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冒険の始まりは1輪の花??  作者: Gamu
第三章【傲慢】
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ーー4話【海の魔物】ーー

3章冒頭に繋がります!

 船上事件の後、マカロフ達は魔法の練習や、筋トレなど各々で出来ることを探して自己強化に努めていた。

 そうして船旅が始まって5日が経った。

 いつものように魔法を使って習熟度を上げていた。


「んん......そろそろ休憩するか......」


 マカロフがベッドに腰掛けようとした時、船が大きく揺れた。

 何事かとマカロフは急いで部屋を出て、甲板に出る。

 ネビア達も同じく異変を感じた様で甲板に出ていた。

 船が揺れた原因を探るべく辺りを見回そうとするがその必要は無かった。


「......何あれ。デカ過ぎね?」


 マカロフの見据える先には巨大な、それはそれは巨大なイカ。クラーケンが居た。

 クラーケンがどれほど強いのかは知らないがマカロフは負ける気はしなかった。


「まずい、まずいのみゃ! 如何にみゃー達でも分が悪いみゃ!」


「どうしてだよ、一発でっかいの撃てばなんとかなるだろ!」


「いいえ、マカロフ様。クラーケンはほぼすべての魔法を受け付けない上に斬撃への耐性もかなり高いんですの。マカロフ様の剣でなら斬れるかもしれませんが、そもそも近づく事が不可能に近いんですわ」


 それを聞いてマカロフは舌打ちをする。

 それではどうやってもやつを倒すことは出来ない。

 このままでは船が大破するのは時間の問題だ。


「俺がなんとかしてやるから、その間に船を全速力で近くの陸地目指して動かしてくれ」


「なにを言って......お前、嬢ちゃんの話聞いてなかったのか? お前の得意な魔法も、その剣の間合いまでも近づけないんだぞ!? あの触手を掻い潜って本体に攻撃、しかも相手は水上に居る。水中には他の魔物もうじゃうじゃと居るのにどうやって近づこうってんだよ」


 マカロフはメイザーの言っていることがわかっていないわけではない。むしろよく理解してその上での提案だ。


「じゃあ何か? このまま船諸共俺達だけでなく、一般の乗員乗客までもが巻き添えになるのをわかってて指咥えてただ何もせずに見てろって? そんなこと出来るわけ無いだろう! 俺に出来ることがあるなら、いや、例え無くても何かをやらずして世界を救うなんて言えるかよ!」


 マカロフはそう言うとクラーケンとは逆側に向かって走り出し、くるりと向き直ると全速力で走り、甲板を勢い良く蹴り飛ばすとクラーケンに向かって跳躍。

 飛距離は足りないが[風]で背中を押し、水面に着きそうになるもこれまた[風]で水上に浮かぶ。

 マカロフはちらりと船の方を見るが、メイザー達はしっかりとマカロフの言ったことをやってくれていたようだった。それにマカロフは一安心。

 これからのマカロフの大まかな役割は”囮”。

 船がクラーケンから距離を取るまでの時間を稼いで、あわよくば倒す。しかし、マカロフは正直勝てるとは思っていない。

 足場が不安定な上に手数の圧倒的な差。これで勝てるなどと思えるほどマカロフは楽観主義ではない。


「時間稼いだ後どうするつもりなんだろーな、俺」


 マカロフは自分の浅慮な考えに辟易とするも、もうやるしかない。

 マカロフは覚悟を決めて、クラーケンの懐に潜り込まんとする。

 それをクラーケンは何本もの触手で迎撃しようとするが、そんなものはマカロフも読めていた。

 1本目の触手を綺麗に斬り、2本目3本目は辛うじて躱すも4本目を横っ腹に喰らう。攻撃を喰らう寸前に[風]で空気抵抗を掛けて威力を殺すがマカロフはかなりのダメージを負う。


「くっ......これでいい、このままやってればなんとか......ハッ!?」


 マカロフは船がどれだけ進んだものかと振り返る。

 が、船はほとんど動いていなかった。


「なんで、なんであいつら言う事聞いてないんだよぉ!!」


 そのマカロフの叫びが届いたのか、メイザーが船から身を乗り出してこちらに叫ぶ。


「お前を置いていけるかよ! 待ってろ、こっち側でやれることはやるからよ!」


 メイザー達の気持ちは嬉しかった、だがそんな優しさを向けられた所で状態は悪化していく一方。

 ここは、不死の力を持つマカロフがなんとか時間を稼ぐのが一番。それ以外に方法は無いとマカロフは思っていた。

 だからこう返す。


「うるせぇんだよ! お前らに何が出来る? 変にそこに留まって、船を壊されて他の客たちが海に落ちたらお前らは守り切れるのか!? 無理だろうが! だから俺がなんとかするからとっととどっかに失せろ!」


 後半はやや掠れ気味になってしまうが、それでもメイザー達には充分に伝わったようで、渋りながらも船内に戻っていく姿が見え、やがて静かに船は動き出した。

 それを見届けるとマカロフは、空気を読んでいたのか仕掛けてこないでいてくれたクラーケンに向き直る。


「よぉ、第2ラウンドと行こうか!」


 マカロフはひたすら思考を巡らせる。

 今のこの状況を打破するには何をすればいいか。

 もう勝てないなどと思わずに勝つことを前提として戦う。

 魔法が効かないなら剣で。

 剣で斬るために近づくのが難しいなら魔法で。

 だが、それでは永遠に答えは出ないまま。

 では、どうする?


「うわっ」


 流石に答えが出るまで待ち続けてくれるほどお人好しではないらしく、クラーケンはマカロフを狙って触手攻撃を仕掛けてきた。


「......ん? そうか、そうだよ! アホだ俺、視野が狭くなってたな」


 マカロフは深く息を吐いてクラーケンを見据える。

 1本、2本、3本......9本。

 クラーケンの触手は最初に遭遇した時、10本だった。

 しかし今ある触手の数は9本。

 マカロフは先程1本を自衛の時に斬っていたのを思い出した。


「ハハ、ほんの数分前の事なのに忘れてたとはな......。あいつらを追い返したのが結構衝撃だったのかね。とっとと倒して船に戻んなきゃだな。早いとこケリつけないと......まずいしな」


 マカロフは水面を蹴り、クラーケンの背後にまわるように走る。

 実際に背後にまわれなくてもいい。狙うは相手の攻撃を連発させないこと。

 正面ならいざ知らず、側面や背面に触手を1度に何本も集めるのは無理なはず。

 狙い通り攻撃に来たのは3本。

 1本目は確実に斬り、2本目は避ける時になんとか斬る。3本目も斬りたかったが体勢が不安定だったので自分を[風]で突き飛ばして避ける。


「あと7本。ちと厳しいかな」


 ここからはなりふり構っていられない。

 マカロフは無我夢中でクラーケンへ近づいていく。

 勿論クラーケンも攻撃をしてくるがそれをマカロフはことごとく叩き斬っていく。

 鬼の形相でマカロフは叫びながら5本、6本と斬っていく。

 残り1本。迫りくる触手を迎え撃とうと剣を振りかぶるが、何かがヘンだった。

 右足が底無し沼にハマったかのように沈む。そう思ったかと思えば左足も同様に沈む。それだけではなく、体中の力が抜ける。


(アレ......? 俺、今一体どうなって――)


「――ガハッ」


 両足が沈んだかと思えば今度は体が宙を舞っていた。

 マカロフは、朦朧とする意識の中何が起きているのか確認しようと薄めを開ける。


(触手攻撃をまた喰らったのか。でも、痛みが感じられねぇな......。あれ? 体が動かねぇ)


 マカロフの体から力が抜け、意識が朦朧としているその理由。

 それは魔力の枯渇だった。

 水面に立つために常時[風]を発動していた上にさっきまでは魔法の練習をしていたから魔力が無くなるのも致し方ない。

 あと1本、たったの1本を斬り落とし、船に戻るだけで終わったのにこんなタイミングで魔力切れが起きるなんて、マカロフはつくづく自分の不運を恨んだ。


 マカロフは生まれて初めての『死』の恐怖を感じていた。

 不死の力を得てからと言うものの、幾度と強敵とは戦ってきたが、今回はマカロフも『死』を覚悟せざるを得なかった。

 マカロフは朦朧とする意識の中、最後に自分に迫る触手を見た。

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