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第5話 「元魔王、かつての部下に再開する」

 昼の忙しい時間は過ぎ「竜の遠吠え亭」の店内は静かだった、カウンターではヴァイスハイトがグラスを拭いて片付けていた

 「やれやれ、ようやくひと段落か……とりあえず夕方まで時間はあるし、少し休憩するか、はあ、忙しかったなー、それにしてもよく働くな、俺……多分、魔王として城の中に居た時よりも動き回ってないか? 出来れば人手を増やしてほしいところだが、レベッカに言うとやれ人件費がどうの、仕事中に怪我をした時の保証がどうのと色々五月蠅いんだよなあ……」そう言って忙しさのピークを過ぎて静かになった店内を見渡しながら、ヴァイスハイトは呟く


最近はいつもこんな感じでレベッカが買い出しに出かけているあいだ、カウンターの中でグラスを拭きながらぼやくのが、日課になっていた


 現在、店内にはヴァイスハイトと売店の店員しかいなかった、店員は御年七十歳のお爺さんである、最近、耳が遠くなってきてるのか、大声で話しかけないと聞こえないらしい


それはともかく、この酒場、意外なことに店内での一切をレベッカ一人でやっているのである


14、5人も入れば一杯になる小さな酒場ならともかく


代々続く老舗の酒場、しかも大通りに面して建てられている割と大きな酒場なのだ


普通なら従業員の一人でも雇って店を運営するのが当たり前なのに


レベッカはなかなか雇おうとしないのだ、まあ事情が事情だけにあまり無関係な人間を巻き込みたくないという気持ちもわからないではないのだが……


「せめて、俺のかつての部下が手伝ってくれればなあ、まあ、現実的な考えじゃ無いな……」


 そういえば、あれから眷族達はどうしているのだろうか、あの後、皆散り散りになってしまったし……あいつらが素直に魔界に帰るわけもないだろうし


どこかで、雇われ勇者にでも襲われて命を落としたか? いやいや……そこまで連中もヤワじゃ無いだろ…

そうやってぼんやりと入り口を眺めていると、誰かが店内に入ってきた……


レベッカか? いいや、あいつは買い出しに出たばかりだ、帰って来るには早過ぎる、ではせっかちな客が店に来たのか? いいや、それも無い、でも待て! だとすると……


「……こんなところに居られましたか……我が主、随分と探しましたぞ……」


そう言って現れたのは、黒いローブを纏い、背中に弓矢を背負った若い女性のダークエルフであった


「おまえは……誰だっけ?」

ヴァイスハイトの一言に盛大にずっこける女ダークエルフ


「四魔将のカルディアです! お忘れですか!?」

と、猛烈な勢いで抗議するカルディア


「ああ! そうだ! カルディアだ! いやー久しいなー、元気にしていたか?」と呑気に返すヴァイスハイトに


「はあ、変わりませんね、主殿は……良い意味でも、悪い意味でも……」


「何か言ったか?」


「えっ……い、いえ! ……お元気そうで、何よりです我が主」とカルディアは恭しくお辞儀をする


「ああ、いいよそんなに畏まらなくても……今の俺は、この酒場のマスターだ……堅苦しいのは無しにしてくれ」

そういってテーブル席に座るように促すが、カルディアは拒否した……どうやら、ただ会いに来た、と言うわけではなさそうだ


「ふむ……ところで、こんな所まではるばる何の用だ? カルディア」

と改めて此処に来た理由を問うヴァイスハイト


その言葉にカルディアは真面目な顔つきになりヴァイスハイトを見つめる

「……お分かりになりませんか?」

ヴァイスハイトは腕組みをして

「うーん……」

と、しばらく考えた後

「おお! そうか! わかったぞ!」

と声を上げる、その声にカルディアは

「おお、我が主……やはり分かってくださいましたか……」

と感動する……が、ヴァイスハイトは

「そうかそうか、お前も苦労しているんだな……ちょっと待って居ろ」

と言うと、入り口の壁に貼ってある依頼書の一枚を眺めて

「うむ、これだな」

と言って剥がしてカルディアの前に見せた

「……我が主、これは一体?」

「うむ、お前は弓矢が得意であっただろう、おひとり様限定の狩猟の依頼書だ、報酬もそこそこ良いぞ?」

そう言って説明するヴァイスハイトに

「ほー、コレは難易度の割に良い報酬額ですね……これなら暫く食いつなげ……って違います!」

と、ノリツッコミで返すカルディア

「では一体なんだ?」

そう言うヴァイスハイトに対し、カルディアはこう答えた

「……魔王軍の復興の為に、はせ参じてまいりました」


カルディア 種族 ダークエルフ 

性別 女  年齢 外見上は20歳 実年齢は800歳

魔王軍の中において魔王に次ぐ実力(かなり差があるが)を持つ四魔将の一人

魔族では無いので自ら「魔王」を名乗る事もそれを呼ばせることも無い

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