ーー8話【許されないこと】ーー
なんと30話目です!
翌日、マカロフ達は朝早くから集まっていた。
「早速だけど始めるか。王に報告しなきゃだしな」
「ですね、お互い積もる話もあるようですしね」
マカロフは王にはまだ何も報告をしていなかった。というか帰ったことも報告していない。
ビビアンと話をしながら何処までが信じてもらえるか、何処まで話して良いものか。
まずそれらを確認せねばならない。
ビビアンの事は信用してもいいだろう。マカロフに好意を寄せてる事もあるが、人としてもしっかりとしており、こういった大事な事を口外することはないだろうからな。
「んじゃまずは俺からいいか?」
マカロフはビビアンには全て話した。
魔物達が魔法を使うこと。
ブラッディ・スカルナイトという軽く伝説級の魔物までも従えられていたこと。
フード男とマカロフがどこかで会っており、同じく女神に、花に選ばれたものだったこと。
などなど......
「なるほど......本当色々とあったんですわね。それに、マカロフ様と会ったことがあるとは、一体どなたなのでしょうね?」
そこがマカロフが最も悩んでいるところだ。
マカロフを一方的に知っているような口振りではなく、お互いに面識がある。
そんな印象を受けていたのだ。
「では、次は私の調べたことですわね。私はフード男の素性について調べていましたわ。マカロフ様が出発する前の作戦会議は覚えてますか? あそこで私達は相手は[闇]魔法使いだと断定しました。その予想は実際あっていましたし、私もあの時点でほぼ間違いない。そうおもってこの国の王に[闇]魔法使いで誰か思い当たる人間はいないか、と聞きましたわ」
ビビアンもビビアンなりに頑張ってくれてたのか、と思いつつ先を促す。
「何人か名前は挙がったのですが、その中の1人は、この国だけでなく6国全てで名が知られている魔法使いでした」
「誰なんだ? そいつは」
マカロフが食い気味に聞く。
「その方の名は『シューディー・コルド』マカロフ様のお父上ですわ」
「親父が......いや、その可能性も考えたがそれは無いだろう。親父は死んだんだ。確かに、確かに母ちゃんはそう言った。だから生きてるわけ無いんだよ......」
マカロフは決して認めたくなかった。
マカロフの父が悪事を働くなど。
母の愛した父がそんな悪いことなどするはずがない。そう思いたかったのだ。
だが、現実は決してそんなに甘くなかった。
「そうみゃ、シューディー・コルドはマカロフと同じく女神様に選ばれた人間みゃ。間違いないのみゃ」
「じゃあなんで生きてんだよ!? なんで親父は不死の力が消えてるのに、なんであんなふうに生きてんだよ!!」
「そんなの、そんなのみゃーもわからないみゃ!! みゃーだって当時はコルドに良くしてもらっていたのみゃ。けど、ある日突然人が変わったかのように不死の力で悪事を働くようになったのみゃ。みゃーは止めたみゃ『これ以上やると不死の力が消えてしまう。そうしたら今までの反動で死んでしまう』そう言ったのにコルドは悪事をやめなかったみゃ。みゃーは仕方なかったけど女神様に言って不死の力を消してもらったみゃ。それで、みゃーのまえで死んだはずだったのみゃ。それなのになんで生きてるのみゃ!? みゃーがどれだけの思いで女神様に不死の力を失くしてもらうよう頼んだか、みゃーがどれだけ悩んだのか、聞きたいのはみゃーのほうなのみゃ!!!」
ネビアは目に涙を浮かべて嘆いている。
ネビアがどれだけ苦しい思いをしたのかは痛いほどわかる。マカロフがわかったつもりでいる以上に辛かっただろうこともわかっていた。
だから、何も声をかけられなかった。
「...........」
部屋の中にはネビアの嗚咽が響くだけでマカロフもビビアンも何も言えずにいた。
それから何分経っただろうか。
ネビアが泣き止み、咳払いをすると
「取り乱して済まなかったみゃ。奴がコルドであることは間違いないみゃ。声や魔法の使い方、仕草に匂い。全てが一致していたみゃ。なんでなのかはみゃーにもわからないのみゃ......恐らく女神様にもわからないと思うみゃ。前代未聞すぎるみゃ!」
切り札であった女神すらわからないとなると本人に聞くしかない。
フード男。コルドは魔物達を多く付き従えているだろうから場所の特定は容易だ。
だが今のマカロフでは勝てない。
だから迂闊に接触することもできないのだ。
「親父だってことはわかったけど、どうすればいいんだ? 攻略法なんてあんのかよ......」
3人はうーむと考え込んでいたが何も浮かばない。
圧倒的にレベル差があるし、相手は魔法の達人。それこそネビアと同じかそれ以上だという。おまけにあのチート武器である。
「やっぱ取りあえずはレベル上げしかないよな......?」
「そうですわね、ここにはダンジョンがありますし、しばらくはそこに籠もってレベル上げに専念するしかありませんわ。当然私もお付き合いします!」
ダンジョンがあるのなら効率はいいだろう。だが、ビビアンがいるとなると守りながらだから効率はやや落ちる。
しかし、置いてくわけにもいかないし、強くなってくれるならいいだろうと動向を許可した。
「しばらくはダンジョンに潜るとして、あとは王に報告だけど、どのへんまで話す?」
その後しばらく話した結果、王には魔物達が魔法を使えるようになっていることと、相手は[闇]魔法の使い手だということだけにしようということになった。
そしてマカロフたちは王城へ向かい、王に説明した。
「うむ、大変ご苦労であった。黒幕を叩くことは出来なかったが5000もの魔物を掃討してくれた上に、その中にはブラッディ・スカルナイトまでいたそうではないか。よくやった。我が国からは報奨金を出そう。それと、宴の席も用意しようではないか。存分に疲れを癒やしてくれ」
報奨金はなんと200000ゴールドもの大金だった。
やはりブラッディ・スカルナイト討伐が大きかったようだ。
マカロフ達は宴を存分に楽しみ、たらふく飯を食べた。
次の日マカロフは、ダンジョン探索にあたり、必要なものを買い込んでいた。
今回の魔物掃討の件でも問題になった魔力がすぐ無くなる問題を解決する為に、マジックエンチャントの掛かった指輪を購入。
それは、着けているだけで魔力の回復速度が増すという代物だ。
そして同じくマジックエンチャントの掛かった靴を購入。
こちらは走れば走るだけ魔力が回復するものだ。
この2つがあれば魔力がすぐに切れることはないだろう。
他にも、魔法を通して使うと汎用性が高いと思い、投げるようの小型のナイフを何本か購入。それと、持ち運びやすいし、コスパも良いので長めの針を数十本購入した後、マカロフの大好きなパンを購入。
この国のパンは食べたことがなかったため鼻歌交じりであれやこれと選んでは買っていた。
そしてその後もネビアとビビアンの為にパン以外のものも買い、ポーション類なども揃えた。
今まではそこまでの量を買ってなかったからちゃんとした鞄は用意していなかったが、今回は量が量なので肩掛け鞄を購入した。
サイズはネビアが入れるほどの大きさだ。
さぁ、準備は万全。
明日からのダンジョン探索が楽しみだ!
鞄を購入する描写を追加しました




