なんでこうなるのよ!(sideイロハ)
今までの作品を読んでくださった皆様ありがとうございます。今回は重いしエグい内容を含みます。閲覧にはご注意を。ご要望、アドバイス等ありましたら感想等お願いします。
11/30日題名修正
その電話は突然のことだった。この時の私はこんな大きなことになるとは知らずに、比較的軽いものだと思っていた。
「翠宮先生!!病院から電話です!!なんでも妹さんについて....だとか。代わってください。」
え!?妹に関して?どういうこと!?私の可愛い妹たちに何かあったの!?
「はい、翠宮ですが......。」
「翠宮シキさんのお姉さんでしょうか?」
「そうですが......。どうしました?」
「簡潔に言います。翠宮さんの妹さん、シキさんが先ほど救急車で運ばれてきました。」
「え!?そ、それはどういうことなんですか!?どこか悪いのですか?」
「いえ、病気ではなくて.........言いずらいのですが........」
「早く言ってください!!シキがどうしたんでしょうか!?」
「.........心の準備をしていて下さい。........シキさんは先ほど自殺を図ったそうです」
「..............っ!?」
「それも自分で手首を深く切って、その後首も切るという、死ぬ可能性が高い方法をとっていました。」
「シ、シキは大丈夫何ですか!?」
「こちらで処置はしていますが、まだ分かりません。ですので早く付属病院に来てください!」
「わ、分かりました。すぐに行きます!!」
その後私はすぐに早退して、私とシキの妹のシィアを迎えに行って、病院に行く。
私もだけど、シィアは突然のことで呆然としていた。
しょうがないよね。シィアはお姉ちゃん子だから。私よりもシキに懐いていたからね。
病院に着くとすぐにシキのもとに行く。
病室に入るとそこには、酸素マスクをつけたシキがいた。
シキの左手首と首筋には包帯が巻かれていた。
いつもよりも青白い顔をしてシキはそこにいた。
死んで...........ないよね?なんでシキだけいっつもこんな目にあうの?この子が何か悪いことしたの!?してないでしょ!!この子は優しい子なのよ!!生まれもったものに負けないくらい、強くて、優しくて、自慢の妹なのに.........なのにこれはおかしいでしょ!!
「お姉ちゃん!!」
シィアが泣きながらシキの右手を握る。エグエグと泣きながらシキの右手を自分のおでこに当ててる。
私はシキの頭を撫でる。せめて夢の中だけでも幸せであるように祈りながら撫でる。
ねぇ神さま。シキが生きてくれるならそれでいいから、シキの不幸を私にくれない?シキだけがこんなに不幸な目にあうなんて酷すぎる。私が代わりに受けるからさ、シキを許してあげてよ。
「翠宮シキさんのお姉さんでしょうか?」
「はい、そうですが.........」
私に話しかけてきたのは、30代手前くらいのまだ若い女医さんだった。
「詳しいことは後ほど説明しますので、手短にお伝えします。なんとか一命は取り留めましたが、血を多く失ったため、脳に何か障害が残る可能性があります。それが半身不随なのか、記憶障害なのかはわかりませんが、何かしら残る可能性が高いです」
「え!?」
なんでシキだけなの!?ねぇシキをこれ以上苦しめないで!!
「それとこちらを...........誰も中を見ていないのでご安心を。では失礼します」
女医さんは私に一通の封筒を渡して、病室から出て行った。
シィアはまだ泣いている。
封筒を開けると、一通の手紙が入っていた。
『ごめんなさい。もう私生きるのが辛いです。普通のイジメならまだ耐えられました。でも、未遂とはいえ強姦されかけました。あの時の恐怖はまだ残っています。今でも全身が震えるんです。暗い夜や密室の中だと、余計に辛いんです。いつも頭にあるのは、もし私があの場から助けられなかったらどうなっていたか。ふとした時にフラッシュバックするあの恐怖にもう耐えられません。ごめんなさい。お姉ちゃん、シィア迷惑かけるね。こんなダメな私でごめんなさい。2人の幸せを願っています。さよなら。』
ハラリと紙を落としてしまう。
信じられない。あの強くて優しいシキがここまで追い詰められるなんて。
文章でも綺麗な言葉を使うのに、ここまで文が乱れてるってことは相当辛かったんだね。
ごめんねシキ。お姉ちゃん気づいてあげられなかった。
イジメは問題だけど、この紙に書かれているのが本当ならこれは犯罪だ。私だってまだまだ新人とはいえ教員の1人。これは許されない。
途端に怒りの感情が込み上がってくる。シキの心を壊した人達に対する怒り。
シキが追い詰められていることに気がつかなかった私に対する怒り。
もう感情がグチャグチャでよく分かんない。
でもこれだけは言える。
シキをこんな目にあわせた奴らは絶対に許さない。
シキが入院して1ヶ月。あれから私は自分の立場を利用して、犯人を見つけた。学校側も高校教員である私が証拠も証人もつけて、訴えたから行動せざるを得なかった。
もちろん報道されたし、実行犯たちは少年院行きになった。
学校側は非難の嵐にさらされた。
ここまでやっても私の心は晴れない。シキが受けた傷はこんなものではない。これで許されるなんて思わないほうがいい。
でも今はこれでいいや。これ以上やっちゃうと、大変なことになるからね。
この1ヶ月シィアは学校を休んでずっとシキの側にいた。
シィアもシキと同じ学校にいたから、脅しまくってシィアが休むのは公欠にしてもらった。
責任はあっちにあるんだからこれくらい当然。
私も2ヶ月程度お休みをもらっていた。その時間を使って、証拠探しをしたから、勤め先の校長先生たちには感謝しかない。
今日もシィアを連れてシキのところに行く。
コンコンとノックをして病室に入る。
え!?シキ目、覚めたの!?え!?夢じゃないよね!!シキが帰ってきたんだよね!!
「シキが目を覚ました...........お帰りシキ!!
「お姉ちゃんやっと起きたね!!おはようお姉ちゃん!!」
私達は思わずシキを抱きしめる。
この温もりを永遠に失うところだった。
今度こそお姉ちゃんがシキを守るから。頼りないお姉ちゃんでも頑張るから見てて。
抱きしめていると、急にシキが泣き出した。
もしかして私達のこと覚えてない?いや、思い出せないの?
「お姉ちゃんどうしたの!?」
「大丈夫よシキ。落ち着いて。お姉ちゃんが側にいるから」
だんだんシキが泣き止んでくる。そして少しだけ力を入れて抱き返してくれる。
あぁシキが帰ってきた。私の可愛い妹が帰ってきた。
もうシキを放してあげない。ずっと私が守ってあげるから、もう安心してね?シキを不幸にはさせないから。
そうやって抱きしめていると、シキの主治医である女医さんがやってきた。
一応1番の年上だから私はシキから離れて、女医さんの相手をする。
「あの、少し言いにくいのですが.........席を外してもらえませんか?」
「え!?どういうことですか?」
「実は、シキさんから預かっているものがありまして.........もし自分が記憶喪失になっていたら渡してくれって頼まれたものがあるんです」
「そんなものシキは用意してたんですか?」
「ええ。自分がもしものために用意してたものです」
「..............分かりました。シィア、一旦外に出ようか?」
「いや!!お姉ちゃんと一緒にいるの!!」
「そんなこと言わないの。またすぐに会えるから」
「絶対にいや!!」
「もう........シィアったら。じゃあまた後でこようね?ここにいるお医者さんがシキと2人で話したいんだって。だから私達は一旦外に行こ?」
「わかった...........」
渋々頷いてくれたシィアはシキから身体を離すとこっちにやってくる。
そして私達は病室から出る。
今はこれでいいはず。
シキが目覚めてくれた。
それだけでいいから。
ねえ私達の幸せをこれ以上壊すと容赦しないよ?
怒ったお姉ちゃんは怖いんだからね。
でもまずはシキを抱きしめることから始めようか。
仮に記憶喪失でも大丈夫。私達には家族の絆がある。誰にも負けないほど強い絆が。
だからシキだってすぐに私達のことを受け入れてくれるはずだから。
シキこれからは幸せになってね。貴方は何も知らなくていいよ。私が全部やってあげるから。
お姉ちゃんの力を見せてあげますよ。
少年法、医学についての知識は皆無ですのでご容赦下さい。これからは重い内容は当分でないと思いますので、安心して下さい。←次のも重くなりそうです。嘘言ってごめんなさい。