ーー2話【作戦】ーー
船に乗って2日目になった。
「まだ2日目かよー。なんかもう飽きたんだけどやることないのかよー」
マカロフは退屈していた。これから後5日もあると思うと先が思いやられる。
「そんなにみゃーみゃー叫ぶなみゃ。みゃーの治療が変なふうになったらどうするのみゃ」
「そうですわよマカロフ様。何かきっとありますわよ。例えば......ネビアちゃんやっぱり泳ぎます?」
ネビアの船酔いの治療をしていたビビアンはネビアを”ちゃん”付で呼ぶようになったが正しいのか分からない。
「ビビアンまでみゃ!? 酷いのみゃ、厄介払いされてる気分なのみゃ」
ビビアンはくすくすと笑い、ネビアはしょんぼりしたあとみゃはは、と笑っていた。
和むなぁ
だが、本当に何もすることが無い。
強いて言えば筋トレ等だ。
流石に後5日ずっと筋トレもつまらない。何かすることは無いかと考えていたらネビアが
「どんな魔物が出てくるかわからないみゃけど、ビビアンが居るんだしある程度情報はあるのみゃ。そこからどういうふうに魔物達を相手するか、その作戦が必要みゃ」
確かにそれなら2日くらいは潰せるだろう。それに作戦は大事だ。あるのと無いのとでは全然変わる。
「ビビアン、なんか聞いてるか?」
「そうですわね、【ノスタリア】の騎士団が魔物の群生地帯に派兵したのは知ってますわね。ノスタリア騎士団は6王国の中では3番目くらいの実力がありました。ですが先の派兵で騎士団はほぼ壊滅状態。そんな風にされてしまったノスタリア騎士団の騎士団員の話によると、“見えなかった”とのことです」
3番目の実力を持った騎士団でも歯が立たなかったというのはマカロフに強い衝撃を与えた。
「”見えなかった”? それってつまり、相手は透明になって攻撃ができるという事なのか? それとも動きが速くて”見えなかった”? その2つとでは対応が全く変わるぞ」
「はい、それで【ノスタリア】の王もそれを聞いたのです。ですが、その団員はこうも言っていたそうです」
ビビアンは一息置くと
「あそこにまた行かなければ......」
「そう言ったそうですわ。この発言から想像すると......これはかなり面倒くさい相手ですわよ」
「【幻術使い】か、ほんとに面倒くさいなぁ。ネビア、幻術ってまず防げるのか?」
幻術とは、対象者に現実とは違う映像を見せ、混乱させるためのものだ。
「あるみゃよ。幻術というのはそもそも[闇]魔法の応用みたいなものなのみゃ。ただ、それを使えるということはみゃーと同じくらいの魔法適性を持っている。もしくはそれ以上という事も考えられるのみゃ」
ネビアと同じくらいの魔法適性を持ってるのが相手では騎士団でも歯が立たないのは納得だ。
「そもそもそんなやつ居るのか? お前と同じ程の魔法適性になるには相当な時間が必要なはずだろ?」
「いる......いや、もういないのみゃ。だからありえないはずみゃ......」
ネビアは今誰のことを言おうとしたのだろうか、だが、今はそいつよりももっと大事なことがある
「対策は出来るんだな? んで、相手は[闇]魔法使い。そんで俺はちょうど最近[光]をかなり扱えるようになってきた。相手の[闇]魔法はネビアに打ち消して貰って、攻撃に[光]を使う。多分そいつは[光]魔法を防ぐ術は無いはずだ。ネビアは辛い役回りだが頼めるか?」
「ふふん! 余裕なのみゃ! みゃー達と魔法で勝とうなんて5000年早いのみゃ!」
大まかな作戦はこれくらいでいいだろう。
だがやはりどうも引っかかる。王城で会ったあのフードの男の言っていた場所が今回の目的地になるのであればあの男はあそこにいる。
あの男が今回の騒動の主犯なのか?
それならなぜ”待っている”などと言ったのだろう。
謎はどんどん深まるばかりだ。明日にもう一度よく考えてみよう。
マカロフはそう思い今日のところは寝るのだった。
普通、魔法は魔物には扱えませんので、魔法は男が扱っていたものとします。




