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第11話 「銀狼と呼ばれた男」 中編

かつて【銀狼】と呼ばれた男、盗賊ギルドの表向きの顔「デイ・クロニクル新聞社」のギルドマスター改め社長であるブラッド・パイソンは、最近王都を脅かしている連続婦女暴行事件の犯人を突き止めるべく、総力を挙げて捜査に取り組んでいた、その成果として


事件はギルドにしか流通していない「変化の魔法」が使える指輪を所有している事


それによって、ライバル社にあらぬ疑いをかけられて、バッシングを受けている事


どうやらライバル社である「モーニング・サン・クロニクル新聞社」の指輪が何者かによって横流しされている事


事件の前にはターゲットとなる娘の飲食店に出入りしている事


人相書きを手に入れた事


など、有力な手掛かりを手に入れていた、そしてそのことを「竜の遠吠え亭」の女将でかつての仲間であったレベッカと酒場の主人であり、かつての大戦では宿敵だったヴァイスハイトに事件の情報を話していた


-時刻は昼を過ぎて、ブラッドと数名の客が店内に残っていた、その客の中に「事件の容疑者」も……


だが、まだこの時はブラッドやレベッカ達は気付いていなかったのだった、そして今後どうするかという話になっていた


「正直、うちの者が堂々と調査できる範囲を、もうだいぶ超えているからな…そろそろ冒険者に依頼をしようと思うんだが、依頼に答えれそうな冒険者パーティーは居るかい? 」

とブラッドは一応聞いてみるが


「う~ん、居ることは居るんだけどねえ……」と妙に歯切れの悪い答えのレベッカ


「ブラッド、独立愚連隊のシグマを知っているか? 」と逆に聞き返すヴァイスハイト


その問いに、少し驚きつつも

「あ、ああ、知っている……なかなか面白いパーティーだな、まあ俺としてはそのメンバーの中に居る、ルークとか言うガキと、アンドウとか言うレンジャーに興味があるけどな」

とブラッドが答えたその時


「ほー、それはそれは光栄ですねえ~」という返事が後ろの方から聞こえてきた、

ブラッドがその声に振り向くと

上下黒のスーツに革製の手提げカバンを持った男が笑顔でカウンターの近くに立っていた


「随分と速いなアンドウ、シグマの依頼の方はもういいのか? たしか今日は討伐クエストを受注していただろう? 」

冒険者ギルドに入ってくる新しい情報は「竜の遠吠え亭」に真っ先に入ってくる為、ヴァイスハイトも『独立愚連隊のシグマ』の動きを把握していた。


「ええ、その依頼の方は先ほど終わりましたので、ギルドへのご報告も済みましたから、ちょっと休憩にと思いまして」

とアンドウは頭を掻きながら説明する


「ヴァイス(ヴァイスハイトの愛称)、こいつがさっき言っていた『独立愚連隊のシグマ』のアンドウか? 」

ブラッドはアンドウの前に向きヴァイスハイトに問いかける


「ああ、アンドウ、こちらはデイ・クロニクル新聞社の社長のブラッドだ」

ヴァイスハイトはアンドウに表向きの紹介をする、が


「これはこれは…お会いできるとは光栄です、それで盗賊ギルドのギルドマスター自ら出向くという事はやはり今回の事件は難解、という事でしょうか? 」

とアンドウはカウンターに広げてあった新聞が落ちかけていたのを拾い上げると、記事の見出しを観て

「ふむ」と頷くと新聞を畳んでカウンターの上に置いた


ブラッドはアンドウの表情の変化に気づき

「アンドウ、実はアンタの所属している『シグマ』にこの件を依頼したいんだが」

「せっかくのお話ですが、お引き受け出来かねます」ブラッドが言い終える前に遮るようにアンドウは依頼を断る

「おいおい……即答かよ、理由は何だ」なおも食い下がるブラッドに

アンドウは「やれやれ」といった表情で

「第一にうちのパーティーには手に余る依頼である事、第二にメンバーの一人であるルーク君にはとてもお話しできない内容が多すぎる事、第三に主戦力であるボルグさんとマルクさんが全く役に立てない事、そして最後にこの依頼を失敗すれば今後冒険者として生活することが出来なくなるリスクがある事…ですかね、少なくとも最後のリスクだけでも保証して下さるのなら、こちらとしてもやぶさかではないのですが…」

と答えるアンドウ


「やぶ…なんだって?」

「やぶさかではない…否定的表現の否定、つまりは肯定です」

と答えるアンドウだが

「……すまん、異世界の表現にはいまだによく解らんところが多くてな、出来ればもう少し解りやすく頼む」

というブラッドに

「はあ、なんというか新聞社の社長とは思えない発言ですが…そうですね、解りやすく答えるならば

『最後のリスクさえ何とかしてくれたらやってみたいんだけど』という事ですかね」

とアンドウは言うと

「なら、最初からそういえよ」と突っ込むブラッド

「申し訳ありません、昔の癖でして…つい」

と言いながら頭を掻くアンドウ


その一連のやり取りをみてレベッカは

「…で? ブラッド、あんたはアンドウの言う冒険者を続けられる『保障』は出来るのかい? 」

という問いかけにブラッドは

「ああ、ウチの社が全面的にバックアップして保証してやるよ、それにもともとコッチの問題だしな」

「って言ってるけど? 」レベッカはアンドウに訊くと

「なるほど、それでしたらこの依頼ですが」

「うむ」

「…お断りいたします」

アンドウの答えにガクッとなるブラッド

「断るのかよ! じゃあ、さっきの保証云々の話はなんだったんだ! 」

とアンドウに詰め寄るブラッドに

「ああ、いえ、冒険者パーティーの『シグマ』としては引き受けないというだけでして……」

「ああ? どういうことだ? 」

少し気になる言い方だったので冷静になるブラッド、そしてアンドウはこう続けた

「ですので、私個人としてこの依頼を受けさせていただきます」

アンドウの答えを聞いて真意を理解したブラッド

「…世話になったパーティーに、迷惑はかけたくないって事か、今時珍しいなあんたは」

ブラッドのその言葉にアンドウは

「これも性分というものでして、今となっては変えようもありませんね」

アンドウのその言葉にブラッドは

「気に入った! いいねえ、そういうの! じゃあ景気づけに一杯驕らせてもらうぜ! 」

「え? いえいえお構いなく、飲む分は自分で……」とアンドウは丁重に断ろうとするが

「気にすんな! どのみち飲みにココによったんだろう? 」

「まあ、そうですけどね…ではご馳走になります」断り切れないと悟ったアンドウは折れた


「じゃあ話もまとまったところで、これうちの店で出してる契約書ね、二人ともこの欄にサインしといて」

とレベッカは二枚の羊皮紙を出してそれぞれに名前をサインさせるとそれを受け取り

「毎度あり~♪ じゃあこの依頼はウチの管轄で行うという事で、バックアップをさせてもらうよ」

と嬉しそうに『依頼契約書』を収納ポーチに入れる

「……相変わらず、抜け目ないなお前は」

と一連のやり取りを見て感心するヴァイスハイト

「冒険者ギルドの一員として当然の事をしただけさ、で、あたしはこの件に関しては『個人的』に関わるつもりだけどアンタはどうする? 」というレベッカの問いに

「奇遇だな、俺も『個人的に』この件は関わりたいと思っていたんだ」と返すヴァイスハイト

それを聞いてブラッドは

「そいつは有難い! かつての大戦のトップ二人が加わればこの件は大丈夫だな! 」と言い、追加で注文したエールを一気に飲み干した…そして一息ついてから


「それで、だ、アンドウにひとつ聞きたいことがある、この男に見覚えはないか? 」と真顔に戻り人相書きをアンドウに見せる、するとアンドウは

「それは容疑者の人相書きですか? ではチョット失礼して……」

と、しばらくその紙を眺めると何かを思い出したように

「ああ、これは…恐らくですが私と同じ異世界人ですね」とアンドウは答えるとレベッカとヴァイスハイト、そしてブラッドの三人は口をそろえてこう言った


「な、なんだってーーーー!? 」

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