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暴露

少し寒い朝。

いつもより早い時間に目が覚めた。

窓を開けて空を見る。

よくわからないけど、周りの空気が違う感じがする。

なんだろう?気のせいかな?


いつものように学校に行きバイトに行く。

「あぁ、疲れた。なんか今日はすごい疲れたねぇ」

「アンタも?私も今日はいつもより疲れたよ。あれっ?光、そんなネックレスしてたっけ?」

「これ?心にもらったんだよ」「すごいじゃん!もしかして付き合ってるとか!?」

「そんなんじゃないよ」

僕はネックレスをもらったきっかけを由樹に話した。


「へぇ。なんかすごい人だねぇ。でもそんな大事なもの普通あげなくない?もしかして心君も光のこと好きなんじゃないの?」

「えっ…?それはないでしょ」

「そんなのわかんないじゃん!まだ彼の気持ち聞いたわけじゃないんでしょ?」

「そうだけど…」

確かにそのことも考えた。でもあれからはまた今まで通りの生活に戻ってる。変わったことはあまりない。

「ちょっとその鍵のトップ見せてくんない?」

「いいよ」

僕はチェーンからトップをはずし由樹に渡した。

「よくできてるねぇ。最近鍵の形のやつよく見るけど、こんなにデザインが細かくて綺麗なの見たことないよ」

「そうなの?でもそれ15の時ってもらったって言ってたからそんなに新しくないはずなんだけど」

「だからすごいんだよ。そんな10年も前のものだから」


そう言うと、由樹はトップの裏側を見た。

「裏も凝ってるねぇこれ。とても古いものとは思えない…あっ…」その瞬間、由樹の手からトップが落ちた。そして、

パキーン!!!

落ちたトップは上のほうが割れてしまったのだ。

「あぁー!ごめんね!ごめんね光!大事なものなのに割れちゃった…」

僕は動揺隠しきれなかったが、由樹は大事な友達。

トップも大事だけど、今ここで由樹をせめても仕方ない。。

「しょうがないよ…もともと古いものだったんだから」

「ごめんね…ごめんね」

由樹は何度も何度も謝っていた。

そのうち二人とも何もしゃべらなくなったが、由樹が突然思いついたように沈黙を破った。


「あっ!!!そうだ!私の知り合いにシルバーのアクセをつくってる人がいたんだ!その人に頼めばもしかして直してもらえるかも!」

「ホント!?」

「まだわからないけど頼んでみる価値はあると思う!」

「じゃあ頼んでみてくれない?」

「じゃあこれ少しの間預かってていい?」

「うん。よろしく頼むよ」

「ごめんね光…」

「もう謝らなくていいってば」



家に帰り、部屋にはいると僕はベッドに横になり心になんて言おうって考えた。きっと怒るだろうなぁ。。

そんなこと考えてるうちにいつのまにか眠りに落ちた。



三日くらい経って、部屋でテレビを見ているとケータイが鳴る。これは着信だな。ケータイを手に取り、開くと【田中由樹】の文字。

もしかして直ったのかな?少し期待しながら電話にでる。

「もしもし。どしたの?」

「あっ!心?トップ直ったよ!」

「ホントに!?」

「うん!!明日はバイトないから明後日渡すね!」

「うん。ありがとう由樹!」

「ううん。元はといえば私が壊したんだからさ」

「それはもういいって。でもよくこんな短い時間で直ったね」

「直してくれた知り合いがね、これならすぐ直るからって言ってくれたの。」

「そっかぁ。よかった。明後日何時からぁ?」

「10時からだよ」

「オレ10時までだからちょうど入れ違いだな。でも大丈夫か」

「渡す時間くらいあるから平気だよ」


その日はちょうど心と会う日。間に合ってよかったぁ!

「じゃあ明後日持っていくね!」

「うん!じゃあね」

電話をきり安心したせいかそのまま眠りについた。



二日後。。

いつもの時間に起き、リビングに行きテーブルにつく。

「おはよぉ」

「…光?アンタ、私たちに何か隠してない?」

いきなりの母親の言葉。

「えっ?なにが?」

「なにがじゃなくて、隠してることないかって聞いてるの」

「何朝から?何にも隠してないよ」

「ウソおっしゃい!昨日アンタの昔の恋人とか言う人がうちを尋ねてきて、しかも男で…」



……………えっ?

突然の事で僕は何がなんだかわからなくなった。誰だ?

考えても浮かんでくるのは一人しかいない。

……

「瞬」


「そんなのウソに決まってるじゃん。よくそんなの信じられるね」

「そりゃウソだって思いたいわよ!でもあんな写真見せられたら…」

「あんな写真??」

「昨日きた人とアンタが…キスしてる写真よ!」

「そんな…」

確かに一度キスをしてそれを二人で写真にとったことはある。

まだ残ってたなんて…

「もう私なんていいかわからなかったわよ…」

「なんで昨日そいつが来たとき起こしてくれなかったの!?」

「私も混乱してたのよ!その時起こしても何話していいかわからなくて…」

「………ごめん、母さん」

「…じゃあやっぱりホントなのね?あぁ、私の育て方が間違ってたのかしら…」

「違うよ!母さんのせいじゃないよ!」

「私が…私が…」


ばたっ!!

母親はそのまま倒れた。

「母さん…母さん!!」


僕は救急車を呼び、父親に連絡をとり、病院へ向かった。「なんでこんなことに…?」


僕は父親に説明をした。

自分が同性愛者であること。昨日の夜なにがあったかを…


「それはホントか…?」

「うん…」

「…とりあえずお前は学校に行きなさい」

「こんな時に学校なんか行けないよ!僕もここにいる!」

「わからないのか!?母さんはお前のせいで倒れたんだぞ!そんな時にお前が傍にいても仕方ないだろうが!私から何とか説得するから、お前は学校に行きなさい」

「説得って…?なんて言うの?」

「一時的な発作みたいなものだから、心配いらないとでも言うから」


………発作??

「うん…わかった。今日はバイトだから、夕飯いらない。そのあと友達と遊びにいってくるから、夜遅くなるね」

「あぁ、わかった」


僕は病院をでて家に帰り、学校に向かった。


……発作?僕は…病気なの?僕はここにいるだけで家族に迷惑をかけてるの?

僕は生きてるだけで母さんを倒れさせてしまうほど、ショックを受けさせたの?……僕は、僕は家族を壊してしまった。

ただ、同性を好きってだけで…

その瞬間、なんだか生まれてきた意味がないと感じてしまったんだ…足取りは重く、何もかも無気力になったが、なんとか学校に着いた。


もう昼をすぎていて、とりあえず友達と話して気を紛らわせようと思い、大学中を歩き回る。

すると、僕が歩く度に周りからヒソヒソと話し声が聞こえる。

………まさかね。


やっと友達数人が話してるを見つけ、話し掛ける。


「うぃーッス!」

友達はこっちを見ると、無視をして会話を続ける。

「ちょっと、シカトすんなよ!」

肩をさわった瞬間、ビクッとしてこっちを見た。

「触んなよ!ホモがうつるだろ!」


………えっ?ウソだ…

ここでも瞬が…?

「なんで…?」

「なんでって大学中で噂だよ。写真が掲示板に貼ってあったんだから」



僕は走りだした。

もうみんな知ってる?

僕のことを?

ありえないよ…

どうして??

もう嫌だ!!何も考えたくない!


家に帰り、部屋に入る。

ベッドに潜り、僕は泣き続けた。

どうして?男を好きになったらいけないの?

なんで?なんで…?


ただ時間だけが過ぎていった。

気が付くとバイトの時間。そうだ。由樹…由樹ならわかってくれる。

重い足をひきづってバイト先へ向かった。


「おはようございます」


「あっ、来たよ」

「あいつがまさかなぁ…」

また聞こえてくる話し声。

まさかここでも?

すると上司がこっちにきた。

「お前、ゲイなんだって?」

「えっ?」

「昨日変な男がきて、お前とその男がキスしてる写真を持ってきたんだ。別にそれはどうでもいいんだが、他のやつらに迷惑かけないようにしろよ」


………迷惑?僕が男を好きになるのにみんなに迷惑がかかるの?

「…はい、わかりました」

もう訳がわからなくなってきた。さっき泣いたせいか、もう涙もでない。

早く由樹に会いたい…



10時になり、上がりの時間。

「お疲れ様でした」

「お疲れさんでした」


周りからはクスクスと笑い声が聞こえる。

そんな中、由樹がはいってきた。

「由樹ぃ…」

「おはよう、光」

「みんな僕が同性愛者だってこと知ってるんだ。瞬がそこらへん回って、僕の知ってる人に言ってるみたいなんだよ」

「ふぅん、そう」

「ふぅん…って由樹?どうしたの?」

「別に。私これからバイトだから、じゃあね。お疲れさま」

「由樹…?どうしちゃったの?あっ、そうだ!トップは!?もってきてくれた?」

「トップ?そんなの知らない。忙しいから話し掛けないで」


そんな……

由樹まで…?



もう嫌だ…

どうして僕がこんな目にあわなきゃいけないの?

ただ男を好きってだけで…

もう…疲れた。

生きてる意味なんてあるの?

友達に裏切られて、家族を壊してしまい、知らない人からは笑われる。



……心。

そうだ。まだ心がいる。


僕は急いで待ち合わせの駅へ向かった。

何も考えられない。

ただ今は心に会いたいって思ったんだ。


駅に着くと、雨が降りだしてた。


心はまだ来てない。

遅れてるのかな?


その時、メールがはいってきた。心からだった。


「ごめん。少し遅れる」


なんでこんな時に限って…


僕はその場に座り込み、顔を伏せた。



どれくらい時間がたったかわからない。

その時、誰かが頭をぽんぽんと叩いた。


僕は顔をあげて上を見た。

すると、立っていたのは心じゃなかった。


そう…今回僕のことをあちこちで言ってまわった瞬の姿がそこにあった。

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