が可愛くて頬が緩むが、名前は一体なにがいいだろう。
腕を組んで頭を悩ましているとワンコは頭を傾け、私を見つめる。
その姿を見ていくつか思いついた候補から、たったひとつに絞り込んだ。
その見た目にピッタリな名前だ。
きっと気に入ってくれるだろう。
「クロ!今日からクロだよ!」
私に返事をするように、クロは元気よく吠えた。