新しい舞台へ
「お前は何者だ?」
突然現れた少女に警戒をする。
「そう構えなくてもいい。私はお前の敵ではない。」
そういいながら少女は地面に降り立つ。
「俺は今とても忙しい。急ぎの用件でなければまた今度にしてくれないか?」
ただでさえくそ面倒な状況なんだ。その上空に浮くようなわけのわからない女を相手になんかしていられない。いつもの俺であればシカトするんだが少女の言葉には俺の興味をそそるものがあった。
誰も俺の事を知らない世界だと?
この世界では明るい未来がほぼ絶望的な俺の人生。別の世界というものがあるのであれば是非とも行ってみたいものだ。
「何、そんなに時間はとらせない。私は、お前をスカウトしに来ただけさ。私達の学校、ジェンシャン学園に。」
「ジェンシャン学園だと?」
聞いたことのない名前だ。話の流れから察するにこことは別世界の学校だろう。
「そうだ。私達の国"ボタニィ"が誇る最高の魔法学園だ。」
「魔法学園だと?そんなものが存在するのか?」
「ああ。私達の世界はこの世界とは違い空気中に大量のマナ……魔法の源が存在する。そのため、多くの人びとが魔法を使うことができ、こちらとは違い科学ではなく魔法が発展したんだ。」
なるほど、俺のような奴が存在するんだ。魔法の盛んな世界があってもおかしくはない。
「お前の話は理解した。しかし、何故俺を?」
「さーな。上の決定だ。私も詳しいことは知らされていない。それでどうする?お前はこのスカウトを受けるのか?説明不足なのは理解しているが学園長からはここまで話せば十分だと言われている。」
確かに、現時点で俺のとる選択はすでに決まっている。別の世界がこの世界より絶望的な状況なんてことはないだろう。それに、魔法が存在するということは、
「ああ。そのスカウトを受けよう。ただ、一つお願いがある。俺の身体能力を一般人の平均のものにしてほしい。」
俺が普通になることもできるかもしれないということだ。いくら制御できているとはいえ一度でもミスればまた昔の生活を繰り返すことになる。夢を叶えるためにも一般人になることは必須条件だ。
「その程度であれば可能であろう。保証はできないが学園長に聞いてみる価値はあるだろう。」
よし!どうやら俺の未来は明るいらしい。
「しかし、変わっているな。せっかく誰も持っていないような力をわざわざ手放そうとするとは。」
少女は少し呆れた風に言う。
「今までこの力のせいでろくなことがなかったからな。俺の夢を叶えるにはこれは必須条件だ。」
「お前の気持ちはわかった。なら、さっそく行くとしようか。このままだと、蜂の巣にされてしまいそうだ。」
「え?」
どうやら話している間に囲まれてしまったらしい。数えきれないほどの銃口がこちらに向けられている。おいおい、ヘリまで来てるじゃないか。どんだけ俺のこと嫌いなんだよ。
「で、どうやって行くんだ?早くしないとまだまだ増えるぜ。」
「大丈夫だ。すぐにでも移動できる。」
そういうと少女は手を前にかざす。すると目の前に少女と同じ高さの楕円形の穴ができる。
「さあ、行くわよ。すぐに閉じてしまうから。」
そう言うと少女は穴のなかに入っていった。俺もそれに続く。
新しい世界。そこはこことは違い魔法の発展した世界。きっと今までの常識が根本から覆されるような体験をすることになるだろう。
しかし、俺は決めた。今度こそ自由に生きていくと。今までみたいに自分を抑えずに生きていくと。
俺は、新しい人生を歩き始めた。