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強制認識

それからは僕らは毎週のように会うようになった。

毎回同じ居酒屋、最初はビール、途中からは決まって僕が書いた詩を二人で手直しする。

そんな日々がしばらくつづいた。



「何やってるの光?」

由樹の声。

「ん?あぁ、詩を書いてるんだ。」

「詩?光書けるの?」

「うん、まぁね」

「すごいじゃん!見せて見せて!」

「いやまだ見せるほど書いてないよ」

「いいじゃん!」無理矢理取り上げられた…

「…ってまだ一行じゃん…」

「だからまだ書いてないって言ったじゃん」

「でもなんで詩書いてんの?しかもバイトの休憩中にまで」

僕は由樹に心のことも含めて今までのことを話した。

「ふぅん…アンタその心君が好きなんでしょ?」

「えっ?!なんで?!」

「なんでってそんな笑顔で話してたら誰でもわかるって」

どうやらすごい嬉しそうに話してたみたい。

自分では全然気付かなかったけど…

「別に好きじゃないよ」

「じゃあなんで詩書いてるの?」

「書きたいからだよ」

「へぇ、今まで休憩中に書いてたことあったっけ?」

「ないけど…」

「次に心君に会うときまでに書いておきたいんじゃないの?」

うっ…するどい。。つーかここで書いてて、さっきの話聞いたらだれでもわかっちゃうか。

「そうだけど。まだ好きがどうかなんてわかんないよ。ただ…ほら!新しいの書いていくと喜ぶしさ!歌の話してるとなんかいい顔するんだよね!それにその話じゃないと会話が続かなくて、なんか淋しいんだもん」

「たぶんそれって世間一般で【好き】って言うんじゃない?」

はうっ…ばればれ。。

「認めちゃえばいいのに」

認めてるよ…でも認めたくないんだ。また誰かを好きになって、もし同じ目にあったら僕はもう立ち直れない…

「今、瞬のこと考えてたでしょ?」ぎくっ!こいつは何でわかるんだ!?

「なんでわかったの…?」

「アンタ顔にですぎだよ」

「そうかなぁ…」

「そうだよ。ちなみに今考えてることもあててあげよっか?」

「何?」

「その人のこと好きって認めて、もし付き合うようになってまた同じ目にあったらどうしよう…って。どう?」

「…当たりです」

「やっぱり…」

「だから好きになったなんて認めたくなかったんだよ。前のことがあるから」

「アンタさぁ、まだ付き合うって決めたわけでもないのに、考えることが早すぎだよ!別に好きだったら好きでいいじゃん?」

「…うん。でも好きだって自分で認めちゃったら、速攻で告っちゃう気がする。今はこの関係続けていきたいからさ」

「それはそうかもしれないけど、それって辛くない?淋しくない?」

「そりゃ淋しいけど、仕方ないじゃん…」

「私は会ってないからなんとも言えないけど、別に感情おさえる必要ないんじゃない?素直が一番だよ!」

「無責任だなぁ…」

「そんなことないよ!じゃあアンタはこれからそうやってこれから好きになった気持ちごまかして生きていくの?」

「だってそうするしかないじゃん」

「そりゃ無理だね」

「何で?」

「だって人間って誰かを一回好きになったら、独りで生きていくことなんてできないもん。無意識にまた誰かを好きになっちゃう。だったら何度傷ついても頑張らなきゃ!アンタは幸せになる努力してないだけだよ」

「…」

言葉を失う僕。確かに由樹の言うとおりだ。はわかってはいるけど、その度にあの時の辛さが頭をよぎる。

「わかった!?アンタは心君が好きなんでしょ?いい加減認めなさい!はいっ!決定!以上!」

「はい…」

こうして僕はかなり強引に認めさせられた。

なんだか嬉しいような辛いような変な気分だった。

でも確かなことは由樹がいてくれてよかったってことだ。

そう…あの日までは。

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