ーー7話【再会?】ーー
「やぁ、マカロフ。待っていたよ」
フード男はそう言ってマカロフに近寄ろうとする。
「話があるならそこでしろ。近寄んな」
相手が何をしてくるかがわからないのであまり近寄られるのは得策ではない。
「酷いな。昔はあんなにも素直だったのに......嫌われちゃったか」
(昔? こいつは何を言っているんだ?)
マカロフはこの男と会ったことはないはずだ。しかし、この男も嘘をついている様子はない。
「質問がいくつかある。それに答えろ」
「いいけど、全部は答えられないと思うよ?」
「いくつか聞ければいいからな。まずはあの魔物達はなんだ? お前が手懐け、魔法を覚えさせたのか?」
手懐け方も不思議だったが魔法を覚えさせるのには魔物の数が多すぎた。
「まぁ、そうだね。多分君は頭がいいから僕がどんな魔法を使うのかわかってると思うけど、端的に言うとそれの応用で従えた魔物達だよ。そして魔法のことは言えないね。黙秘だ」
やはりマカロフたちの睨んだ通り[闇]魔法使いなんだろう。
応用というのは幻覚を見せていると言ったところだな。
「そうか、まぁいい。次はお前の目的だ。あんな魔物を従えて何をしたい?」
「魔物は手段であり目的ではない。とだけ言っておこうか」
分かり難い言い回しだ。手段であり目的ではない? やはり魔物を使って何かをしでかそうとしているのか......
「そうか、もう話は終わりだ。投降する気はないか? 俺もそれで済むならそうしたい」
「ククク、マカロフ、君は甘いね。やっぱ昔となんにも変わってないや。悪いが僕はこんなところで降りるわけにはいかないんだよ」
マカロフもおとなしく投降してくれるとは思っていなかったがやはり寂しかった。
自分が初めて人の命を奪うことにはあまり躊躇は無い。
むしろ罪人ならば進んで断罪すべきだとも思っていた。
だがそれでもやはり心に思うことはあった。
「ならば俺に斬られろっっ!!!」
マカロフは全速力でフード男へと迫る。
相手は魔法使いだ。多少剣が使えてもメインは魔法。
マカロフには及ばない。そう思ってしまうのは普通だろう。
だが、この相手は普通ではなかった。
ガキン、と鉄同士がぶつかりあう音がした。
マカロフは幻聴かと思った。なぜならマカロフの持つ剣はどんなものでも斬れてしまうような性能だったからだ。
しかし、幻聴でも何でもなく、確かに相手の剣とマカロフの剣とが鍔迫り合いをしていたのだ。
「なん......で、斬れねぇんだよっ!」
マカロフはフード男を剣ごと跳ね返した。
「これは驚いた。僕の妖楼刀と同等の剣があるとはね」
まさかマカロフが女神から貰ったアイシクルソードと同等の剣があるとは、マカロフこそ驚いていた。
「お前、その剣はどうやって手に入れた?」
「多分君と同じ方法だと思うね。この世界でこんなものを作れる人間はいるはずがないからね」
(あいつも女神から貰った!? だけどどうして......いや、どうやって!?)
マカロフは動揺を隠しきれなかった。
すると、マカロフのその様子を見ていたフード男が
「何故? と思ってるみたいだね。答えは簡単だよ。僕も女神に選ばれた人間だ。という事だよ」
「何を言ってるんだ......? いや、でもそれならレベルの話は辻褄が合う。けど、勝手なことをしたら不死の力はなくなるんじゃなかったのか!? なぁ、さっきから黙ってないでネビアもなんとか言えよ!!」
この男に出会ってからはネビアは1言も言葉を発していなかった。
「すまないみゃ、考え事をしてたのみゃ......。この男の言ってることは全てほんとみゃ。みゃーはこの男を知ってるみゃ。でも、みゃーもこの男は死んだとばかり思ってたみゃけど。どういうことなのみゃ! あのとき確かに不死の力が奪われて、その後に息絶えていたはずみゃ!」
「ハハッ、あの時の使いの猫か。随分と久し振りだな。なんだ? 今はネビアなんて名前なのか」
「おみゃーに名前を呼ばれる筋合いはないのみゃ!!!」
ネビアはマカロフと会ってから見せたことの無いような顔で怒りを顕にしていた。
「おー、怖い怖い。確かに僕はあの時死んだね。けどまぁ、色々あったんだよ。今はそれを君たちに話すことは出来ない」
「今もクソもねぇ! お前はここで俺に倒されるんだよっ!!」
「やめるみゃ! おみゃーじゃ、マカロフじゃあいつには勝てないのみゃ......」
「うんうん。利口な判断だよネビア。それに僕もここで君らとやり合おうなんて思ってなかったしね」
悔しいが、マカロフもここで無理に戦おうとするほど馬鹿ではなかった。
「次会ったら必ず倒す!」
「ふふ、そうかいそうかい。僕ももっと強い魔物たちを集めなきゃね。じゃあ、またどこかで会おうね」
それを最後にフード男の姿は一瞬にして消えた。
「......、取り敢えずこの場所を調べていこう」
「わかったみゃ......」
マカロフ達はしばらく広場の中を調べたが特にこれと言ったものはなかった。
しかし、本人の口からいくつか情報は得られたが、いずれも整合性に欠けており、王に話しても信じてもらえるかわからなかった。
「ビビアンも待ってるし帰るか」
「そうみゃね......」
帰り道は至って普通だった。
だが気になるのはネビアがあの男と会ってから様子がおかしい。
2人の会話から察するにかつてはマカロフとネビアの様なパートナーの関係だったのだろう。
それもあまり仲が良かったとは思えない雰囲気だった。
色々と聞きたいこともあるが今はやめておこうとマカロフは思ったのだった。
マガロフ達はディルベンに着くと、まずはビビアンの居る宿へと向かった。
「おーい、ビビアン帰ったぞー」
部屋からは返事が無い。夕方だしどこかへ行っていてもすぐ帰ってくるだろうし、近くの風呂屋で体でも洗って時間を潰そうかと思っていたら、階段からビビアンが上がってきた。
「マカロフ様!? 御無事だったんですわね!!」
そういうとビビアンは、マカロフに抱きついた。
「お、おいビビアン大袈裟だな。それに、俺風呂入ってないから......臭うと思うぞ?」
マカロフは2日間風呂に入らず、魔物たちの返り血を浴び、泥まみれだったためなかなかなものになっていた。
「関係ありませんわ! それで、どうでしたの?」
「その事だがな、話し出すと長くなる。今日は疲れたし風呂にも入りたいから明日でいいか?」
「そうですわね。配慮が足りませんでしたわ。それに、私もこの間に色々と調べましたのでそのお話もしたいですしね」
そう言って2人はそれぞれの場所へと向かうのだった。




