結成
僕と心がバンドを抜けて一週間経った。
僕は相変わらず心の家の家事をこなし、心は居酒屋でのバイトをしていた。
「心、明日休みだよねぇ?予定あるぅ?」
「いや、ないけど」
「そっか。じゃあ映画でも見に行かない?見たいのあるんだ!」
「そうだな。たまにはいいか」
「じゃあ決定ね!」
次の日僕らは映画館へと足を運んだ。
「あっ…」
「どうした?」
「見たいの終わっちゃってた…」
「そうなのか?」
「うん…」
「どうするんだ?なんか違うの見るか?」
「ううん。どっかでご飯食べよ!」
僕らは近くのファミレスへ入る。
平日にもかかわらず人がたくさんいた。
満員らしく入り口で席が空くのを待つ人も見える。
「すげぇ混んでるな。他んとこにいくか?」
「待って!あれ由樹と冬司さんじゃない!?」
待っているお客さんの中に二人の姿が見える。
「あっホントだ。ちょっと声かけるか」
店に入り、由樹と冬司さんに話し掛ける心。
「おぉ!心じゃん!どしたぁ?」
「飯食おうと思ったけど、こんだけ待ってるから違うとこにいこうかって光と話してたんだ」
「じゃあ一緒に食おうよ。たぶんオレらもうすぐだから!」
「いいのか?」
「いいよな?由樹?」
「うん!4人だと楽しいじゃん☆」
こうして僕ら4人は席が空くのを待った。
10分くらい待ったところで席があき、案内された。
みんなそれぞれ注文をし、料理が来るのを待つ。
トゥルルルル…
「心さん、携帯なってるよ!」
「あっ、えっ?誰だぁこの番号?…もしもし?………あっ!はい!はい!」
心は電話の相手に驚き突然敬語になる。
誰なんだろう?
「あっ、はい!わかりました!はい!失礼します…」
「心?誰だったの?」
「【ひだまり】の松田さんだった…」
「えっ!?なんていってたの!?」
「これからのことについて聞かれた…」
「ごめん…」
「光が謝る必要ないって」
「どうした心?何の話してんだ?」
心は冬司さんと由樹にデビューの話をした。バンドをぬけたことも…
「そっかぁ…」
「まぁ今となっちゃあ断るしかないけどな…」
「諦めちまうのか?」
「今はしょうがねぇよな…」
「ねぇ?冬司さん?ちょっといい?」
由樹が冬司さんを連れて外にでる。
「どうしたんだろう?」
「さぁ…?」
料理が全員分運ばれてきたところで二人が帰ってくる。
「どこ行ってたんだ?」
「なぁ心?ちょっと相談があんだけど…」
「どしたぁ?」
「オレら二人を仲間に入れてくれないか?」
「何のだ…?」
「バンド…に」
「あぁん?何だいきなり?」
「メンバー足りないんだろ?だからオレらだったら力になれるかもしんないから」
「お前楽器なんかできたかぁ?」
「オレドラムやってたんだよ昔。今は全然だけど…」
「私は最近までピアノやってたんだけど…役に立てないかな…?」
「うーん…」
しばらく無言になる心。かなり考え込んでるみたいだ。
「とりあえずご飯食べてから考えようよ!お腹すいちゃった!」
「そうだな!とりあえず食うか?なぁ心?」
「うーん…」
「食べた後言えばよかったかな…?」
「心?心ってば!」
「あっ、何?なんか言った?」
「ご飯食べてから考えようよ!」
「あっ、そうだな」
食べ始める4人。
僕と由樹と冬司さんが楽しくおしゃべりしてる横で一人考え込む心。
食べ終わり黙っていた心が口を開いた。
「なぁ二人とも?もしやるんだったら二つ問題がある」
「何だ問題って…?」
「一つはもし、デビューするとなると今やってる仕事をどうするか?もう一つは練習する時間があるからそれまであっちが待ってくれるか。この二つだ」
「仕事のことは心配するな。それはなんとでもなる。由樹ともそれはさっき話したんだ」
「そうそう☆いざとなったら私も働くし!」
「………ホントにいいのか?」
「だからいいって言ってるじゃん!こんなチャンスまたあるかわかんないんだろ?」
「わかった…じゃあちょっと電話してみるわ」
そう言うと心は電話をする。
3人とも無言で心の電話が終わるのを待つ。
しばらくすると心が電話を終え僕たちをみる。
「どうだったの…?」
「あぁ、………OKだって!!」
「マジで!?やったじゃん!!」
「すげぇことになったなぁ!」
「ただ条件があるんだ」
「何…?条件って?」
「半年。半年で仕上がるようにしろって。そうしなきゃこの話はなかったことになる」
「半年…」
「よぉし!やったろうじゃん!!」
「うん!私たちの力見せてやりましょう!!」
みんなかなり盛り上がっていた。
半年と言う短い期間。
ホントにいけるんだろうか?
「オレも練習しなきゃだしな」
「心はもうギターできるからいいじゃん?」
「いや、ギターは光に任せる。オレはベースをやるよ」
「えぇ!?じゃあギター僕一人!?」
「みんな役割があるんだ。頑張るしかないな!」
「う、うん…」
「じゃあさぁ!バンド名決めようよ!」
「そうかぁ…考えなきゃだなぁ」
「じゃあさぁ心の名前でいいんじゃねぇ?」
「いや、微妙じゃねぇ?」
「かっこいい名前考えても結局あとで後悔するかもしんないだし、こうゆうのは勢いだよ!勢い!」
「じゃあ心を英語にしようよ!【HEART】って感じ!」
「うん!それいいじゃん!決まりぃ☆☆」
「それでいいのかよ…?」
「だって心の夢だもの!誰も文句いわないよ!ねっ?」
「おうよ!」
「うん☆」
こうして新バンド【HEART】は結成された。
不安と希望を胸に僕ら4人は動き始めたんだ。