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D2 ハッピーエンドになりたくないのか、と問いかける



 ハッピーエンドになりたくないのか、とあなたは問いかけました。

 まだ眠っていてほしいだなんて、まさかヒーローが言うとは思っていなかったのです。

 ヒーローはヒロインを助けるもの。例外はありますが、どの物語でもほとんどがそうでした。

 ヒロインを目覚めさせなければ、ハッピーエンドにはなりません。

 つまり、ヒーロー自身がハッピーエンドになる邪魔をしているということになります。

 こんなおかしなことがあるものなのでしょうか。


「おもしろいことを言うね。ハッピーエンドになりたくない人なんているのかな?」


 ヒーローはのんびりとした笑みを浮かべて、逆に問いかけてきました。

 その笑みからは感情が読み取れず、あなたは困惑します。

 ハッピーエンドになりたくない人はいないだろう、とあなたは思っていました。

 けれど、あなたからすると、このヒーローはそれに該当するように見えるのです。

 あなたはどう答えればいいのか悩み、結局何も言うことはできませんでした。


「誰から見てもハッピーエンドだと言えるような物語って、どんなものだろうね」


 ヒーローはあなたから視線を外し、ヒロインを見下ろしながらそう言います。

 ヒロインにささやきかけるような優しい声。

 誰が見てもハッピーエンドの物語。

 それはやはり、めでたしめでたし、で終わらせられるような物語でしょう。

 あなたが目指しているハッピーエンドとは、まさにそういったものです。

 読んでいて思わず笑みがこぼれてしまうような、しあわせをおすそわけしてもらえるような、そんなお話。

 もちろんバッドエンドの話が悪いわけではありません。泣けるような話も必要なことはあるでしょう。

 それと同じように、笑顔になりたいときに読めるような話も必要というだけのこと。

 本当に、読んだ人全員がハッピーエンドだと感じる話というのは、もしかしたらないのかもしれません。

 それでも、そんなお話を目指すことはいくらでもできるのです。


「君にも色々と考えはあるんだろうけどね。君にとってのハッピーエンドを、俺に押しつけないでもらいたいんだ」


 ちらり、とこちらを見て、ヒーローはため息混じりに言いました。

 その口調には呆れのようなものが含まれていました。

 あなたはむっとしながらも、どういうことだ、と尋ねます。


「俺は、俺にとってのハッピーエンドを迎えたいんだ。そのために、タイミングを計ってる。そのことで君に文句を言われる筋合いはないよ。だって、これは俺とこの子の物語なんだから」


 ヒーローは思っていた以上に頑なです。

 自分の中に、確固たるものを持っているのです。

 あなたはあきらめの念がわいてくるのを感じました。

 きっとこのヒーローは、彼が一番いいと思ったタイミングでヒロインを起こすでしょう。

 まだその時ではない、というだけで。

 それならば、どれだけ遅くなったとしてもハッピーエンドにはなるのです。

 多少時間はかかりますが、ハッピーエンドになるのならそれでいいのではないかと思えてきました。


「何をしにきたのかはわからないけど、骨折り損だったね。ご愁傷さま」


 いちいち人の神経を逆なでするような物言いをするヒーローに、あなたはあきらめのため息をつきました。

 彼はきっと、ヒロインと二人きりのところを邪魔したあなたのことを、敵と見なしているのです。

 そんな状態で、あなたの言うことを聞こうとするはずがありません。

 もう何を言ったところで無駄なのだ、と悟ってしまいました。

 あなたはこの物語を放置することに決めました。

 ヒーローのしたいようにさせてみよう、と思ったのです。

 それでハッピーエンドが迎えられるならよし。もしもいつまで経ってもハッピーエンドにならなければ、その時にまた介入すればいいのです。


 去る前に、あなたはヒーローに向かって言いました。

 時間がかかってもいいから、必ずヒロインを目覚めさせてやってほしい。

 二人のしあわせを願っている、と。


「大丈夫、約束するよ。ちゃんと起こすし、ちゃんとしあわせになる」


 彼の言葉にとりあえずは安心し、あなたはその物語から帰還しました。

 この物語が、一日も早くハッピーエンドを迎えられることを、願いながら。






                Happy End...?

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