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始終無シ  作者: 朝霧


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蒐集家、帰宅する

 深夜近くになって居候している屋敷に戻ってきた私を、当然誰も迎えなかった。

 そりゃあそうだ、遅くなるから寝てろって言ったので。

 メイドも執事も寝ているはずだ、帰りは深夜遅くになるって言ったらどっちも渋い顔をしていたことを思い出す。

 屋敷の中を音もなく進む、大量に被った血は最低限洗い流してきたが、まだなんとなく全身が血生臭いので風呂に入らせてもらおう。

 ついでに掃除も済ませておこうかと思ったけど、余計なことをするなと言われたらクッソ嫌な気分になるので、やめておくことにした。

 屋敷の中は真っ暗で灯り一つついていない、夜に明るい方が怖い奴がここの主人なのでそれでいいし、この程度の暗さなら普通に見える。

 この屋敷で居候していてよかったことはいくつかあるが、この暗さに順応して普通に行動できるようになったのもそのうちの一つだ。

 足音は潜めて滑るように廊下を歩く、亡霊でも出てきそうな不気味な雰囲気があるが、亡霊程度だったら小指だけでもぶっ飛ばせるだろう。

 出るとしたらどうせ主人の母親か父親だろう、戦闘能力は二人とも皆無だったらしいので二人同時に出たとしても瞬殺してくれよう。

 それにしても次はどういう武器を買おうか、そろそろ貯蓄も溜まってきたし、今使っている武器も飽きてきたし、そろそろ貯蓄を放出して新しいのをいっぱい仕入れたい。

 オーソドックスなのは扱えない魔杖型も含めて購入済み、ユニーク型はほぼ手付かずなのでその辺から攻めるか、あるいは最近開発された新武器を攻めるか。

 そういえばコンバートメイスの新型出たんだよな、持ってるのは槍になるタイプと鎌になるタイプだけど、今度のは至近距離から砲弾ぶっ放せるらしい、消費魔力えぐそうだけどめっちゃ楽しそう。

 あと装備型で面白いの出たんだよな、スフェンフライとかいう奴、蝶型でひらひら飛びながら自動追尾するやつ、ぶっちゃけネタだしノロマな奴がお守り程度につけるやつだろうけど、めっちゃ綺麗なんだよな。

 あとはそろそろフラワーラケットに手を出してみるか? あのクッソ使いにくそうな完璧ネタ武器にそろそろ走ってみちゃおうか?

 とはいえ流石に扱えないか、あれが扱えるようなのは多分イカれ向日葵くらいだろうし。

 重量級の銃器もあと何個か欲しいな、スカイロケットはめっちゃ疲れるけど、あのドッカーンで吹っ飛ばせるのはめちゃくちゃ楽しい。

 最近はブレーススパークラーばっかやってるけど、そろそろ飽きてきたしあれは射程がちょっと短い、おかげで今日も返り血まみれになったのでそろそろ持ち替えよう。

 いや楽しいんだけどさ、至近距離まで踏み込んで弾ぶち込むのめっちゃ楽しい、命のやり取りしてる感があってアドレナリンがいっぱい生成される。

 とはいえ返り血まみれになるのもそろそろ飽きてきた、やっぱりそろそろ短射程やめて中か長に持ち替えるか。

 けど長射程苦手なんだよな、当たらん。

 スネーク系列使える奴らマジなんなんだろうね、なんで当たんの?

 いくつか持ってるけど無理、スカイロケットは爆風があるからまだなんとかなるけど。

 うーん、色々買うのは確定だけど、今度は何を使うか。

 飽き性すぎるこの性分を治して何か一本に絞った方が効率いいのかもだけど、どうにもうまくいかない。

 飽き性すぎて最近変なあだ名ついたんだよな、フィクルアーマリーとかいうそこそこ不名誉な。

 まあ、イカれ向日葵とかよりはマシか。

 とか思っているうちに自室に到着、音もなくドアを開き、音もなく灯りをつける。

 家具なんてベッドくらいしかないのに壁全面に飾ってる武器のせいで随分と手狭になったように感じる。

 そろそろ武器専用の部屋を作れるくらい広い家に引っ越せるように本格的に金を集めた方がいいのかもしれない。

 とはいえ戯言だった、あの主人が生きている限り私はこの屋敷から出られないだろう。

 少々部屋が手狭になってきた以外に不満もないので、それでいいけど。

 クローゼットをこれまた音もなく開けて、着替えと風呂セットを取り出し、音もなく部屋から出る。

 灯りは消しておく、どうせ戻ってきたらベッドに潜り込むだけだ。

 音を立てないように廊下を歩いていたら、そんな気遣いを全部台無しにする、軽やかな足音が後ろから聞こえてきた。

「まだ起きてたのか。お部屋に戻りなお嬢さん。……私が後でメイドにドヤされるから」

 振り返らず、足も止めずにそれだけ言った、今日はこれで引き下がってくれるといいのだけど、きっと無駄だろう。

「いや」

 思っていた通りの我儘お嬢さんの回答にわざとらしく大きな溜息をつく。

「あとは風呂に入って寝るだけだ。お前のお喋りに付き合う時間は明日作るから、今日は勘弁してくれ」

「けち。というか言うことがあるのではないかしら?」

「…………ただいま帰りました」

「うん、おかえり。お怪我は?」

 気配だけで笑ったのがわかった、能天気なクソボケお嬢さんらしいさぞ間抜けな笑顔を浮かべているのだろう。

 見たら甘やかしそうだから、あえて振り返らずにそっけなく答える。

「ねぇよ。返り血浴びまくって臭いからあんま近寄んな」

「また無茶苦茶な戦い方をしたの?」

「別に、あの程度なら普通だし、もっともっとぶっ飛んでる奴いるし。ほら、帰った帰った。ガキは寝る時間だ」

「一つしか違わないのにガキ扱いしないでちょうだい」

 膨れっ面が容易に想像できる不満げな声だった。

「へぇへぇごめんなさい。美容に悪いからおとなしく朝までぐっすり寝てな」

「あなたにだけは言われたくないわ」

「私はいーんだよ。見た目に気を使うようなシゴトしてねーし。丈夫な手足が無事つながってりゃそれでいい」

「……せっかく可愛いのに」

「世辞はいらねえよ、かわいこちゃん」

 なんて言い合っているうちに風呂場に着いてしまった。

「そんじゃ、私は風呂入って寝るから。おやすみ」

 振り返らないまま手を振ったら、逆側の手を掴まれそうになった。

「臭いうつるから触んな」

「もうとっくよ。本当に血生臭いわねあなた。どれだけ血を浴びればそうなるのよ」

「服をほぼ毎回使い捨てる程度だよ。まあそろそろ武器変える予定だし、今後はもうちょいマシになる……いや、無理か。次はやっぱりあれ使いたいんだよな、コンバートの新型。至近距離から砲弾をドッカーンてできるらしくてな、めっちゃ血ぃ被りそう」

「なんで毎回そういうの使うの……?」

「クソエイムだからだな。なんだかんだ言って実は短射程大好き。難しいこと考えなくて済むし」

「短射程だからこそ色々考えて行動しなくてはいけないのではなくて?」

「『避けてあてる』ができればいいんだよ、短射程は。それができるように身体動けせば問題ない。まあ確かにどこどこに追い込んで一気に仕留めるとか、待ち伏せして急襲するとかそういう作戦立てる奴もいるけど、そんなこと考えなくても殴り込んで一方的にボコボコにすりゃあいいだけ。ほら、超単純」

「……それができる人は少ないのではなくて?」

「いや、全然」

 そう断言すると、何故か溜息が聞こえてきた。

 

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