僕が背が高くなりたい理由
「女性と並んで手を繋ぎたい」
「はぁ?」
ここは今泉ゲーム会社。とりあえず、ゲームを制作している会社である。とても小さいな子会社である。
そんな会社で働いているグラフィッカー、瀬戸はとあることを口にした。
「僕の背は小学生ぐらいだから、上手くいかないんだよ」
「どーいうことだ?瀬戸?」
「あの、松代さん。食いつかないでください」
瀬戸の周りの状況。隣に松代というグラフィッカーの先輩がおり、その背後にはとても恐い管理兼企画さんである工藤友ちゃんがいる。
そして、今の瀬戸は自分の世界に入ったヘブンズモード。
「漫画やアニメであるじゃないですか、男と女が手を繋いで一緒に歩くシーン。憧れます」
「分かる分かる」
「2人で照れながらもはにかんで、どこぞの知れぬ目的地へ行く。僕もその男性となって、今、女性キャラと歩くシーンを制作中なんですけど、僕の背はとても小さいからまるで女性が子供(自分)を連れ添っているような雰囲気になるんですよ」
それはとても困った悩みだ。リアル感を出すため、自分の背(投身)を二次という場所に現すと立ちはだかる不条理。
「なるほどな。確かにそれは困った悩みだな」
「瀬戸くん、仕事とまったく関係ないんだけど?ちょっと、早くデータをあげてくれない」
リアルから離れすぎれば、それはもはや自分ではなくなる。しかし、リアルと向き合えば
「そうリアルと向き合えば!僕という存在は二次元でも、夢っぽくなってしまうんだ!!この小さい背のせいで!」
「あんた、仕事しなさい」
リアルを思い出させるように瀬戸の頭を引っ叩く友ちゃん。もう少し角度をつけて叩いてやらねば、瀬戸の妄想は止めることはできないだろう。
「難しいところだな。参考までに俺のデータを見せてやろう」
なんか、鼻が高い面で松代は自分のPC内のデータを一部、瀬戸に閲覧させてくれた。瀬戸が言っている状況にあう絵を松代は何百回と描いている。
「これは俺と酉さんをモデルにしている。どうだ?リアルだろ?」
「うおおぉっ!さすが松代さん!羨ましいぃぃっ!こーゆう感じです!このように、自分と相手の2人並んで照れながら歩いていくのを描きたいんです!!」
「また、酉さんを描いているんですか、松代さん!」
酉さんとはこの会社の社長である。松代の恋人であり、両思い。いや、愛を伝える重さは松代が圧倒的に重い。
「ドット絵から3Dモデル、さらには動画にしたものもある!参考にしてくれよ、瀬戸」
「凄い!さすが、松代さん!同時に、すごく妬みが吹き出ます!」
「酉さんへの愛が重すぎるんですけど、気持ち悪い!!」
文句を言いつつも、そのデータをもらう瀬戸。酉さんはそれはもう憧れ的な大人の女性。友ちゃんとは大違いの魅力がある。
しかし、いくら松代が資料(酉さんの)を瀬戸に提供したところで、その背の問題は解決しないだろう。それと仕事の方も解決しない。
なんだかんだ言って、酉さんの話が膨れそうになった時。ご本人様がまさかの登場。
「どー?お仕事、進んでるかしら?」
「と、と、酉さん!!」
まさかの登場でも、松代は自分の描いた酉さん画像集、動画集を閉じない。この愛を見てください、そう伝えたい眼をしている。松代のそーゆうところが好きな酉。
しかし、プライベートとお仕事は分けるのが酉のやり方。
「少しだけ話は聞いたわ。男女ペアのものが上手く描けないそうね、瀬戸くん」
「は、はい」
「困っちゃうわねー。仕事もあるわけだし」
酉の発想。彼女もまた、異端的な部分。常識というのが外れている。
「瀬戸くん。逆転の発想よ」
「逆転の発想?」
「女性があなたより大きい必要があるかしら?あなたと同じ背でも良い、逆にあなたよりもっと年下でもいい」
「……!!あっ!」
「ロリよ!あなたのその背なら、小学生から中学生、そんな小さい子供達と合法的に触れ合うのを描いていいの」
犯罪の匂いがぷんぷんするんですけど!
「ロリ巨乳もあり。ロリババアなんて、ジャンルもあるわけだし」
「そ、そうですね!!おっぱいでかい小学生とイチャつけるんだよ、僕は!!」
「瀬戸、イチャつけないから!警察呼ぶわよ!」
耀き出す目。妄想という檻から抜け出し、現実という地点で描き出す自分。瀬戸の気合は高まった。その意志は数秒で仕事をさっさと済ませ、自分の妄想を現実させようと必死なものだ。女性はなんだっていいはずだ。
「可愛いのなら!」
「なんだっていいじゃないね」
瀬戸のスランプ(わずか30分)は終わった。仕事は順調に……いや、快調なペースで進んでいく。
「そーですよね、酉さん!それで俺と酉さんが、子供になって手を繋いで歩いている動画作ったんですけど、見ますか!!」
「あら?それはとても嬉しいのを作ってくれたわね、松代くん。じゃあ、今見て良い?」
「酉さん、なんで退かないんですか!?」
このゲーム会社はホントに変人ばかりが集まっている。