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現代の悪魔契約は、異世界転生でした

作者: 四方

(かね)と女、君はどっちを選ぶかい」


「質問が曖昧ですね。何でも欲しいものをくださるとのことでしたが、それだけでは判断しかねます。金というのはどれほどの量なんですか? 女というのは、どのような人柄で、どのような容姿で、どれだけ健康に生きられる方なのですか?」


「おやまあ、やれやれ。まったく、こんな状況でもそんな質問を返す余裕があるんだね。君の回答時間はもうあと1分も残されていないんだよ?」


「だからこそですよ。欲しくもない物の対価にするほど、僕の魂は安くありません。回答は慎重になります」


「ふうむ。……君の体は今も激痛に襲われ、おまけに生命の源とでも言うべき血液どんどん抜けていく状態だ。碌な思考能力も残っていないものかと思っていたのだがね。よくぞまあ、それだけ達者に口が回るものだと感心するよ」


「慣れていますからね。さて、いい加減、質問に答えてください。貴方だってこの『取引』がおじゃんになるのは嫌なのでしょう?」


「はっ、悪魔相手に死にかけの人間風情が良く吼える。言っておくがこの俺様に貴様の願いをかなえてやる義理は無い……とか言ってやりたいとこだけど、最近は回収ノルマを達成できない奴にはきつーい罰則が待っているんでね、そうも言ってられんね。答えようか。金、女についてはお前の望む通りのものをやろう。金ならば、一生使っても使い尽くせんほどの量と考えてくれたまえ。ああ、ちなみに女は何も一人でなくともいいぞ? 高貴な姫様から使い古された奴隷まで、好きな女を好きなだけ用意しよう。君の望むままにね」


「へえ。さすが、『転生』ですね。転生先の世界での欲望は思うが儘ってことですか。現代日本でそれができるならどっちを選んでも最高なんですけど」


「我々弱小悪魔ごときに、この世界の因果をそこまで捻じ曲げられる力はないさ。さて、……君の命の残り火はごくわずかだ。交通事故とは不憫なことだが、このまま死ぬか? 私と契約を結んで第二の死後に魂を引き渡す代わりに、金か女、どちらかを好きなだけ得る力……君たちに分かりやすく言うなら「チート能力」とやらを手に異世界に転生するか? 好きな方を選ぶと良い」


「……転生を。そしてチートには、女を望みます」


「ほう、そちらか。意外だな。ま、良いだろう叶えてやるさ。くく、ついでにサービスだ。お前の転生先だが、剣と魔法のファンタジー世界に送ってやろうじゃないか。女たちに養って貰いながら、好きなだけ爛れた一生を過ごすが良い。ほら、もう体からお前の魂を切り離したぞ。このまま転生先の体の空きができたら、そこに入れてやる……ふむ、見つけた。中々優秀な身体のようだ。寿命は80年は堅いだろう。ほれ、行って来い」


「ありがとうございます、悪魔さん。それじゃあ、…………これから末永くおつき合い願いますよ?」


「何? 末永く? 何か勘違いしているようだが私とお前はこれっきりだ。お前の魂には既にチート能力と共に死後に発動する隷属の……!? っく、どういうことだ! 何故私の体がこの世界の因果を跨いで……! さては貴様、与えた能力で『私』を望んだか!」


「ご名答です♪」


「ふざけるな! 貴様、私をその力で籠絡する気か? そうはいかんぞ! 貴様の能力で対象を支配できるのは、生ある時のみだ! 貴様が死んだ瞬間、私の呪縛は解かれる! 貴様の魂を地獄の業火さえも生ぬるい苦痛の海に送ってやる! さあ、そうされたくなくば、今すぐ私を解放しろ!」


「それは駄目ですよ。僕が望んだ「女」。欲しい女はただ一人。あなただけですから。それを違えたら、契約違反になってしまいますよ?」


「何? 私のこの姿は仮初のものだ。私の本質は女ではない! 第一、何故『お前の姉』の姿をした私を求める!」


「言うまでもありませんよね? そういうことです」


「っ!? だが、私はお前の姉ではない!」


「分かってますよ、そんなこと。それに僕は、姉の姿をした下僕が欲しかっただけなんです。何も中身が姉である必要などありません……ああ、もうそろそろ『あちら』の世界に着きそうですね。これが魂が身体に呼ばれる感覚というやつですか。なるほど、なんともむず痒い」


「貴様、何を考えている! いったいなんなんだ! お前が私に向けるその感情は!?」


「悪魔も取り乱すものなんですね……。そんな難しいことじゃありませんよ。僕が姉のことが大好きな人間で、かつ、好きな人間を、その人が好きであらば好きであるほど、僕の手で傷つけたい、汚したい、究極的には殺してしまいたいと思ってしまう特殊な性癖を持っているだけです。最近は姉を殺したいという気持ちが強くなりすぎていまして……正直、いいタイミングで死ねたと思っていますよ。いやあ、殺したくは有るけど、殺したら罪悪感で咽び泣くんだろうなあなんて思っていましたから、自分の中の気持ちの板挟みになって大変だったんですよ? 貴女なら遠慮なくいたぶれます」


「ならなぜ私なのだ! 貴様の姉本人を望めば良かったものを!」


「え? さっき言ったじゃないですか。僕は「姉の姿」をした貴女が欲しかったんですよお。中身なんて求めていません。僕はただ、その姿をした生き物の肌を、口を、耳を、性の象徴しるしを、髪を、目を、臓器を、血を、手と目と舌と肌で味わい、その悲鳴を、嬌声を、呻き声を、耳で感じ取れたらそれ以上の幸せはありません」


「貴様は狂っている……」


「悪魔にまで狂人扱いされちゃいますか、僕」


「ああ、そうだな。……悪魔という称号は貴様にこそ相応しい」


「おやあ? なんだかおとなしくなりましたね。どうしましたか?」


「諦めがついただけだよ。向こうの世界で私を縛れると思ったら大間違いさ。言ったろう? 貴様がこれからするのは『転生』だと。転生とは、やり直しだ。お前は新たな身体に記憶こそ引き継ぐが、歩むのは前世とは別の人生。お前が成長するまでに、正常な精神というものを形成させてやろう」


「無理ですね」


「やってみなくちゃ分からんさ。……幸か不幸か、時間はたっぷりとありそうなことだし、な」


「それは、宣戦布告ですか?」


「ああ、そうさ。悪魔の私が狂人のお前を正常な道へと導いてやる」


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― 新着の感想 ―
[一言] どうも博多っ子です。 女と金、私なら金を選ぶでしょう。……笑 しかし、男のほうが狂っていますね!姉をそんなふうにしたいとは……。姉に変身していると思われる悪魔が少し退いているような気が…
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