ーー7話【鍛冶師との邂逅?】ーー
次の日になるとだいぶ気持ちも落ち着き、いつものマカロフになっていた。
いつまでも過去の事を引きずっているよりも、これから起きることからみんなを守ることのほうが大事。それで許される訳ではなくても幾らか気が楽になるだろう。そんな風に考えるようにしたのだ。
そして、みんなを守るためにも新しい武器を手に入れなければならない。
マカロフは武器を新調するに当たって、武器の種類を少し変えてみようと思っていた。前までは両刃の長剣だったが、マカロフは戦闘時にほとんど片刃しか使っていないというのを前々から知っていた。だったら片刃にして前より薄くすることで切れ味を増し、重量を減らす事で取り回しを良くしようと考えていた。
切れ味の問題は、素材にする鉱石や剣を打ってくれる鍛冶師の力量次第になるので以前と比べて少し落ちてしまうだろう。だが、それでも問題無い。剣が軽くなり取り回しが良くなればそれだけ動きも良くなる。
「そろそろ動くか」
ベッドの上に腰掛けていたマカロフはもそもそと着替えを始めた。
「おーい、起きてるかー? そろそろ朝食の時間らしいから起きてなかったら急いで起きろー」
マカロフが着替えていると外からメイザーが声をかけてきた。マカロフ達は宿屋で眠っていた。この宿屋、【岳父の小屋】というのだが、ここでは食事の時間が決まっており、その時間に食堂へと行けばタダで食事が支給されるのだ。
「今行くよー」
着替え終わったマカロフは食堂へと向かった。
食堂はお世辞にも広いとは言えないがこの手狭さがいい雰囲気を醸し出している。まるで酒場のような感じだ。
座って暫く待っていると料理が出された。どれも普通だったがマカロフの心は休まった気がした。
料理を食べ終え、お茶を啜っているとビビアンがマカロフの方を向き話し掛ける。
「そう言えばですね、目当ての鉱石なんですが特殊な鉱石らしく魔力を込めると様々な効果が現れる鉱石があるそうなんですよ! それってかなりマカロフ様に合いません!? 硬度もかなりな物らしく、剣を鋳造するにはうってつけな鉱石だと思うんですの!」
「ふんふん......入手難度が高いって奴だなそれ」
それ程までに優れた鉱石だ。入手するのにかなりな労力が必要になるかもしくは出回り過ぎてそもそもの在庫が無くなっているか。どちらにせよ楽には手に入らないのだろうなとマカロフが恐る恐る聞いてみる。
「ま、まぁそうですわね......でも、私達なら余裕ですわよ! マカロフ様も剣が無くとも魔法がありますし」
「言われりゃそうだな。その場所まで大体どのくらいかかりそうなんだ?」
「馬車で5日ほどでしたかと」
馬車で5日なら旅の中では短い方だ。マカロフは一切の迷いもなく出発を決定した。
鉱石は見つけた。後はそれを最高級の剣に仕立て上げてくれる鍛冶師だ。そうマカロフが考えていると今度はメイザーが
「俺の方で一番腕の立つ鍛冶職人を探してきたぞ。けどな、こいつがまた一癖も二癖もあるやつでなぁ......『剣の持ち主の顔を見て判断する』とかって言って首を縦に振ってくれなかったんだ。まあそれはマカロフが行けば済むと思うがこの手のやつは他にもなんか言ってくるぞきっと」
「まあそれもなんとかするさ。最悪力づくで協力させるよ」
冗談とは思えないような声色でマカロフはそう言った。
実際にマカロフも冗談では言っていなかったのだが、そんな発言が飛んで来ようなどと思いもしていなかったビビアン達は驚きを隠せなかった。
「先に鍛冶師の方に行くか」
マカロフはビビアン達の反応を特に気にしない様子でスタスタと宿を出て行った。
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【ウェスタリア】。それは6つの国の中でもずば抜けて鍛冶を主とした技術に秀でている。それも、大きな山や洞窟、それに牧草地帯もあるので牛などを育てて革を生産することも出来ている。なので、この国は6国の中で一番の富裕国だ。
マカロフ達は今草原をゆらゆらと馬車に揺られて進んでいた。
風や風に揺られてざわめく草花が心地良かった。これはマカロフが夢で見た光景にどこか近しいものだった。
あの夢がどんな意味を持ち、どんな影響が及ぼされるのかは分からないが。
「確かもう少し行ったところに鍛冶師のおじ様が住んでらっしゃるお家があるはずですわ」
少し離れた先にこじんまりとした一軒家がぽつりと建っていた。
そこは街の外で門番も居ない。魔物や盗賊などに襲われないのかと心配になるが、しっかりと生きて仕事をしているのだから何か対策はしているのだろう。
そうして、少しゆらゆらと揺られていると、その家の前に着いた。
遠巻きから見た時より少し大きくて1人暮らし用と言うより、2人暮らし用に思えた。
マカロフは木製の簡素な扉を軽くノックし、自分が依頼したマカロフだと告げる。
中から返事は無く、マカロフは不在なのかと首を傾げる。
「居ないのかな?」
「ですかね。では外で待っていますか」
ビビアンが扉の横に座ろうとしたその時、中からドテドテッと何かが走ってくる音がしたと思うと扉が勢い良く開け放たれた。
「んーーぱぁーー!! おにーさんおにーさん、どぞどぞ中入って入ってー! リリと遊ぼ!」
扉を開いて出て来たのはクリーム色の髪をした小さな女の子だった。
その女の子は、マカロフを見るなり『遊ぼ!』と言ったのだ。
まさかこの子が1番の鍛冶師なのだろうか。




