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冒険の始まりは1輪の花??  作者: Gamu
第三章【傲慢】
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ーー1話【マカロフの危機】ーー

 マカロフは生まれてきて初めての『死』の恐怖を感じていた。

 マカロフには不死の力があるから簡単には死なない筈。それがわかっていても、マカロフに『死』を感じさせるほどの強大なものが迫っていた。













 時は何日か遡り、ノスタリア港


「ひぃやあ、この寒いとこからおさらばして次はあっついとこなんだろー? お腹壊しそうだな」


「何言ってんみゃ、それを言うなら逆みゃよ」


 マカロフは「そうかそうか」と陽気に答え、もう数分で着くであろう船を待っていた。


「なあ。次の船旅ってここに来た時よりも長いんだろ? 何して時間潰せばいいんだ?」


「ここに来るときは作戦会議やら魔法の修行やらしてましたが、次は”勉強”って言うのはどうです?」


 マカロフは露骨に嫌な顔をして、何かないかと忙しなく考えていた。

 そんなマカロフたちを見てメイザーは


「そうか、お前らは船での長旅はしたことないのか」


「したくもないみゃよ......。あんな地獄を見るなら海に身投げしたほうがマシみゃ!」


 行きの船でのネビアに怒った事を一切知らないメイザーは「なんのことやら」と言った顔でネビアの頭を撫でながら言う


「そういうな。船に乗るとだいたい可愛い子が居るからな。なんなら俺と一緒にプチ冒険するか?」


「ふ、ふん! みゃーはそういうの気にならないのみゃ!」


 ネビアはそんなことを言いながらもメイザーの方をチラチラ見ている。

 それに気づいたメイザーは何も言わずに目だけで「わかってる」と言っているようだ。


「はあ。ネビアちゃんもそんな年頃なんですわね......」


 話を中途半端に聞いてたマカロフが横から


「お! プチ冒険だって? 行くしかないな! ビビアンも行くよな!?」


「行きませんわよ! あ、でも、どうしてもマカロフ様がついて来いというなら――」


「――いや、無理はしなくていいぞ。俺は無理強いとかは好きじゃないからな。やりたいことがあるなら俺らに構わずやってていいぞ」


 ビビアンの提案を素なのか狙ってやっているのかわからないが、マカロフは綺麗に躱した。

 そのことにビビアンは歯噛みをするがここで引くビビアンではない。


「いえ! やはりやることも無いので付いていきますわ!」


「お、おう。そうか。ならみんなでプチ冒険だな!」


 そんなことを話していたら船が目に見えるところまで来ていた。


「おぉーキタキター」


「来ちゃったのみゃ......」


「ふふ、マカロフ様との船上デート......。ふふ」


「へっへー。この船にはどんな子がいるかなぁ」


 それぞれの感想を抱きながら、我先にと船に乗り込んでいった。(ネビアはマカロフに抱え込まれながら乗り込んだ)


 __________________________________


「当然だけど行きの時と内装変わってねぇなぁ」


「うっぷ......なんでみゃ......まだ動いてないのに......吐き気が......」


「あわわ、ほら、ネビアちゃん、深呼吸して。[水]魔法かけてあげますからね」


「これは......予想異常な船酔いっぷりだな」


 内装が変わってないためなのかネビアは、まだ出発もしていないのに吐き気を催していた。

 その事にマカロフは大爆笑をしていたが、他の3人からすると笑えない。


「あっはっはっは! まだ動いてないぞ? 流石だなネビア」


「なんでこいつは酔ってんだよ......そもそもこんな大型船で酔うものか?」


「なんだかネビアちゃんは特別みたいで、乗り物酔いがひどいそうですね。恐らく馬車とかに乗ってもこんな感じかと......」


「馬車......うっぷ。そんなもの考えたくもないみゃ......」


 ネビア以外の3人は、極力乗り物には乗らないように心のメモに深く刻んだ。

 しかし、大陸間を移動するには船しか手段が無いためあれこれ言ってはいられない。ネビアには悪いがなんとか闘ってもらうしかない。


「お前のことは忘れないぜ......」


 マカロフはそう言って船内を探検することにした。


「じゃ、俺はぶらぶら見て回ってるから夕飯時になったら食堂集合な!」


 マカロフとメイザーは船内探索。ネビアとビビアンは船酔い治療でそれぞれ一旦別れた。


「マカロフ、バーに行かねぇか?」


「いや、まだ昼だぞ? つか飲めねぇし」


 メイザーの考えていることはなんとなくマカロフも分かってはいるが、それには触れずに他の理由で躱す。


「んだよ、ミルクでも飲んでりゃいいだろ?」


「やだよ子供じゃあるまいし......。てか、そんな行きてぇなら1人で行けばいいだろ?」


「ほーん。良いんだな? ほんとにそれでいいんだな? もしかしたらお前もついてけばいい出会いがあるかもしれねぇぞ?」


 マカロフは思わずゴクリと唾を飲む。

 自分はそんなことをしている暇はない。

 そんな時間があれば魔法の練習をしている方がよっぽど効率がいい。

 マカロフは理性では分かってはいるが、どうしても興味がそそられてしまう。


「わかった。俺はメイが変な事をしないように監視でついていく。あくまで監視だからな!?」


「へいへい」


 メイザーはにやけた顔でマカロフのいい訳を受け流している。

 マカロフはそれが分かってつい眉間にシワを寄せてしまうが、メイザーは自分で遊んでるのだと思い、普段のように取り繕う。


「じゃいくぞ」


「1番期待してんじゃん」


 船内に取り付けられたバーは雰囲気がとても良く、夕方にもなると地平線の彼方に沈む夕陽を眺めながら酒を窘めるという、少し贅沢なものとなっていた。

 しかし、その場に似合わぬ者が2人。何事かソワソワとしながらメニューを見ていた。


「なあなあ。女の子まだかな」


「もう少しでくるんじゃねえか?」


 店内の店員は1人しか居なく、それも男性だった。

 今は休憩中とかで居ないのだろうと推察したマカロフとメイザーはまだかまだかと待っていた。


「ご注文はいかがしますか?」


 すると不意にカウンター越しに、男性から声をかけられる、2人は背筋をピクッ、とさせてしまう。

 その仕草を怪訝に思った男性は


「では、お決まりになりましたらお呼びください」


 と言って、グラス磨きを始めてしまった。


「お、おいメイ。ここでミルクは頼みたくないんだが、俺でも飲める奴ってあるのか?」


「まあ、あるかもしれんけど俺もそこまで詳しくねぇしよ......」


 2人はカウンター越しの男性に会話聞かれぬように、声を潜めて話していた。

 マカロフは勿論のことメイザーもなにがどのようなものかは把握しておらず、どれを頼むべきか決めあぐねていた。


「メイ、このピーチソーダってやつなら大丈夫そうじゃねえか?」


「そ、そうだな。なら俺はこのカシスオレンジってやつにしようかな」


 2人は顔を見合わせ頷くと、「すいません」と控えめに呼ぶ。

 それでも距離が距離なので男性にはしっかりと聞こえたようで「ご注文はお決まりですか?」と訊いてきた。


「このピーチソーダってやつください」


「俺はカシスオレンジください」


 2人がやりきったという顔で注文を終えるが、男性の動く気配がない。

 どうしたのだろうかと思って2人が揃ってみると、困ったような顔をしていた。

 やがて、決心がついたように男性は口を開く。


「すいませんお客様。ピーチソーダというのはピーチリキュールとソーダ水で作るカクテルでして......」


 目線的にはマカロフに言っているのだろうが、リキュールとかカクテルとか言われてもさっぱりわからない。


「それで、なにか問題が?」


「あ、いえ。私の思い違いだったようですね」


 結局なんだったのかはわからなかったがまあいい。

 これでバーに来る女の子の監視......ではなく、女の子を狙うメイザーの監視ができると、マカロフはワクワクしていた。

 正直飲み物はなんでもよかったのだ。酒でなければ、と先に付くが。


「にしても来ねぇな......」


 メイザーがそうひとりごちる。

 それにマカロフも同意だと頷く。

 店員どころか他の客も居ないので独り占めができる。正しくは二人占めだろうか。できるのだが。

 ため息をつきながら机に向き直ると、丁度飲み物が出来たようで、グラスがコンと置かれた。


「じゃあま、とりあえず飲むか」


「そうだな。飲みながら待とう」


「「乾杯」」


 マカロフもメイザーも長期戦になると厄介なのでチビチビと飲む作戦に出た。

 マカロフのピーチソーダは、ほんのりとピーチの香りがし、ソーダ特有の口の中でパチパチと弾けるような感じがした。しかしそれと同時にピーチソーダが喉を通るとき、微かだが喉焼けるような感じがしたような気もするがマカロフは気にせずチビチビと飲む。


「これアルコール入ってるわ」


 マカロフの隣のメイザーがチビチビと飲んでいたらそれにはアルコールが入っていることに気がついた。

 だが、メイザーはアルコールに弱いわけでもなければ未成年でも無いため何にも問題はない。

 しかしここでメイザーは1つの可能性に気付いた。

 メイザーの頼んだカシスオレンジは名前にオレンジと入っているからジュースなのかと思ったが、その実アルコールが入っていた。

 ではマカロフの頼んだピーチソーダはどうだろうか?

 確かバーテンダーである男性がピーチリキュールと言っていたような......

 しかしメイザーがその考えに至った時はもう遅かった。

 マカロフは、ほとんど減っていないのにも関わらず顔を紅潮させ、少しフラフラしていたのだ。


「酔うのはえぇなお前も! ベクトル違うけども!」


「ふぇ? なぁんにおどろぉいてんだあよ」


 マカロフはほとんど完璧に酔っていた。

 マカロフはまだ未成年だからアルコールに弱かったのかもしれない。

 それにしてもこの反応は異常だ。問題が起きる前にこの店を出るべきだと考えたメイザーは急いで会計を済ませ、マカロフを抱えてビビアンの部屋へと走った。


「嬢ちゃん、いるか!?」


「キャッ!!?? な、なんですか......メイザーさん」


 メイザーは、マカロフが、間違えて酒を飲んでしまった事を説明する。


「はあ......わかりましたわ。治せますし治しますから」


 メイザーは大きく息を吐き、「よかったぁ」と椅子に腰を下ろす。

 その行動を不思議に思ったビビアンは


「何をしてるんです? ネビアちゃんは兎も角メイザーさんは外で待っていてください。マカロフ様を独り占めできる機会なんてそうそうありませんので」


「お、おう。相手はほぼ意識がないから程々にな」


 そう言ってメイザーは外に出ようとしたが、1つ言い忘れていた事があったのでビビアンに伝える。


「マカロフな。無理矢理とかは嫌いだそうだからやめとけ。それとネビア、お前さんも邪魔になっちまうから出てくぞ」


 それだけ伝えてメイザーとネビアは、ビビアンの部屋から出て行った。


「そ、そんな......。こんな状況で2人きりになったところで生殺しじゃないですのぉぉぉ!!!」


 マカロフ達の船旅は良くも悪くも、まだ続く。

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