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第15話 「謎の物体と因縁の男」

地下の最奥にあった部屋の中にはいくつかの鍵付きの箱と金庫が有った、ブラッドたちはその中身を調べると、金庫の中に奇妙なガラス瓶を発見する

「なんだ? これは……ヴァイスハイト、ちょっと来てもらえるか? 」

そう言ってヴァイスハイトを呼ぶと中に在った瓶を取り出して見せた、ヴァイスハイトがその瓶を確かめるや否やたちまち苦々しい顔になる

「なぜこんなところに? もう全て封印されたものと思っていたのだが…」

ヴァイスハイトのこの言葉にブラッドは怪訝な顔をする

「どういうことだ? この瓶の中身について何か知っているのか? 」

そういってブラッドは瓶の中身をガラス越しに覗く、中には奇妙な種子が四方に根を伸ばした状態で漂っていた、これにブラッドは

「この種に見覚えが? まあ植物の種にしては妙に大きいとは思うが…」

この言葉にヴァイスハイトは

「一見すると植物の種子に見えるだろうが、これはもっと活動的な生物だよブラッド」

「はあ? こいつが生物? にしては随分厳重に管理しているな、それほど危険なのか? 」

ブラッドの言葉に頷くヴァイスハイト

「ああ、危険なんてものじゃない、こいつは『魔物強化生物』と言われる代物だ、お前も名前ぐらいは知っているんじゃないのか? 」

ヴァイスハイトの言葉にブラッドはハッとする

「……思い出したぜ、こいつは人魔大戦の途中で手に入れた情報の中に在った「禁忌魔法」の産物じゃねえか、確か古代王国末期に魔物を強化し意のままに操る事を目的に作られたが結局使用されずに封印されたと聞いていたぞ? ヴァイスハイト、何でコイツがこんなところに? 」


「それは俺にもわからん……それにお前が言う通りこいつは『致命的な欠陥』が見付かったので、ごく僅かなサンプル以外は全て焼却処分されたんだが、それが何故か古代遺跡から発掘、持ち出してここに保管したってことになる、こんなことが出来るやつは俺が知る限り一人しかいない」


「ヴァイスが知っているって事はやはり【人魔大戦】の時期の人間……とも限らねえか……だが、それは一体誰なんだ? 」


「ブラッドお前も、そしてレベッカも知っている奴だよ」


「俺たちが知っている? って……まさか、ザーバルの野郎か!? いや、だがアイツは死んだはずじゃないか? あの【人魔大戦】で俺たちが魔法王国の解放の為に進軍していた時期に奴が率いていた魔導士部隊が壊滅……奴も深手を負い、それが元で死んだと聞いていたが」

その言葉にヴァイスハイトは頷く

「おれもその戦いで倒されたと報告を受けていた、だがアイツが、カルディアが俺の所に会いに来た際に実は生きていたって事を知らされたんだ……」


 時間はヴァイスハイトがカルディアと「竜の遠吠え亭」で出会った頃まで遡る、レベッカが戻る前の数刻、カルディアは新たな魔王軍の居城に戻るように進言していたが


「魔王軍の再興……か、悪いが今となってはその野心は無い、わざわざ訪ねて来てくれた事には嬉しく思うが」

そう言うヴァイスハイトにカルディアは

「しかし、主が戻らねば魔族の統率に支障をきたします、そうで無くてもあのザーバルが古代王国遺跡付近で目撃されたとの情報を聞いていましたので……」


「ちょっと待て、どういう事だ? 確かヤツは……暗黒魔導師ザーバル・タスフェは魔法王国防衛戦で戦死したと聞いていたぞ? 」


「いいえ、確かに深手を負ったのは事実ですが、その後何処へと姿をくらましていたようです、私も報せを聞くまで戦死したと思っておりましたが……魔導部隊壊滅の際に【クリエイト・ドッペルゲンガー】の魔法を使用していたようです、人の身でありながら現場に遺体が無かったというのも、それが原因でしょう」


「だとすると、これはかなり深刻な状況だな……四魔将の内、この事実を知っているものは? 」


「私と邪龍師団長のアビス・オニキス、他は【人魔大戦】以降接触していませんので残念ながら不明です、ですから一刻も早く共に【瘴気地帯】にある新たな我らの居城に戻りましょう! 」


「……そうしたいのは山々だが、今は無理だ、ここから離れることは出来ない」


「そんな! みすみす魔族に危害が及ぶ事態を見逃すおつもりですか⁉ 」


「まあ聞け、離れることは出来ぬが連絡は取れる、カルディア、オニキスは今何処に? 」


「はい、オニキスは恐らく瘴気地帯の居城にいると思います、私が旅立つまでそこに居たのは確認しておりますので……ただ、その後移動していると捕捉は難しいかと…」


「いや、やつは居城を守るつもりで残っているのだろう、あいつはそういう奴だ、であればこちらから呼びかけてみよう……大体の場所が解れば、この魔法も使えるハズだからな……」

 そう言うとヴァイスハイトは居場所の判る四魔将のみに伝わる伝心魔法【ピンポイント・テレパス】を使いオニキスと会話したのち、カルディアに念の為、この事実は暫く伏せるように指示した


 ザーバルは魔法、戦略、兵器開発において四魔将に並ぶほどの力を持ってはいたが、余りにも野心が高く目的の為には手段を選ばないという彼の性格が危険だと判断し、侵攻作戦には重く用いず魔法都市の統治と防衛に留め置き、さらに監視の魔族を配置するなどして警戒していた、しかし【人魔大戦】での戦いで勇者達【連合軍】に奪還され、ザーバルも瀕死の重傷を負い、さらに監視の魔族からザーバルの物と思われる物を発見したとの報告を受けて、ヴァイスハイトはザーバルが戦死したと判断、戦線の後退を余儀なくされた為、撤退したのだった


話は再び地下の隠し部屋に戻る


「まさか、奴はまだ野心を捨てきれていないのか……かつては私も人間を支配するという目的の為に色々やってはいたが、流石に奴ほど非道にはなれなかった、まあ結果戦争に負けることになったのだがな」

そう言って自嘲気味に笑うとブラッドにカルディアとのやり取りを話す


「ほう、そんなことがねえ……だとすると急いで別動隊に合流した方がいいかもな、ここで手に入れるべき証拠は手に入れた訳だし、長居は無用だ」

そう言うとブラッドは金庫に保管されていた木箱や書類を荷袋に入れて立ち上がる


「確かにな、いくらアイツでも裏で糸を引いているのがザーバルでは分が悪い、で、この部屋はどうする? 」

ヴァイスハイトも自身の【無限荷袋】に辺りの物を詰め込むと、おもむろに【テレポート】の魔法でゲートを開こうとするがブラッドがそれを止めた


「この部屋か? 上に居る部下に確保させとくよ、ついでに一か所寄るところが有るんだ、だから【テレポート】の魔法は宿屋を出てからにしてくれ」

というブラッドに


「ふむ、なにか考えが有るのだな? 承知した、ではいこうか」


そう言って二人は部屋を後にした、宿屋を出るとすぐにヴァイスハイトは【テレポート】の魔法を展開しブラッドの指定する場所へ向かった、その場所は王都の中心「衛兵団本部」である……









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