ーー3話【レベル】ーー
翌朝起きて直ぐに昨夜考えていたこと。フード男のことについてマカロフは考えていた。
「あの男と俺は王城以外のどこかで会っている......?」
王城で会った時からマカロフはずっとそんな気がしていたのだ。
どこか懐かしいような、だがずっと村にいたマカロフは村の人以外は知らないし、あんな辺境に来る人なんて居ない。マカロフの思い過ごしなのだろうか。
それに昨日も思ったがフード男の行動には謎が多すぎる。
魔物騒ぎで国を混乱させたい等の理由であればもっと大々的に街を襲うなりすれば良いし、王城にいた時に王を殺してしまえば国中は大混乱に陥ったであろう。
他に理由があるとしてもそれはどんな理由なのだろうか。魔物を付き従え、6国全てに散りばめ、かと思えば国の一部の場所に集中して集める。
なにを企んでいるんだ。あの男。
「っはぁー、マジでわからん。わかったからどうこうできるってわけじゃねぇけど。なんかの手がかりにはなるかなーって思ったけど、ほんっと謎だわ」
マカロフが長考しているとドアがコンコン、と鳴った。
「はいはーい」
マカロフがドアを開けるとネビアを抱っこしているビビアンが居た。
この数日間ビビアンはネビアと寝るのが気に入ったようで一緒に寝ていた。
「どした? 今日は各自部屋でやれることやるぞーって言ったけど、用ができたか?」
「えぇ、1つ気がついたことがあってお話を」
ビビアン達を部屋に入れて、話を促す。
「そんで? 気がついた事って?」
「えぇ、ここ4、5ヶ月の間王都で指名手配されてた輩がいましてね、確かその男は見たことも無いような魔法を使った。という事で当時結構話題になってましたの。魔物討伐中の冒険者を無差別に攻撃しては何処かへ消える。それが、その男の犯行でした」
4、5ヶ月といえばちょうど魔物達がおかしくなった時期と被っている。
それに、見たことも無いような魔法というのは幻術魔法か高位の[闇]魔法だろう。[闇]魔法を使う者が数少ないから見た事ないと思ったのだろう。
「それで、そいつがどうしたんだ?」
「えぇ、ある時1人の冒険者がその男に【鑑定】の魔導器を使ったところ、普通は見えるはずの名前が見えず、レベルの表記がおかしかったそうです」
「いくつだったんだ?」
「それがですね......『Lv350』そう表記されたそうです。どう思いますか? 我がナタリア騎士団のエースのサリー様でも『Lv80』ですよ? その冒険者は名前も出なかった事で壊れていたのだろうと思い真に受け止めてなかったそうですわ」
レベル350だと!? これはいよいよタダ事ではなくなってきた。
本当にその冒険者の魔導器が壊れていたのならいいのだがな......
「マカロフは今なんレベル何みゃ?」
自分のレベルと役職などは目を閉じて、見たいと念じれば見れるのだ。
《マカロフのステータス》
役職:村人
二つ名:彗星の魔法剣士
Lv:32
マカロフは目を開き
「んーとな、今レベルは32だったぞ」
マカロフが村を出た時に確認したが、その時はLv4だった。
様々な魔物と戦い、ドラゴンすらも倒したのだ。レベルが上がりにくいなりに頑張っている方だ。
「32......かみゃ、それだけレベル差があると少し厳しくなるみゃね」
そう、人はレベルの上昇に応じて、敏捷力や筋力などの隠しパラメーターが上がっている。
レベルが上がれば上がるほど強くなるのだ。
「確かに300も違うとなると厳しいですわね......かと言って今からどうこうしたところで上がったとしても1や2。技術や魔法などでどうにかするしかありませんわね」
事はマカロフが思っていたよりも深刻だった。
ただでさえレベルが上がりにくくなっていて、あまり長いこと時間もかけられないとなってはどうすることもできない。
今思えばドボイのあの目にも止まらぬ速さの裏にはレベル差が関係していたのだろう。
あれよりももっと速く動かれるとなるとどうしようもできない。
また1つ、悩みの種が出来てしまった。
マカロフがこめかみを押さえていたらネビアが
「消費魔力は半端じゃなくなるけど、マカロフの周りに[風]のフィールドを展開するのはどうみゃ? それか攻撃系のフィールドでもいいのみゃ」
「それ頂き! 俺の周りに高密度の[風]魔法のフィールドを展開。引っかかった敵に対して[土]で足止め。そしてトドメは[光]でドカン! ってか?」
この作戦であれば動きが速くても止まりはしないと思うがかなり遅くなるだろう。
そうなればあとは簡単だ。
「さすがネビアちゃんですわね! 魔法戦でネビアちゃんとマカロフ様に敵う相手なんてもう居ませんわね!」
そうであればいいのだが......
船旅はまだまだ続く......




