第19話 「断罪の時間」
王都メイ・アンガーで発生していたここ数週間の「連続婦女暴行事件」の犯人、釣り目の男はヴァイスハイト達の活躍で今、捕縛されている最中だ、レベッカ達は手際よくゴロツキたちを縛っていく
「アンタ、こっちはもう終わるよ、こいつらはどうする? 」
「ああ、一か所に纏めておいてくれ、俺の魔法で衛兵詰め所前に送っておくから……さてと、それはそうとしてこの男、確か異世界転移者だったっけ? 魔法が使えたという事はアンドウとは違って【ギフト】持ちか……ん? 」
ヴァイスハイトは釣り目の男がはめている指輪の変化に気が付いた
「これは……チッ! 面倒なことをしてくれる…… 」
そう言うとヴァイスハイトは指先に魔力を集中させて釣り目の男が指輪を填めている方の手を取ると、その指を切断した
「……!? い、いってえええええええええ!! 」
ヴァイスハイトの魔力によって傷口は焼かれて止血はされたが、あまりの激痛に気を失っていた釣り目の男が目を覚まし絶叫する
「お……俺の指が! うぐうううう! テメエ! 慈悲ってもんが無いのか!? 」
どの口が言うんだ、というセリフを男は吐いたが、ヴァイスハイトは冷静に
「フン、慈悲だと? お前が今まで襲った娘たちに与えた苦痛に比べれば些細なものだろ、それに私はお前を助けてやったんだぞ? 感謝はされても恨まれる筋合いはないな」
「……はあ? 助けた? どういうことだ? 」
「ほれ、この指輪をよく見てみろ」
ヴァイスハイトがさっき切り取った指を男に見せる、青い宝石の填った指輪は怪しく光り、そこから紫色に変色……そして真っ黒になった
「ヒェッ、なっ……なんだよこれは!? 聞いてないぞ! 指輪に呪いがかけられているなんて! 」
「やはり、知らなかったか……ところで貴様、この指輪は何処で手に入れた? 」
「うっ……も、黙秘権を……行使する」
「……は? 」
「衛兵でもないお前たちに軽々しくべらべらと喋るものかよ、俺は与えられた『人権』を行使させてもらう。」
「はあ? 何言ってるんだ? ……おいアンドウ、ちょっといいか? 」
周囲を警戒していたアンドウがヴァイスハイトに呼ばれて来る
「ああ、ヴァイスハイトさん、どうしました? 」
「なんか、こいつが妙なことを言ってきたんでね、『黙秘権を行使する』だの『人権を行使する』とか言い出してな……アンドウなら何か知っているんじゃないかと思ってな」
「ああ……そんなことを言ったんですか……ええと、まあ『黙秘権』というのは私が元居た世界での国民に与えられた人権の一つではありますが……この世界でそんなことを言うとはねえ……何というか、流石は『かの国』の国民だけの事はありますねえ 」
「かの国? 何だそれは? 」
「私の祖国の隣にある国家がそう呼ばれているんですよ、まあ酷いもんですよ……恩を仇で返す、物は平気で盗む、女であれば年寄りでも襲う、おまけに私の祖国に異常なほど対抗心と言うか敵対心をあらわにする……しかし技術や基礎が全くなっていないのに虚栄心だけは人一倍」
「そりゃまた酷いな……」
ヴァイスハイト達の会話に釣り目の男が反論する
「出鱈目を言うな! 我が国は古代より世界に誇る文化を生み出し、科学技術は最先端、世界で最も優秀な民族ナダ!」
「は? な、なだ?」
「ああ、気にしないでください、これも何時もの事ですから……さてヴァイスハイトさん、そういう訳なので、こいつの言う事は無視してもらって、構いませんよ、それに尋問したところでこの様子では大した情報は出てこないでしょうし」
「たいした事無いとは何だ! 撤回しろ! あ、それにお前……日本人だな、お前にそんなことを言われる筋合いはない! お前の国こそ過去に行った戦争犯罪に対し謝罪と賠償をしろ! おれは選ばれた人間だぞ! 女性の一人や二人どうしようといいじゃないか! むしろこの俺が相手をすることを光栄におもぇブフェッ⁉ 」
釣り目男の戯言は最後まで言い終わる事無く、アンドウとヴァイスハイトの間に割って入ってきたレベッカが、釣り目の男の顔面を蹴り飛ばした……多少手加減はしたようで、衝撃で首が胴体から離れると云う事は無かったが、代わりに体が吹っ飛んで突き当りの壁に激突する
「レベッカ? いきなりどうした? 」
「アンタは黙ってて、この糞野郎の話を聞いたら我慢が出来なくってね……アンドウ、コイツが襲った被害者の数って何人だっけ? 」
「そうですね……確か、かなりの人数が居たはずです、正確な数字は覚えていませんが、恐らく10人ぐらいだったと思いますね」
「たった三週間余りで10人もか? 呆れたな 」
「まあ、この男が元居た世界の国なんてもっとこの手の犯罪発生件数が酷いですけどね」
「ふ~ん……なるほど、ありがとうよアンドウ、じゃあその10人分のお返しはしておくか」
そう言ってレベッカは壁際でうなだれる釣り目の男の胸倉をつかむと、グーパンで顔面を殴り始めた……1発、2発、3発と規則的に殴り続ける、打ちぬくと頭を吹き飛ばしかねないので少し拳がめり込んだらすぐさま引き抜く、そして撃ち込むを繰り返す
「ゲエッ! ウグッ! ガハッ! オゴッ! ッ……! ……! 」
最初は悲鳴を上げていた釣り目の男であったが、次第に喋る事も出来なくなるほど顔面が変形する……とレベッカが殴る手を止めて手のひらをかざす、そこから淡い光が発生すると、その光を男の顔に当てる
「おいこら、何勝手に沈んでんだよ、被害者が受けた痛みはこんなもんじゃないよ? 【ヒール】……よし、おい、何か言ってみろ糞野郎」
「は? え? 傷が……なおっていブベラッ!? 」
そしてレベッカがまた顔面殴打を再開する、男が気を失うと【ヒール】で回復させ、意識が戻るとまた殴る……僅か数分であったが、明らかに被害者の数以上に殴った後、回復魔法で傷を治して男を掴むとヴァイスハイトのもとに投げ飛ばす、ヴァイスハイトは片手でそれを受け止めると一纏めにしたゴロツキ共と一緒に【テレポート】のゲートに放り込んだ、送り先は衛兵団本部前である
「さてと、こっちも片付いたし、いよいよ本命に向かうとするかね」
「ああ、しかしまさか『連続婦女暴行事件』そのものが捜査の目を欺く囮とはな、ザーバルという男はやはり危険だな」
「今、ボルグさんから連絡が来ました、ブラッドさんと合流したそうです。」
「よし、それじゃあ俺の【テレポート】を使おう、これなら直ぐに追いつく。」
「やれやれ、ようやく黒幕とご対面か……それじゃあ総仕上げといきますか、カルディア、二度とあんな男なんかに引っ掛かるんじゃないよ? 」
「大丈夫ですよ~……まあ、同じ人間でも、アンドウさんとかブラッドさんぐらいなら……ねえアンドウさん? 」
「カルディアさん、からかわないでください……さて、そろそろ行きましょう。」
【テレポート】の魔法でブラッドやボルグの元へ向かうヴァイスハイト達、長い一夜も、ようやく終わろうとしていた




