高速を目指す君へ
Episode1 [HighSpeedRacing]
人には必ず何かの才能がある。
どこかでそんなような言葉を聞いた覚えがある。
世間で謳われている名言っていうのは、大抵はどれも真理をついたようなニュアンスを含んだ、ただの結果論でしかない。というのが最近の私の持論だ。
そしてそれは、裏を返せば、真理をついたようなニュアンスを含ませると大抵の言葉は名言っぽく聞こえてしまう、という事でもあるのだろう。と私は思う。
ならば、私の才能とは一体なんなのだろう。
なんて事を考えてみたところで、どうせ最終的にはつまらない一般論に落ち着くのだろう、という事は痛いほどに理解できる。
結局、私程度が考える感情なんてものは、所詮は他の誰かが辿った事のある道の類似品でしかなく、自分が特別、なんて事は一般人である私にしてみれば、そんな事は全然ないのだ。全くと言っていいほどに。
もし機会があるならば聞いてみたい、道行く人々に「あなたは自身を特別だと思いますか」と。
そしてそれにイエスと答えた人に、続けて問うてみたい、「その特別な部分は、世界中の他の誰も持ちあわせていないものですか」と。
たしかに、家族や恋人を例えに引用すれば、それらにとってあなたは替えの効かない特別な存在になるのでしょう。ただし、それを「身内から大切にされている人間」と一括りにしてしまえば、ほら、もうあなたは「特別な存在」なんて資格は剥奪され、どこにでも居るような家族から愛されているだけのごく普通の人間だ。
なんて、もっともらしい事を偉そうに語っておいて、結局は何が言いたいのかと言うと、この世に特別なものは存在しない。
特別かどうかを決めるのは、どんな時もその人次第という事だ。
つまり、とてつもなく砕いた物言いをすれば、他人の目など気にせずに自分を強く持って生きていくべき、というような事を言いたかったのだと思う。
おしまい。