ーー2話【1輪の花】ーー
「ん? こんなとこに穴なんてあったか?」
マカロフは家へと帰る道の途中に小さな穴を見つけた。
「行きに見つけてたら埋めてるはずだけど......まぁいいか埋めちゃえば......って、なんか光ってね?」
その穴からは仄かな光が溢れていた。
その光はとても不思議で、見る者の心を和ませる効果でもあるのか、マカロフはおっとりとしていた。
しばらくしてマカロフは、その光がなんなのかを探ってみることにした。
どんな魔物が来てもこんな辺境に来る魔物は大した強さではない。
そう思って穴の中へと手を伸ばしてみた。
「んん......っと、どんだけ深いんだこれ......うわっ、やべっ、落ちる落ちる落ちる。落ちるってこれ」
何かに引き込まれるような感覚がマカロフを穴の中へと引き込む。
「うわぁぁぁぁぁぁ............」
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「っっ、尻がじんじんする......どんだけ落ちたんだ?」
マカロフは上を見上げるが外の光はかなり遠いようで、差し込む光はひどく弱い。それなのにその空間はとても明るく、それこそ昼間の外にいるかのようだった。
「これがさっき見えてた光か、花? なのか? なんていう名前かわかんねぇけどすげぇ心が落ち着く感じがする」
マカロフの視線の先には1輪の花が光り輝いていた。
マカロフは自分が置かれている状況も忘れたのか、マリアンへの土産にしたら喜ぶだろうなと場違いなことを思いながら手に取ると、その花から突然先程までの光とは比べ物にならないくらい明るく不思議な光を放ち、マカロフを光の中へと誘った。
『......え......す......? ......聞こえてますか? マカロフ』
何処からか聞いたことのあるような懐かしい声が聞こえた。
「あ、あぁ、聞こえて......るけど誰だお前!? てかここどこだよ!?」
突然のことで停止しかけていた思考が動き出し、今必要な情報を聞き出すべく口を開く。
『私は女神よ。あなたが落ちた穴に咲いていた1輪の花。【ステンリア・フラワー】を資格ある者へと授ける役目を担っているのよ』
何を言ってるのかがわからないけれどこれは冗談や夢などといったことではないようだ。
現に、女神を名乗る女は空を飛んでいるし、マカロフは自分の頬を抓ってみるが当然のように痛い。
「女神、さんでいいのか? その、【ステンリア・フラワー】ってのは、誰もが取れるってことじゃないんだよな? 俺は取れちまったけど、その......資格? ってやつがあるってんのか?」
マカロフは自分でも愚問だとは思いつつも確認のため聞いてみる。
『えぇ、そうですよマカロフ。あなたには資格があります。そして、これを手にしたからにはこの世界を救ってもらわねばなりません』
(俺がこの世界を救うだって? ただの村人であるこの俺が? それに、こんな花を取っただけで世界を救えるだけの力があるのか?)
マカロフがそう思っていると女神が
『えぇ、あなたには力があります。それに、この花を煎じて飲むと不死の力を得ることができます。その力とあなたの力を使ってこの世界を救っていただきたいのです』
女神はマカロフの心でも読めるのか俺の聞きたいことを的確に教えてくれた。
マカロフはとんでもないものを見つけてしまったのかもしれない......