ーー6話【猫との出会い】ーー
「あれ? どっちから来たっけ?」
マカロフは絶賛迷い中だった。
スライムを探しに森の中へ入ったまではいいが、自分がどっちから来たのかをスライムと戯れている間に忘れてしまったのだ。
「だかしかぁーし! こんなところで終わる村人ではないわぁ! 太陽の向きと大体の時間を考えれ......ば......? あれ? 太陽ってあんなにも薄暗かった? あれ? あれあれ?」
マカロフはスライムと遊びすぎていた為かなりの時間を浪費していたのだ。
それなりに進んでいたものの、半日もかかる旅路だ、ただでさえギリギリだった時間をスライムで費やしてしまったのだ。
「大丈夫だろ、そ、そう! 痛みになれる練習だと思えばなんてこと無い......さ」
夜の森はとても静かで木々が揺れる音だけでもとても恐ろしく感じる。それにマカロフは、ゴースト系のモンスターは一番嫌いなのだ。だから痛み云々よりもとにかく怖い。ほんと。
「確か森で寝る時って地面に直で寝たら危ないんだっけ? でも、賢いモンスターは木の上でも登ってくるよな......」
恐怖からいつもの頭の回転のよさが失われて、ただ呆然としてしまう。
「......ャーーオ、......ャーーオ」
少し離れた場所から不気味な鳴き声が聞こえてきた。
マカロフは恐る恐る声の聞こえる方向へ方向転換をすると、そこには1匹の猫? がいた。
「え? 猫? ちっちゃいけど人型? でも、猫だよな? こんな魔物居たっけ?」
猫のような魔物がミャーーと鳴きながらマカロフの膝に頬を擦り寄せてきた。
(可愛い。これ魔物でもいい。可愛い)
マカロフは大の猫好きだった為魔物だろうがなんだろうが関係無かった。
「お腹空いてんのか? ほれ、パンだぞ。旨いぞー、俺の好きなパンだからなー」
普段とは少し声のトーンを変えて猫にパンを上げている姿はとてもシュールだった。
「こいつ俺のペットにしたいなぁ......どうしよう。」
マカロフがニヤニヤしながらあれこれと考えていると
「おみゃーさんとならみゃーもやってけそうみゃ」
(は? 幽霊? 出た? 怖い怖い怖い怖い)
「なにをおどおどとしとるみゃ、みゃーだよ、ほれ、下じゃ下を見るんみゃ」
(下? はて? 下には何があったか? 猫だよね? 猫しかいなかったよね?)
「猫しかいなかったよ。よかった」
「おー、やっとみゃーのことわかってくれたかみゃ」
「ポルターガイスト!!??」
猫しかいないはずなのに猫の近くから声が聞こえる。
いや、正しくは”猫から”だった
「え? 猫? 喋れんの? みゃーなの?」
「だーからさっきから言ってるみゃ。みゃーなのみゃ」
ポルターガイストではなく猫だった。
(やばい。これもう欲しい。喋れる猫とかヤバくない?)
「えっと、お前は......なに? やってけそうとか言ってたけどどゆこと?」
「おみゃーなんも聞いとらんのかみゃ? 女神の使いで来たんみゃよ。おみゃーさんが逃げ出したり変な事をしないようにするためみゃ」
(ナイス女神! 殴りたいとかもう言わない!!)
それにしても不思議だ、なぜ猫なんだろう。
それも微妙に猫っぽくないし。
「なぁ、お前は猫なの? もし猫ならなんで猫?」
「そりゃぁ、おみゃー、みゃーは猫に決まってるみゃ。なぜかと問われてもおみゃーさんが猫が好きだからみゃーがそうなってしまったってだけみゃ」
猫らしい。
(それに俺が好きだから? なら、俺がものすごいお姉さん好きだったらお姉さんだったのか?)
これはやらかした......
そう内心で己の失敗を悔やんでいると
「それで、おみゃーは何してるんだみゃ? こんなとこで」
そういえばマカロフは絶賛迷子中だった。
「あぁ、スライムと遊んでたら迷ったんだよ。今国道に出ようと頑張ってたとこだ」
猫は堪え切れないといった様子で
「すwwwらwwwいwwwむwwwとwwwあwwwそwwwんwwwでwwwたwww??? wwwみゃーーーハッハッハッハwwやばいみゃ、死にそうみゃwwww助けてみゃwww」
(......笑いすぎだろ。この猫......笑い悶えてるとこ可愛すぎ。まじ天使)
流石の猫も笑いすぎを自覚したのか、「みゃみゃっ」と咳払いをして
「笑いすぎたみゃ、許して欲しいみゃ、これからは、おみゃーさんがみゃーの主様みゃ、こんなみゃーでも傍に置いてもらえると嬉しいみゃ」
(主様......いい響だ。毎日こいつのお腹の毛をもふもふ出来るのか......)
またもニヤニヤしていると
「主様、主様のなみゃーを教えて欲しいみゃ。主様って呼ぶのもいいのみゃけど、やっぱりこれから長い付き合いになるんだかみゃ名前で呼びたいみゃ」
(何この猫。最高水準超えた可愛さ)
それにしても長い付き合いになる......か。
確かにマカロフはもう不死になってるから核が壊れない限り生きてられるから長生きどころか下手すれば永遠に死ぬことが無くなるという事だ。
この猫も女神の使いだから寿命とかはないんだろう。
「俺の名前はシューディー・マカロフ。マカロフって呼んでくれ。んで、俺の名前を教えたんだからお前の名前も教えてくれ」
「みゃーはみゃー。なみゃーなんかみゃーにはないみゃ」
猫は、静かに、悲しそうに答えた。
「んなら、俺がお前に名前を与えてやろう! 喜べよ!? お前の名前はだな、【ネビア】だ」
「ネビア......みゃ? ネビア......うん、いいなみゃーだみゃ!」
気に入ってもらえてよかった。
(なんでネビアかって? 咄嗟に思いついたからだ! こういうのはその場の勢いが大事なんだよ!!)
「よーし、ネビア、これから国道に出るけど道分かるか?」
「もちろんみゃ! みゃーを誰だと思ってるみゃ? 【ネビア】だみゃ!!」
(ふふっ、ほんとにこいつは可愛い奴だ)
マカロフはネビアと国道に向かって進んでいった。




