ーー8話【おっさん】ーー
「らっしゃーせー、今朝取れたピッチピチの魚介系魔物あるよー、買わなきゃそんだぜ、そこのあんちゃん」
右の頬に何かで引っ掻いたような傷のある魚屋のおっさんがマカロフの方を見て言った。
「魚介系魔物かぁ、俺は嫌いじゃないな、ネビア、お前はどうだ?」
サリーとの事があってからネビアはマカロフの服の中に入るのが気に入っていた。
「しゃかな!? 食べる! 食べたいのみゃ!」
(急に元気になったな、よっぽど魚が好きなのか?)
「おっさん、どれがいま一番美味い?」
あんまり魚には詳しくないので魚屋にオススメを聞いてみた。
「んー、今の時期だとブリーが旨いぞ」
オススメされたブリーを見ると結構デカイ。
ネビアがどれだけ食べられるかわからなかったけど残ってしまうよりかは少ないほうがまだマシだ。
「んじゃこれ一匹と、そこのアジーってやつ? 二匹くれ」
「へい、毎度!」
三匹でなんと9ゴールドだった。かなり安い。
さてと、魚を買ってしまった。
ここで問題だ。
さて、マカロフ達はこの魚をどうするでしょう。
1.焼いて食べる
2.刺し身で食べる
3.捨てる
さぁどれだろう。
どうしよう。1と2をするには何も無い。3は論外。
さぁどうする。
魚屋の前で迷っていたマカロフを見ていて事情を察してくれたのか魚屋のおっさんが
「おう、あんちゃん、食材持ち込み出来るレストランに行けば食えるぜ!」
(さすが王都、何でもあるんだな。それにこの魚屋もなかなか手馴れている。こういう客も少なくは無いんだろう。そうであってほしい)
「おっさんあんがと! また今度なんか買いに来るよ!」
「いい品揃えで待ってるぜ!」
(ネビアよ寝てるのはいいけど一緒に食材持ち込み出来るレストランを探してはくれないだろうか)
そんなことを考えてもネビアの位置だと周りの人の頭が邪魔でよく見えないだろうから今は寝かしておいてあげよう。
「これはあれだな、必殺技使うか......」
必ず殺すと書いて必殺だ。さぞ恐ろしい技なんだろう。
「あの、すいません。食材持ち込み出来るレストランってどこにあるか知りません?」
必殺とは一体何だったんだろうか......
優しそうな若い女性は大体こういう場合は親切だ。
(俺は知ってる。何故かって? それは知らない)
「そこを右に曲がったところ......はい! ありがとうございます!」
チョロいもんだ。
マカロフの必殺技により、店の位置を特定できた。後は入るだけなんだがそこでまた一つ問題が生じた。
「猫ってレストランいいの?」
そう、神の使いとはいえネビアは一応猫だ。食べ物を食べる場所で猫は連れて行ってもいいものかと店の前で悩んでいたら店の中から男の人が出て来て
「兄ちゃんそこで何してんだ? 入らねぇならどっかに行きな。」
厳つい顔をしているが今はビビってられない。
「ここって猫入れてもいいんすか?」
「は? 猫だぁ? んなもんダメに決まってるだろ」
(だよなぁ、参ったな......この様子だと猫が入れる飲食店は無さそうだぞ)
「だが、その、なんだ、暴れねぇなら......入れてもいいぞ」
(これはラッキー、このおっさん絶対猫好きだぞ! 俺にはわかるんだなぁ!)
「おっさん、猫抱く?」
「はあぁ? 制服に毛がついちまったらどうすんだよ............貸せ」
(絶対そうだぞ、このおっさんはかなり猫好きだ。しかも多分顔が厳ついから照れ臭くて普通に抱く事が出来ないのか......面白いぞこのおっさん)
「こいつネビアって言うんだ、毛並みもこもこふさふさだろ?」
「まぁ、ちゃんと手入れはしてるみたいだな......あぁ、いいな......」
そういえばネビアはなんで黙ってるんだろう? サリーに弄られてた時はみゃっはみゃっは言っていたのに今はなにも言ってない。
(おーい、ネビアー、どしたんー?)
「し......しぬ......みゃ..................」
(は? なにゆえ?)
「死ぬとかおま、神の使いだろ? 人間に触られただけで死ぬとか......笑ってもないし」
「............いた」
「なに?」
「......なかが空いた」
「ん? なんて?」
「お腹が空いたのみゃーーーーーーー!!!!!」
「う、うわぁ!? な、なんだよ兄ちゃん、急に叫ぶなよ。腹減ってたのか、なんか作ってやるよ」
「いや、俺じゃ......何でも無いです。あ、料理作るならこの魚使って下さい」
(焦ったぁ......急にネビアが叫ぶもんだから演技も下手だったんじゃねぇか?)
「おい、あんま人前で声出すなよ」
「だってぇ......マカロフが聞こえないって何度も言うからみゃーー」
(まぁ、それは悪かったけど、腹が減って死にかけるとかネビアもやっぱゴミ女神の使いなだけあるな。可愛いからゴミ女神の500乗はいいけど)
「出来たぞ兄ちゃん、ブリーの照り焼きとブリーの刺し身、アジーの刺し身盛りだ」
「なにこれうまそっ! いっただっきまーーす!!」
ブリーの照り焼きを一口。
甘辛い照り焼きがホロホロとした食感のブリーと良い感じにマッチしていてとても美味しい。
「おい、ネビアこれ旨いぞ」
そういってネビアにもブリーの照り焼きをあげるとネビアは嬉しそうに尻尾を振っていた。
(かわえぇ)
次はブリーの刺し身を食べるが、これもまたとても美味しかった。
これもネビアにあげるとまたまた喜んでいた。
そして最後にアジーの刺し身を食べる。
ブリーの刺し身よりも数段も甘く、噛めば噛むほど甘みがじんわりと出てきた。
これももちろんネビアにあげる。そしてもちろん喜ぶ。
(こいつは魚食べたがってたし腹ぺこだったんだもんな)
「おっさん、旨い飯、ありがとな! また来るよ。次はおっさんのオススメ食べにな」
魚は想像がつきやすいように最後を伸ばす感じにしました。
ブリー1匹5ゴールド
アジー1匹2ゴールド
選択肢の2.がアイシクルソードで出来そうですが刃が悪くなるなどの問題で無しにしました。