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真実

僕は街をあてもなく歩いた。


今更自分の家にも戻れない。


絶望と深い悲しみが心の奥をえぐっていくのが自分でもわかる。


すべてが闇に染まってしまえばいいのに。


そんな気分だった。


その時とどめを刺すように雨が降りだす。


「ついてないときはホントついてないな…」


もうどうでもいい。


信じてる人には裏切られ、帰る場所もない。


僕には何にもないんだ。。


無意識のうちに車道へと、足がそちらの方へ向く。


なんだか不思議な気分だ。車通りが激しいこの道に飛び出そうとする自分がいる。


しかし恐怖を感じない。

むしろ楽になる感じだ。


すべてを失った僕は今自分ですら失おうとしている。


フラフラっと車道へと出ていきそうになった。



「光っ!!!」


誰?


誰の声?


気のせいだな。


今更僕の名前を呼ぶ人なんていない。


僕は必要のない人間なんだから。。



「光っ!!光っ?!何やってんの!?」


僕を掴む腕。


由樹だった。


「アンタ何やってんの!?危ないでしょうが!?」



「由樹…?」


「傘もささないで風邪ひくよ?」


そっと僕に傘をさしてくれた。



「うるさいっ!!近づくな!!!」


僕は差し出された傘を振り払った。


「何?どうしたの光?何かあったの?」


「うるさい!!お前も心と一緒なんだろう!?僕のこと気持ち悪いと思ってるんだろう?!死ねばいいって思ってるんだろ!?」


「何言ってんの!?そんなこと思ってる訳ないでしょ!?」


由樹も僕も人が周りにいるにも関わらず大声で怒鳴りあった。


すると一人の男がこちらに駆け寄ってくる。


「おーい!由樹?!どうしたんだ!?」


「あっ、冬司さん…大変なの!光が…光が…!」


「光君がどうかしたのか?」


何故か冬司さんも一緒だった。

冬司さんはすごい目をしている僕に少し驚いたが、僕を見てこう言った。


「心と何かあったんか…?」


「黙れ!!心の話なんか聞きたくもない!」


ぞろぞろと野次馬も増えてくる。


「心は僕のギターを捨てたんだ!心には彼女がいたんだ!僕のことめんどくさいって言ったんだ!信じてたのに…本気で愛してたのに…お前らも一緒だろう!?僕のこと心の底では気持ち悪いって思ってたんだろ!?そうだよな!?僕、ホモなんだから!!男なのに男が好きなんだから!……もう誰も信じない!もう…騙されない…」


「心…?何があったの…?」


由樹は僕のほうへ一歩足を踏み出す。


「うるさい!近づくな!由樹だってホントはそうなんでしょ!?もう…騙されない…!」


僕は心のことがショックすぎて混乱していた。


すべてを信じられなくなり、すべてを疑った。



「もう嫌だ…もう嫌なんだよ…うわぁぁぁぁぁぁぁ!」


僕は頭を抱え、のたうちまわる。

こうなると周りの人は冷たい目を通り越して、哀れみのような視線を僕に向けた。


当たり前だ。


大声でカミングアウトをし、その上僕自身が壊れてしまっているのだから。。


その時冬司さんは僕の胸ぐらをつかんだ。


「バカ野郎!!心自身がそう言ったのか!?心はオレに言ってたぞ!あいつにはオレしかいない。オレにもあいつしかいないんだって!だからオレはあいつを守んだって!光君のことをそんだけ大事に思ってる奴なんてこの世に心だけだぞ!心に彼女がいるだぁ!?お前こそ心を信じてみろ!?好きなんだろ!?愛してるんだろ!?」


僕は冬司さんの言葉を聞き、一瞬落ち着いたがまた狂い始めた。


「うるさい…うるさい!うるさい!!その場にいなかったくせに勝手なこと言うな!」


僕は自分で言ってることが訳がわからなくなっていた。

冬司さんの言葉に動揺したのだろうか…?


パシンッ!!!


そして由樹は僕の頬を思いっきりひっぱたいた。


「光…私はアンタの味方だよ!!光のこと気持ち悪いなんて思ったことなんか一度もない!信じてよ!光は私の一番の親友なんだから…だから元の優しい光に戻ってよ…」



由樹の言葉に僕は地面に頭をつき、すごい声と共に涙を流し泣いたんだ。。


一体誰を信じたらいいのだろう…?


僕が信じなきゃいけないものは一体何なのだろう…?


もう頭の中がそればっかりで他には何も考えられなかった。




「心っ!!!」


冬司さんの突然の声と共に僕は顔を上げた。


すると人込みを掻き分け、心がそこに立っていた。


僕の大事なギターを持って。。


僕はすぐさま心の元へ走った。


「心…今までどこいってたの!?…この怪我どうしたの!?」


よく見ると心は顔にあざがあったりはれたりしていた。まるで殴られたような…


「あぁ、これか?バンド抜けるって言ったら、あいつらに殴られちまったよ。それだけならまだ我慢できたよ。オレがわがまま言ってるのはわかったからな。でもあいつらはギターを壊そうとしやがったんだ…!光から来てた電話も切られちまった。。だから急いで振り払ってギターとケータイ取り返して家に戻ったんだ。そしたら光がいないから探してたんだよ」

僕が聞いた話と全然違う…どっちがホントなの??


「お前今までどこに行ってたんだ?しかもこの人だかりは何だ?お前ら三人でなんかやってたのか?」


「僕はケータイ切られたから心配になってスタジオまで行ったんだよ!そしたらメンバーに心には彼女がいるからお前は騙されてるとか、ギターは心が捨てにいったとかいわれたんだ。だから僕…」


心は僕は抱き締め、こう言った。

「バカ野郎…そんな訳ねぇだろうが?好きでもないやつにキスなんかするわけねぇだろうが?それに言ったろ?オレがお前を守ってやるって。オレの居場所はお前なんだって」


僕はまた泣いた。

心の胸の中で。


心はいつでも僕を想ってくれていたのに。


僕には心しかいなかったように、心にも僕しかいなかったのに。


一番信じなきゃいけない人だったのに。


「ごめんね心…信じてあげられなくてごめんね…」


心は黙って僕の頭をポンポンと叩いた。


「よかったねぇ、光!」


少し涙声になってる由樹が言った。


「心もあんまり光君を泣かせるんじゃねぇぞ?」


「あぁ、わかってる」


「ごめんね由樹…由樹にもひどいこと言っちゃった…」


「もういいよ。いつもの優しい光に戻ったみたいだし☆」


「うん…ありがとう由樹」


「そういや何でお前ら二人でいるんだ?」


顔を見合わせる由樹と冬司さん。


「あっ、そうそう。実はオレら二人付き合うことにしたんだ!」


………?


「そうゆうことなの☆」


『えぇっ!!』


突然の告白に僕と心は大声をあげた。

せっかく散らばった野次馬をまた引き戻すような声だった。


「マジで?!」


「おう!マジでマジで!!」


「ははっ!そりゃいいや!なぁ光!?」


「うん!なんか嬉しいね!」



僕ら4人は雨が降る中、お互いの幸せを感じていた。


僕と心は再び戻った絆を。


由樹と冬司さんは新しく結んだ絆を。


僕はもう心を疑わないと誓った。

そして由樹も冬司さんも大事な人なんだと改めて感じたんだ。


いろんなことが起こった一日だった。


ただ一つ気掛かりだったのが心はこれからどうするかということだった。


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