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第18話 「姑息な男の末路」

ヴァイスハイト、ブラッド達も連続婦女暴行事件の犯人の追跡を行う別動隊であるレベッカ、アンドウ、カルディアと合流し

今回の黒幕の存在が明らかになる、一方で犯人とは別に拉致を行う一団を確保するべく、アンドウはヴァイスハイトから通信用のマジックアイテムを借りてボルグと連絡を取る、いよいよ連続婦女暴行事件も大詰めを迎えようとしていた


 場所は王都メイ・アンガーの中心から外れた裏通り、貧民区画と呼ばれる場所の細い路地をヴァイスハイトに変身した犯人が偽カルディアを連れて歩いていた


「あのお、随分歩いているんですけど、一体どこまで行くんですか? ヴァイスハイト様……今夜は重要な用事が有るという事なので店が終わってから此処まで来ましたが、そろそろ教えてもらえないでしょうか? 」

ドッペルゲンガーが変身した偽のカルディアはそう言って偽ヴァイスハイトに問いかける


「ああ、そうに……そうだな、ずいぶん連れまわしてしまってすまないな、人目もない事だし、この辺で良いだろう……カルディア、今から私が云うように行動してくれるか? 」

青い指輪を填めた、偽ヴァイスハイトはそう言ってカルディアの方に対面する


「……はい、我が主のご命令とあれば、何なりと」

そう言って偽カルディアは恭しく膝まづく、その姿を見てニヤリと不敵に笑う偽ヴァイスハイト


「そうかぁ……ならば、この場でその身にまとうものを全て脱ぎ捨て、我の元へ来い……ククク」


「了解しました、我が主」

そう言ってゆっくりと服を脱ぎ始める……褐色の肌が露になり、そして徐々に偽ヴァイスハイトに近づいていく……が、犯人は妖艶なダークエルフの女の姿を目の当たりにして、もはや高ぶる欲望を理性でコントロールできなかったのであろう、近づいた偽カルディアに一気に覆いかぶさるようにその両手で偽カルディアの肩をつかむ


「あ……な、いきなり何を? コレは一体? 」

動揺する偽カルディア、ここで偽ヴァイスハイトは姿を変えて本来の姿に戻る、その姿はアンドウのように元の世界の日本人……のようにも見えたが、釣りあがった細い眼、ひどく張った頬のエラ、そしてやたらと白いその肌が一層周りの暗闇と相まって不気味に映った

「うひょひょひょひょ……やっぱりこの瞬間がたまらねえ! この姿を見て恐怖におびえる姿、俺の大砲がさらに口径を大きくするぜエッ‥‥! 」

そう言って自身の股の間の(自主規制)を弄りながら下品な笑い声をあげる犯人、だが彼の誤算は、彼女を……カルディアを、ただの美しいダークエルフと思っていたことだ


「貴様! ヴァイスハイト様の姿を騙るとは、不敬にも程がある! しかも主の名を騙り私の体をその薄汚い手で汚そうとは……その罪、命を持って償え! 」

そう言うとカルディアの体から魔力がオーラのように漂う、そして脱いでいた衣服が戻っていく、そこに居るのは愛嬌のある笑顔で旅人の心を癒す店員カルディアでは無く、魔王軍四魔将の一人、弓使いのダークエルフ、カルディアであった、しかし


「……クククッ、フハハハハハッ……」


「貴様……何が可笑しい? 追い詰められて気でも触れたか? 」

怪訝そうな顔をする偽カルディア、そんな様子を見て犯人の男はべらべらと喋り始める


「フン、コレが笑わずにいられるか! ひとつ良いことを教えてやろう、俺は何も考え無しに、ここまでお前を連れだした訳じゃあない、お前がただの店員じゃないであろうことも想定済みさ、ククク……おーい! 出てこいや! 」


 ツリ目の男がそう叫ぶと偽カルディアの周りにどこに潜んでいたのか10人ほどのゴロツキが姿を現して取り囲んだ、男たちの手にはナイフが握られており、ニヤニヤと偽カルディアを眺めている


「へえ……これがアンタの『戦力』ってわけ? 」


「ああ、その通りだ、残念だったなあ…大人しく言う事を聞いておけば、一寸はイイことが出来たのによお……」

男のその発言に偽カルディアはクスリと笑う


「テメエ! 何が可笑しい! 」


「そのセリフ、そっくりアンタにお返しするよ、我が敬愛するヴァイスハイト様のお姿のままであれば、少しはサービスしてあげたのに……馬鹿な男、それにね……こんなチンピラにやられるほど、私は弱くはありませんの、さて……どなたからお相手願えるのかしら? 」

そう言って周りを取り囲むゴロツキ―ズを挑発する偽カルディア


「このアマ、舐めたことぬかしやがってえッ⁉ 」

一人が偽カルディアに飛び掛かろうとしたその矢先、男は床にあおむけに倒れていた、そう、男は偽カルディアに片手で投げ飛ばされたのだ、石畳の道路に背中から落ちた男はあまりの痛みに耐えかねて気絶した


「このおっ! 相手は一人だ! 一斉にやっちまえ! 」

釣り目の男がそう叫ぶとゴロツキ―ズは一斉に飛び掛かる、偽カルディアは一人、また一人と投げ飛ばすが、数に物を言わせるゴロツキ―ズが一瞬のスキを突いた


「……え? 嘘……」

ゴロツキの一人が飛び掛かって突き出したナイフが偶然、偽カルディアの体を捉えたのだ、腹部に深く刺さるナイフを偽カルディアが掴み引き抜こうとする……が、何故か力が入らない


「リーダー、やりましたぜ! コレでヤツはまともに動けませんよ! 」


「アヒャヒャヒャヒャ……かかったな! そのナイフにはなあ、痺れ薬が塗ってあるんだよ! 一太刀でも傷が付けば、たちどころに効果を現し、マトモに立っている事だって出来ねえよ! 」


「クッ……おのれ…卑怯な……っ」

そう言って膝を落とし、ガクリとうなだれる偽カルディア


「さて、じゃあ改めてその体を堪能するとします……か? 」

自由の利かなくなった偽カルディアを再び襲おうとした矢先、偽カルディアの体が変化した……そう、役目を終えた為、元のドッペルゲンガーの姿に戻ろうとしているのだ、これに釣り目の男は驚き


「なっ……こいつは、偽物? クソ! 失せろ化物! 【ホーリー・アロー!】! 」

こんな奴には似つかわしくない神聖魔法の矢がドッペルゲンガーの体に突き刺さる! 深手を負ったドッペルゲンガーは悲鳴を上げてその場に倒れると煙を上げて姿を消していった


「チッ! まさか偽物だったなんて……それじゃあ本物はいたい何処に? 」


釣り目の男の疑問は緊迫したこの状況に似つかわしくない声で答えられた


「はーい! 本物はここに居まーす! 」


「さーて、こいつらどうしたもんかねえ……ねえアンタ? 」


「まあ、死なない程度には、痛めつける必要があるかな? あとカルディアよ、興が削がれるからそういう軽い返し方は控えろ」


「あ、申し訳ありません……なにせあいつらが何とも言えない間抜けな顔をしているものですから……つい」


「さてさて、私はどうしましょうかねえ……あ、どうも連続婦女暴行事件の犯人の皆様、どうです? 獲物を追い詰めているはずが、逆に追い詰められていると気付いた時の気分は 」


問われた釣り目の男は一瞬絶句したが

「ハアァーーーーーーッ!? フザケルナヨォッ! おい! おまえら怯むんじゃねえ! 所詮、冒険者酒場のおかみとその主、おまけに弱そうな男だ! 構わねえ! 一気にやっちまえ! 」

釣り目の男の檄に我に返ったゴロツキ共はヴァイスハイト達に襲い掛かる……が、全員ヴァイスたちの元にたどり着く前に、見えない壁に弾き飛ばされた


「!?!?!?!? 」

何が起こっているのか理解できない男たち、何度も突っ込んでいくが、その度に見えない壁【魔力障壁】にはじき返されて勝手に体力を消耗していった


「アンタ、何で戦わせてくれないのさ、こっちは退屈なんだけど」


「おまえな……こんな所で無駄に体力を使ってどうする、本命は今ブラッドが追跡している、戦うのならそっちでやれ、こんな雑魚にはお前の剣技は勿体ないわ」


「さすが我が主、見事です、ところで話は変わるんですけど……あのう、チョット聞きたいんですけど……ドッペルゲンガーが変身した私の身体……ほらっ! あの糞野郎に促されて服を脱いだじゃないですか……どうです? 私、魅力的でしたか? 」


「あ……カルディアさん、それを今ヴァイスハイトさんに聞いたらいけませんよ、レベッカさんが」


「フッ……アンドウ、気遣いは無用よ? ねえ~ヴァイスハイトぉ~実際のところどうなのさぁー 」

軽い口調で話すレベッカの……目が、笑っていない


「あ……ああ、そうだな……まあ、そのなんだ、流石ダークエルフは容姿端麗だ……よな、な? レベッカ? 」


「……ふーん、そうよねぇーまあ、確かにそうだよねぇ……さて、こいつら勝手に伸びちゃったし、ふんじばって先に行きましょうかね、ねえアンドウ? 」


「あ……そ、そうですね、あはははは…… 」

流石にアンドウも乾いた笑いしか出てこない


「テメエら! 何ふざけたことを抜かしてやがる! こうなったら魔法で……!? 」

と、雑魚扱いされた上に放置プレイまでされた釣り目の男が激昂し魔法を繰り出そうとするが、陰に潜んでいたヴァイスハイトの眷族である豹が飛び出し、頭突きで男の顎を撃ちあげた


「ゴベブファッ!? 」

綺麗な頭突きが顎に決まった釣り目の男は……白目をむいてその場に気絶した…あっけないものである


「さてと、そろそろブラッドから連絡が来る頃だから向かおうか、あと、終わったらゆっっっくり話し合おうか? ヴァイスハイト」


「あ、は……はい……」


事件の一つは解決したが、それとは関係ない別の問題が浮上したようである一方その頃


「あ、そういえば犯人の手口に被害者の衣服をまず脱がすっていうのがあったな、大丈夫かねヴァイスハイトの旦那」

と、ボソッと呟くブラッド、すでに手遅れだという事はこの時点では知る由も無かった



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