ーー2話【ネビアと魔法と】ーー
グレートウルフ討伐の報酬を冒険者ギルドで貰ったマカロフは、疲れたので宿へと帰っていた。
「ネビア今帰ったぞー」
新婚の会話のようだ。
(あれ? ネビアって性別どっち? 神の使いだからそういうのはないかな? 気になるけど聞いても『知らないみゃ』って言われるだろうしやめとくか)
「遅かったんみゃね。死にかけたかみゃ?」
ニコニコされながら言われも正直反応に困る。死んでもないし死にかけても無い。
思った以上にグレートウルフは相手にならなかったのだ。
あの後も、隙を作って斬る以外の戦い方(正面から斬る。噛みつきを回避してその背中を斬る)をしてみたのだが案外呆気無かったものだ。
「昔の俺が弱かったのか今の俺が強くなったのかだよなぁ」
「なんだみゃー、つまんないのみゃ」
(俺に死にかけて欲しいのかよ!)
マカロフが心の中でそうツッコむ。
「ネビアは何してたんだ? 暇だったろ?」
朝からこの夕方まで独りぼっちだったんだ。
やることと言えば魔法の練習くらいだと思う。
「もちろん魔法の練習みゃ!」
(やっぱりか。それにしてもよくも半日も魔法ばっか使ってられるよな)
マカロフは魔術書見て魔法使ってるばかりであまり魔法の事は詳しくなかった。
良い機会なので聞いてみよう。
「なぁネビア。魔法ってなんなんだ? その......特性みたいなのってあんのか?」
「特性とかって言われてもみゃー......基本系統は[火][水][土][風][雷]の五系統なのみゃ知ってるみゃ? それに加えて、[光][闇]その上位系統で[無]があるんみゃけど、[無]を使える魔法使いなんてほとんどいないみゃ。そもそもの[光]と[闇]を使える人間が少ない。だから[無]は最強の魔法と言っても過言ではないみゃ。」
基本系統は知っていたが、その他の系統があるなんて知らなかったマカロフはどんなものかイメージしてみたが、[無]というのがどんなものかさっぱりわからなかった。
「[無]って具体的にどんなことが出来るんだ? 物体の存在を無くすとかそんな出鱈目な技だったり?」
「流石にそこまではいかないみゃ。けど、相手の魔法の無効化や、記憶の一部抹消くらいなら出来たかみゃ?」
([無]凄すぎるでしょ。記憶の一部抹消って、それがあればどんな悪いことしてもみんなの記憶からそれを消せば......やらないよ?)
「そんなにもすごい魔法ならみんな使いたがるだろうな。なんで研究とか進めてないんだ? そうすればいつかは使えるようになるだろ?」
何年もの歳月はかかっても、[無]を習得することは出来るようになるはずだ。それこそ自分の子孫などに。
「それは出来ないのみゃよ。正しく言うと、”人間には”出来ないのみゃ。人間は独占欲がすごいのみゃ。そんなすごい魔法が自分以外にも使えては意味がないのみゃ。だからほとんどの人間はこれを独力で研究し、結局は寿命が来て研究結果は無くなってしまうみゃ。だから、無理なのみゃ」
確かにそうかもしれないが、一家で研究をしているところなどが、あってもおかしくないはずだ。
自分の家族になら受け継がせられる。そんな人間がいてもいいだろうが、それも恐らく独占欲があるからどこかで途絶えてしまうんだろう。
「あのさ、もしかしてさ、その[無]の魔法って、魔術書にあったりするの?」
そう、魔術書にあったらそれだけ覚えてりゃいいってレベルになってしまう。
「んなものあるに決まってるみゃ。女神様がすべての魔法を詰めた本みゃよ? 確かここに......」
そう言ってネビアは魔術書をめくりだし、何枚かめくったところで「あったみゃ!」と言ってそのページを見せてきた。
「読めねぇんだけど......」
他のページは読めたのにこのページだけ何故か読めない。
「そりゃそうみゃ、おみゃーさんは[闇]と[光]を覚えてないからみゃ。さっきも言ったみゃ? [無]は[闇]と[光]の上位系統だって。いくら魔術書があってもその2つを覚えなきゃ使えるようにはならないみゃ」
やはりそんな簡単には最強の魔法を使わせてくれないか。
でも、魔法の覚える順番はある程度決まった。
先ずは基本系統を使えるようになって、後は[光]と[闇]を覚える。そして[無]を覚えたら基本系統を完璧に使いこなせるようにする。
素晴らしい作戦だ。
(そうと決まれば明日の魔物討伐から魔法も織り交ぜることにしよう)




