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結魂の力  作者: トンボの目
3/10

ジーク 2

 このまま川沿いに2~3日進むと、山間からでて中央街道に近い開けた土地に出る。

 街道の近くには魔獣が出るという話だ。


「このまま川沿いに進むのは危険だな。東に進んで、山越えでウムライの北に向かおう」


 ニーナが首を振る。


「だめよ。この辺りの山は『底無し山』って言われているの。歩いていると突然、地面に穴が開いて、そこに落ちたらもう助からない。ウムライでは誰もこの山に入らない。獣も寄り付かない場所よ」


 俺の国にもそういう場所がある。地面の下に雨などに溶けやすい岩があって、それが所々で空洞になる。普通ならわざわざ踏み込む場所じゃないが、今の俺達にとっては逆に好都合だ。


「地面が脆くて獣が寄り付かないなら、巨体の魔獣はなおさら入ってこれない。俺たちは獣じゃなく知恵のある人間だ。頭を使って穴に落ちないように工夫すればいい」


 俺は川岸に生えている太さ3~4センチの竹を4本切って枝を落とし、4メートル程の長さに揃えた。それに俺の体重を支えられる強度があることを確認してから、井形に組んで自分の腰に付ける。


「これでもし穴に落ちても竹が引っ掛かる。人の重さでこの長さより大きな穴が開くことは無いだろう。少なくとも、魔獣に比べればずっと危険が少ない」

「私やアイラもこれを付けるの?」

「これを付けて山道を歩くには体力がいるから、ニーナ達は付けなくていい。俺が先頭を歩いて、2人は俺の足跡を踏みながら付いて来るんだ。そうすれば俺よりずっと軽いニーナやアイラが落ちることはないだろう。

 念のために互いの腰はロープで繋いでおく。もし2人が落ちても、俺の力なら引き上げられる」


 川を離れて森林を抜け、『底無し山』のふもとに着いた。木がほとんど生えていない灰色の山だ。予定通り、自分の腰に井形の竹を付け、俺、アイラ、ニーナの順にロープで繋ぐ。二人が俺の足跡を踏みやすいように、俺は狭い歩幅で歩いた。


 4時間ほど歩いても、足元が崩れそうになったことはなかった。道中には無数に陥没した穴があり、俺はなるべく穴の少ない場所を選んで歩いた。


「ここで少し休もう」


 ニーナが苦しそうだったので休憩を取ることにした。彼女は目を離すと頑張りすぎるところがあるから、その分俺が気を付ける必要がある。俺の子供の頃もそうだったが、他人に甘えることを嫌う性分なんだろう。出会いの印象が最悪だったせいか、なかなか打ち解けてもらえないが、アイラに対する気遣いなどを見ていると良い子だなと思う。


 アイラは見かけや言葉遣いは幼いが、中身はしっかりしている。普段はニーナに甘えて見せるが、ニーナの苦しそうな時には弱さを見せない。わざと歩くペースを落として、ニーナを休ませようとすることもある。


 しばらく休んでもニーナの様子は変わらない。俺と目の合ったアイラが、ニーナの方を見てから自分の腹をさすって見せたので、ようやく事情を理解した。定期的に休憩を取るようにはしていたが、この山には身を隠せそうなところがあまりない。


 ニーナ達をロープなしで歩かせるのは不安がある。自分の腰からロープを外して、手持ちの一番長いロープに繋ぐ。


「ニーナ。アイラを物陰に連れて行ってやってくれ。このロープの届く範囲で大丈夫だろう」

「はい」


 ニーアがホッとした表情を見せた。だしに使って悪いが、アイラはあまりこういうことで恥ずかしがらない。


 ニーナがアイラと伴に崖の方へ歩く。やはり身を隠す場所がないので、崖の近くにある傾斜を利用するつもりだろう。素手で軽く握ったロープが、傾斜を下りて2人の姿が見えなくなった後も繰り出されていく。ロープの動きが止まって数分経った後、2人の悲鳴が聞こえてロープが急に引っ張られた。


 慌てて強く握ると、予想もしない強い力で引っ張られて俺は転倒した。そのまま体が崖の方に引きずられる。2人の体重の何倍もの力だ。全力で握ってもロープは手の中を滑り、その摩擦で手の皮が破ける。ロープを左手でも掴み、さらに歯で噛みついた。ようやくロープは滑らなくなったが、体を崖の方へ引きずる勢いは収まらない。


 砂利の上を傾斜地まで引きずられて、ようやく地面に岩肌が見えた。崖までの距離は十数タット。伸びたロープの左側に半タットほど突き出した岩が見えた。地面を掻く様に手足を動かして、体の引かれる向きを岩の方へずらす。岩に激しく叩き付けられた瞬間、ロープを引く力が緩んだ。俺は必死でその岩にしがみついた。


 体の動きが止まった時、ロープを引く力はニーナ達2人の体重分ほどしかなかった。


「ニーナ! アイラ!」

「ここよ」


 アイラの声が聞こえた。


「ニーナは?」

「私の下にいる」

「ケガは無いか?」


 しばらくして返事が聞こえた。


「少しぶつけただけ……みたい」

「私も大丈夫です。大きなケガはありません」


 ニーナの声も聞こえたのでホッとする。それから自分の体を確認した。


 ロープを掴んでいる右手は、手のひらが破れてロープに血がにじんでいる。肩は全く動かず痛みがひどい。骨が折れたか脱臼したかだろう。握力も弱まっている気がする。左手は岩の角を掴んでいるが、指先の皮が剥けて何枚かの爪は剥がれているようだ。痛みさえ無視すれば、握力に問題はない。脚は両ヒザをひどく擦りむいて、他にも何か所かに痛みがあるが、岩の窪みにつま先や踵をかけて体を支えているのだから、骨折はしていないだろう。


 残念だが、辺りにロープを結び付けられそうなものはない。この手足の力が尽きれば、3人とも崖下へ落ちるだろう。この状態を維持するのが精一杯だ。


「何があった」


 しばらくして、アイラから返事があった。


「岩の陰にキレイな花が咲いていて、取ろうとして岩に乗ったら崩れたの」


 あの力は、ロープが落ちた岩に引っかかっていたためか。


「足場が悪くて2人を引き上げるのは無理だ。何とか自分達で登ってきてくれ」


 右手の感覚が薄れてきたので、両脚を踏ん張って少しの間だけ左手を離す。滑りにくいように右腕にロープを巻き付けてから、余ったロープに噛みついて首の力で引く。左手はまた岩を掴む。ロープを口に咥えたまま、2人に話しかける。


「まず、ニーナがアイラの所まで登れ。登ったら、アイラは2人の間のロープを結んで短くするんだ。後は2人で少しずつ登ってロープを緩ませ、ニーナに支えてもらったアイラが緩ませた分を前に教えたよろい結びで輪にする。ニーナはその輪を頭から通して脇にかける。そうやって手を休ませながら、それを繰り返すんだ」


 ロープにかかる力の変化で、2人が登り始めたのが分かった。普通なら岩とロープの摩擦があるから、二人の体重を支える力はもっと少なくて済む。もろい岩の表面がロープの摩擦で削れて、その粉がロープと岩の間に挟まって滑りやすくしているのだろう。


 彼女たちには滑り止めの付いた手袋をはめさせている。体重を支えるのにそれほど握力はいらないはずだ。


 それより、このままだと先に限界が来るのは自分の方だろう。目を閉じ、息を整えて集中する。子供の頃に練習した『あの状態』になるため、頭の中で同じ言葉を繰り返す。


 俺の手は動かなくなる。

 俺の手は動かなくなる。

 俺の手は動かなくなる。

 俺の手は動かなくなる。


 痛みがじゃまをして上手くいかない。


 俺の手は動かなくなる。

 俺の手は動かなくなる。

 俺の手は動かなくなる。

 俺の手は動かなくなる。

 俺の手は動かなくなる。

 俺の手は動かなくなる。

 俺の手は動かなくなる。

 俺の手は……



----------------------------------------



 目の前で父さんが食い殺された。トラに襲われた俺を助けようとしたのだ。

 その時、俺は9歳だった。



 その数日後から、僕の全身に激痛が走るようになった。ひどいときにはその痛みが半日近く続いた。声も出ないほどの痛みで、いつの間にか気を失っていることもあった。


 母さんは色々な薬を探して俺に飲ませたが、どれもあまり効き目はなかった。


 大きな町へ行った叔父さんが高名な医者から貰った薬もダメだった。叔父さんはその医者から、この薬でも痛みが治まらないなら心の病かもしれない、そう言われたそうだ。


 心の病だとしたら、自分自身に痛みはないと思い込ませることで痛みを消すことができる。ただ思うだけではダメで、体の力を抜いて集中して念じ続ける必要がある。訓練すれば早く効果が出るようになる。本当か? と思うような話だが、疑ったら効果は出ない。そう教えられた。


 この痛みから逃れられるなら何でもする。訓練はまず体を脱力させて、『体が重くなり動かせない』と念じることから始まった。痛みの少ない間にひたすらこの訓練を続けていると、ある日本当に体が動かなくなった。逆に『体が軽くなる』と念じることで、それは元に戻った。一度成功すると、後は効くまでの時間をどんどん短くすることができた。


 次に痛みが消えることを念じた。徐々に強くなる痛みなら、痛みが増す前に念じることで効果があったが、いきなり激痛から始まった場合は全身の筋肉に力が入り、力を抜いて集中することはできなかった。心が穏やかでなければあの状態には入れない。予め念じてみても、痛みを感じていない場合はあの状態が続かなかった。


 それでも痛みが数日ごとになり、痩せ細っていた僕の体は回復していった。母さんは喜んで、医者に言われた通りに僕に肉や豆をたくさん食べさせた。しかし、見た目ほど僕の苦しみは軽くなっていなかった。


 いきなり始まる激痛は俺の全身の筋肉を緊張させ、それは体力が絞り尽されるまで続いた。痛みの無いときに体力を回復して、激痛でそれを全て失う、その繰り返しだった。


 俺は先に体力を失っていれば激痛は来ないのではないか、例え来ても体力の尽きるのが早ければ痛みを感じる時間が短くなるのではないかと考えた。命を失うまで激痛が続くという可能性もあったが、自分の将来に希望を感じられなかった僕は、その思い付きを試してみることにした。激痛のあった翌日だけ体を休め、その次の日から立てなくなるまで体を動かした。


 父さんから習った槍の型を、父の重い槍を使って繰り返す。あの時父さんの手にこの槍があれば、虎は左目に傷を負うだけじゃなく頭を貫かれていたはずだ。腕が上がらなくなるまで型を続けると、後は倒れるまで山道を走った。


 激痛を感じる時間は確かに短くなった。ただし丸一日眠り続けた後に目覚めた時の疲労感は、ただ痛みに耐えていた時より強かった。




 半年ほど経った時には、僕は父さんの槍をふらつかずに振れるようになった。と言っても、穂先の速さは父さんに遠く及ばない。槍を持つと目に浮かぶのはあの時の虎だ。僕が求めていたのはあの虎を倒すための技だけだが、今の自分の槍がその姿を捉えられるとは思えなかった。


 しばらくして、母さんが犬を貰ってきた。僕が前から頼んでいたのだ。

 大きな犬で、生まれて半年ほどで体重は子どもの僕を超えていた。大人しくて、エサをやるとすぐに懐いた。


 槍から刃を外して、代わりに布にボロを詰めて作った球を括り付けた。かなり強く突いても痛みはないだろう。犬から少し離れて立ち、足元に肉の小片を置いて、犬に向かって呼びかけた。


「こい」


 簡単な命令は教えられている。近付いてきた犬の行き先を妨げるように槍を向けると、犬は驚いたように立ち止まった。しばらく待っても僕が動かないので、槍を避けて近付こうとする。僕はそれを追うように槍の向きを変えた。犬が逆に避けようとすると、それをまた槍で追う。


「こい」


 犬が近寄るのを槍でじゃましながら、また呼んだ。すると犬は理解したのか、身を低くして足を地面に踏ん張らせる。大きく横に跳ぶと、追いきれない槍をかわして僕の足元に来た。犬は僕の様子を窺うように見ている。


「よし」


 そう言って頭を撫でてやる。犬は嬉しそうに尻尾を振って足元のエサを食べた。

 僕はそこから少し離れた場所へ行き、犬に向かって槍を構える。今度は腰を落として、犬の素早い動きに備える。犬は槍が届く直前まで近付いて、また姿勢を低くする。


 犬が横に跳ぶのと同時に槍で追ったが、着地の瞬間にまた逆へ跳んでかわされた。自慢げに尻尾を振る犬の頭を撫でると、僕がエサをやろうとする前に元の位置に戻ってこちらを向く。どうやらこの『遊び』が気に入ったようだ。


 犬としては大きいが、あの虎と比べればずっと小さい。しかし素早さなら巨体の虎を上回るはずだ。僕と犬は何度も『遊び』を繰り返したが、その日槍で追うことができたのは連続で2回までだった。




 犬にとっては遊びでも、僕は常に真剣で全力だ。何日も繰り返すにつれ、槍で追える回数は少しずつ増えていった。やがて5~6回ほど追い続けられるようになったが、犬も僕の動きに慣れてきたのかそれ以上は増えなかった。その間も型の練習と走り込みは欠かさない。


 限界まで体を動かし、数日ごとに激痛に襲われるという日々がいつまでも続いた。慣れで痛みが弱まることもなく、僕の気持ちは陰鬱になるばかりだった。




 父さんが殺されてから2年経った頃、片目の虎が現れたという噂を聞いた。倒せる自信はなかったが、未来への希望もなかった僕は、父さんの槍を持って森に入った。

 僕の後を追ってきた犬が、急に怯えて尻尾を丸めた。虎の匂いを嗅いだのだろう。猟犬としての訓練を受けていないのだから当然だ。


 それほど遠くない場所から人の叫び声がした。僕は全力で声の聞こえた方に走った。少し開けた場所に出ると倒れた人が見え、その近くにあの虎がいた。


 槍を構えてゆっくりと近付く。

 虎は早足で僕に近付くと、槍の直前で体の向きを変えた。

 逃さず僕の槍が虎の首を突く。

 しかし穂先は首の筋肉に阻まれて十分には刺さらず、体重差で僕の体は後ろに跳ね飛ばされた。


 僕にのし掛かろうとする虎に、突然その後ろから犬が飛びかかった。

 怯えていた犬のこの行為を僕は全く予想していなかった。

 虎の前足の一振りに犬の悲鳴が上がる。

 驚いている暇はない。僕はその機会を逃さず残った右目を槍で突いた。


 怒号と悲鳴の混じった声を上げて、でたらめに前足を振る虎。その喉を慎重に狙い、僕は渾身の力を込めて槍を突いた。


 倒れていた人に大きなケガは無かった。僕は連れ帰った犬にようやく名前を付けた。あの虎を倒した日から、僕は激痛に苦しむことがなくなった。ユーキと名付けたその犬とは、年老いて死ぬまで一緒に暮らした。倒れるまでではないが、槍の型やユーキとの遊びはその後も止めなかった



----------------------------------------



 どのくらい時間が経ったのか、意識が薄れかけていた俺の耳にニーナの声が聞こえた。

 あわてて手の状態を確認する。指を動かそうとしても動かない。成功だ。子供の頃の激痛と違って、ある程度この痛みは慣れることができるようだ。


 あの頃の俺は心が荒んでいた。自分の運命を恨み、自分の命に価値を感じられなかった。だがあの時の経験がニーナ達の命を支えている。あの辛かった日々は無駄ではなかった。


 ……いや、本当にそう言えるのは最後までこの手を離さなかった時だけだ。


「もうダメ。これ以上登れない」


 ロープを噛んだまま、少しくぐもった声で話しかける。


「どうした」

「崖が反り返っていて、足をかける場所がないの。手の力だけじゃ体を持ち上げられない」

「腕を曲げて体を持ち上げるんじゃなく、掴んだ腕とは反対側の肩を上げるんだ。

 手のひらの一つ分づつ登ればいい」


 しばらくしてニーナの声がした。


「やっぱりダメ。もう手が上がらない」


 落ちた所から数十メートルは登っているだろう。ロープ登りに慣れないニーナが体力の限界だと思うのは仕方がない。だが今の俺にニーナ達を助ける力はない。


「そこを超えれば後は楽になる。もう少しだ」


 自分でも本当かどうか分からない事を言って励ますが、ニーナからの返事はない。疲労で心が折れてしまったのか。彼女に力を振り絞らせるには、甘やかせるような優しい言葉ではダメだろう。最初の出会いでアイラを庇った時のように、怒りなら彼女を奮起させられるかも知れない。


「甘えるな。諦めたというなら勝手にしろ。俺はもう知らん」


 できる限り厳しい口調で言う。


「お前達にはもううんざりだ。面倒ばかりかけて何の役にも立たない」


 息の乱れを気付かれないよう、ゆっくりと深呼吸して、ニーナの怒りそうな話を考える。


「初めて会った時から気に食わなかった。いきなり俺にでかい石を投げつけた。避け損ねていたら、大ケガか下手をすれば死んでいるところだ」


 続けて話すと息が切れる。また深呼吸をする。


「飯を食わせてやったり、寝る所の用意をしてやったりしたが、それが当然かのように礼の一つも言わない」


 深呼吸。ニーナが言い返してくるのを待ったが、沈黙したままだ。


「黙っていれば美人だ。背負った時に触って確認したが体つきもまあまあだ。獣に食わせるのはもったいない」


 深呼吸。男女のことには潔癖なニーナだ。こう言えば何か言い返したくなるだろう。


「そう思って世話してやったのに、中身はまるでガキだった。手を出す機会も無いままこの有様だ。お前などもういらん」


 ここまで言えば、もう彼女達からの信頼を取り戻すのは無理だろう。だが死なせるよりはましだ。


「俺はさっきの所まで戻って寝る。助かりたかったら、俺が起きて一人で山を下りる前に、ここを登り切るんだな」


 深呼吸。


「このままだと、アイラも一緒に干物になっちまうぞ。それでもいいなら、好きにしろ」


 沈黙が続く。失敗したか?


「ニーナ、泣いてる場合じゃないよ。このまま終わってもいいの?」


 ああ……。結局泣かせただけか。最悪だ。


「見て。あの三角の岩がある所から、ここまで登ってこれたんだよ。あと少しじゃない。わたしもニーナの体を持ち上げるから、登れるだけ登って。……そう。がんばって」


 ロープにかかる力が変化して、ロープを噛む歯に伝わる。


「今度はわたしが登る。……あ……ありがとう。片手でぶら下がっても大丈夫?」

「大丈夫よ。ゴメンね、お姉ちゃんなのに」

「いいよ。さっきまでずっとニーナの方ががんばっていたんだから」


 えらいぞ、アイラ。あとは俺が……



 長いのか短いのか分からない時間が経って、ロープを引く力が急に弱くなったのを感じた。その後のことは記憶にない。

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