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第4話 「異世界から来た公務員」

 「さて、後片付けを始めるとするか……」

 異世界の名もなき自称・魔王をレベッカ達が追い出し、ヴァイスハイトが魔法を使って店内の修復と掃除を始めた、魔力を練り、足の折れたテーブルや破壊された入り口を修復していく……魔法としては初歩の技らしいが、修復する物によっては魔力を大量に消費する為、大規模な修復を人間が行う場合は複数人で行う事が多い、修復と言っても一時的に傷を隠すことに近く本格的な修復は後日職人を呼んで行うのがこの世界の常識である


 一通り作業を終えると、ヴァイスハイトがカウンターに戻ってきた、奥の酒樽からラガー酒をジョッキに注ぎ、そして一気に飲み干す

「プハー! やっぱり作業の後の一杯はたまらんなあ!」上機嫌である


「いやー、しかしルーク君も災難だったねえ、ま、あたしたちにとってはこの程度のゴタゴタなんて日常茶飯事だけど」

と笑いながら、話すレベッカ

「……え? あんなのが毎日あるんですか?」と驚くルーク

だがヴァイスハイトが否定する

「ルーク君、それは違うぞ、レベッカもあんまり誇張しないでくれ、毎日あんなのは起こらん、せいぜい週に四日ぐらいだぞ……」


つまり1日おきに騒動が発生するという事だ


「……いやあの、それでも十分多いんですけどね」

ははは、と乾いた笑いのルーク


「それにしても、あれだけの騒ぎだってのに、ケガ人が殆どいなかったねえ……普通なら死体の一つや二つ、その辺に転がっていてもおかしくないのだけど、本当に奇跡だねえ」とレベッカは頷く


「ああ、それですか? それは――」そう言いかけた時入り口から一人の男が入ってきた、上下黒のピッチりとした衣服を着た男はレベッカに尋ねる


「失礼いたします、こちらは〈竜の遠吠え亭〉ですか? 実はルークさんを探しているのですが」

男に問われてレベッカは答える

「ん? ああ、ルーク君なら、ここに居るよ? ホラ」

そう言ってカウンターの席に座っているルークを指す


「あ! アンドウさん、無事だったんですね?」気付いたルークが男をそう呼ぶと

「ルークさん、指示通りに事後処理を終えて来ました、ボルグさんやマルクさんも神殿で治癒魔法の治療を受けております、ああ、エミーさんは魔術学院によばれたとかで、しばらく帰ってきませんが」

アンドウと呼ばれた男は淡々と報告する



「アンドウさん、ありがとうございます」


「いえいえ、これも仕事ですから」


「あーちょっといいかい? ひょっとして今回ケガ人が殆どいなかったのって……」


レベッカが会話に割って入り質問する、するとルークが答える

「あ、はい…実はエミーさんが、あの魔王を召喚した時にアンドウさんに店の代金の支払いと冒険者ギルドへの連絡を頼んでいたんです、で、ボルグさんとマルクさんには魔王の注意を惹きつつ、大通りへ移動して魔王を誘導してもらい、エミーさんには炎系の攻撃魔法で魔王の周囲に弾幕を張って、魔王のけん制と野次馬が近づいてこないようにしてもらっていたんです」


「まあ、ボルグさんとマルクさんは途中で魔王に吹っ飛ばされていたようですがね」とアンドウは補足する


「で、ルーク君はここに助けを求めに来た…って事かい?」


ヴァイスハイトは感心していた、あの魔王とやらが召喚されたその時に、瞬時に判断して仲間に指示をしていたのか? なるほど、これならあのパーティーが下級とはいえドラゴンを退治できるわけだ


「なるほどな、ところでルーク君、このアンドウという男ひょっとして異世界の住人か?」


ヴァイスハイトがルークに問いかけると

「あ、はいそうなんですよ、アンドウさんは、エミーさんの召喚魔法でこちらに来た、異世界人なんです」

ルークがそう答えるとアンドウが前に進み黒い上着の内側からカード入れの様なものを取り出し、そこからカードを1枚手に取り名乗った

「先ほどご紹介に預かりました、アンドウミキオと申します、冒険者パーティーの〈シグマ〉に所属しておりまして、職業は公務員…と、ここの世界ではレンジャーをやっております、以後お見知りおきのほどを、よろしくお願いいたします」

そう言ってアンドウは名刺をヴァイスハイトに渡すと深々とお辞儀をした


ヴァイスが受け取った名刺には元の世界に居た時のものらしい場所と所属先とは別に

新たに〈冒険者団体シグマ 所属レンジャー アンドウミキオ〉

と書かれていた


「ああ、これはご丁寧にどうも……私はヴァイスハイト、こっちはこの店の実質的な経営者であるレベッカだ」

「これは……いやはや、先ほどは失礼いたしました、あなたがかつての大戦「人魔戦争」の英雄、勇者レベッカさんだったとは……」

とアンドウは言うとレベッカは少し照れながら

「ああ、そんな堅苦しい呼び名は良いって、第一それは『昔』の話、今は引退してここの冒険者酒場のただの女将だよ」

とレベッカは手をひらひらさせた


「さてと、ルークさん、そろそろ行きますか、ボルグさん達も退屈しているでしょうし……」


アンドウはそう言ってルークを促すとルークは席を立ち

「そうですね、……あの、ヴァイスハイトさん、レベッカさん本当にありがとうございました」


そう言って二人に向かいお辞儀をする


「ああ、またいつでもここにきな、ルーク君なら大歓迎さ」とレベッカは笑う

「ルーク君、困ったことがあったらいつでも相談に乗るからな」とヴァイスハイト


「はい! ありがとうございます!」とルークは再び深くお辞儀をする

「では、これで失礼いたします」とアンドウは一礼するとルークと共に店を出た


「……さてと、そろそろ朝に出てった連中がかえって来るよ! 準備は良いかい?」

「愚問だな、もう仕込みは済んでいる、この私を誰だと――」

「あーそういうのはいいいから! サッサと動きな! 客は待っちゃくれないよ?」

ヴァイスハイトの言葉を遮り、レベッカはハッパをかける


「はいはい……」ヴァイスハイトは少し肩を竦めると、厨房に入っていった








Youtubeで配信するラジオドラマの脚本を書いていた時に、いくつかセリフの不備を訂正したため

併せて此方もなおすことにしました。

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