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これが青春だ!!(悪魔じゃなかったらもっとよかったのに…)

 俺は昨日と同じくフォルムング邸の前に立っている。

 昨日は欲望にまみれ…、いやいや、愛と希望に満ち溢れた顔をしていたはずだったんだが…。

 今日の俺の顔は人生を達観した表情でこのドアの前に立っていた。


 ……だってさ、ご近所の皆さんの変貌しちまった我が家族に対する対応が何時もと変わらないんだぜ!?

 ほら、耳を澄ませれば聞こえてくる近所の主婦達のの井戸端会議。

 その中にウチの母が居る。…毒々しい色合いの蛇の下半身のままで…。





「岡田さんの奥さん、そのネックレス素敵ねぇ♪」


「そのトップ、ダイヤよね?1カラットはあるんじゃない?

デザインも良いわねぇ♪」「主人が昨日の結婚記念日に買ってきてくれたの♪いいでしょ♪

それより木崎さんの奥さんの巻いてるストールも綺麗だわぁ♪何処で買ったの?」


「駅前のショッピングモールのジ〇ンシーの春のセールで買ったの♪」


「えっ?私も行ったけどそんな良いショールなかったわよ!くやし~…」


「でも、良い色合いねぇ♪」


「そうよねぇ♪」


「偶々行ったら陳列してる途中だったんだ♪

でも、葛葉さんの奥さんの履いてるパンツ、どこのブランド?今年は蛇柄が流行だってこの前テレビで言ってたわ。そこで紹介してた有名ブランドの新作のパンツに見えるんだけど。」


「あらほんと。言われて気付いたけど、温和しい目の色使いで大人っぽいわぁ♪

やっぱり駅前のデパート?何処で買われたの?」


「あぁこれ?これは地肌よ」


「「へ~、地肌で今年の流行なんて良いわよねぇ~♪」」





 …。





 …なっ、変だろ…?

 その他の家族はどうかって言うと、鈴は背中の翼で飛んで学校に行った…。

 斜向かいの梅婆さんと普通に挨拶を交わしていたし、その他の近所の人の反応も同じで何時もと何ら変わらずだった。

 父さんなんか、ご近所の東海林さん家の柴犬のペスの背中に乗って出勤していった。

 それを見たご近所さんは「あら、葛葉さんのご主人、お早うございます。今日は少し肌寒いですね」とか、「おぉ葛葉さん、おはよう。今日はペスに乗って出勤かい?」とか…。






 …。






 俺がおかしいのか?!俺だけがおかしいのか?!俺が何かしたのか?!何故だー?!


 …何て脳内再生すること朝から数十回。

 もはやそれらを問うことも虚しく、すでに悟りの境地です。そんで疲れちゃって先程の達観した表情になるわけです。

 もう俺だけ恥ずかしくて背中の翼や尻尾や角を隠してたのが馬鹿らしくなって、制服の背中やお尻の部分に穴空けちゃいました…。

 …まあ、他人に化け物扱いされるより普通に接してくれている方が百倍ましってもんだ。

 …さて、リーナさんと学校に行きますか。

 昨日と同じくノッカーで扉を叩く。


「お早うございます、リーナさん。学校に行きましょう」


 声をかけて待つこと暫し…。


『…ふぁ~い、お早う御座います、匠さん…。どうぞお入りになって下さい…』


 昨日の別れ際の明るい声音とは全く逆の、低く沈んだリーナさんの声の返事が聞こえた。

 それに疑問を感じつつ、フォルムング邸の扉をそっと開けて中の様子を伺う。

 そして素早くバックダッシュ!



 …何故かって?



 だって目に付いたのはダイニングのテーブルに突っ伏して、テンションババ下がりがまる解りの負のオーラを出してる白い三角覆面(額には禍々しい赤黒い色の6が三角形に配置された妖しいデザイン…。塗料は何ですか!?絵の具ですよね!?血文字とかじゃないですよね!?)と、全身をすっぽりと覆う白いトーガを身につけたリーナさん(らしき人物)が居たから…。


 ……昨日のとは別バージョンの普段着なんだろうか……。


 気を取り直し、扉の陰からのぞき込むように暗黒霊気をまき散らすリーナさん(らしき人物)に恐る恐る声をかける。ビビってなんかないぞ!ひ、膝が震えてるのは武者震いだ!


「…あ、あの~、リーナさん?登校の時間ですよ…?」


『…ふぉ~、学校行きたくないよう~、匠さ~ん…』


 白い三角頭巾に空いた二つの丸い穴からエメラルドブルーの瞳が俺を見つめる。

 …瞳の色と声と昨日の事から予想するに、キテレツな衣服の中身はリーナさんで間違いないようだな…。この状態を見て思うに、この“普段着”のバリエーションはまだまだ在りそうだな…。

 しかし、なんという落ち込みっぷりだ…。リーナさんの周りの空間が暗く歪んで見える…。

 …突然、いそいそと立ち上がり今まで頭を預けていたテーブルの上の小物を片付け出すリーナさん。

 何をするのかと見ていれば…。


『ふーん、ふーん…。

学校休みたいよー…』



ゴロゴロゴロゴロ…



ゴロゴロゴロゴロ…



 …テーブルの端から端までを使って、玩具売場の所でよく見る駄々っ子のように転がり出すリーナさん…。


 変な所で几帳面で、そんでもって器用だな…。


 転がり落ちそうで転がり落ちずに転がり続けるリーナさんをこのまま眺め続けているわけにもいかないので、取り敢えず諌めて話を聞いてみよう。

 このまま放っといたら何時までもしてそうだ…。


「あの、リーナさん!」


ゴロゴロゴロゴロ…


ピタリ


『何ですか、匠さん?』


 白い塊がテーブルの上で突然静止して、白い覆面だけがクリッとこちらを向く。


 …止まって返事するんだったら、テーブルから降りようね、リーナさん…。


「…あ、あの、何があったんですか、リーナさん?昨日はあんなに元気になったのに…」


『…ふぇーん、匠さーん…。

…匠さんと親友になった事で興奮してて、よく考えたら昨日の事、何も解決してないんですよー…』


 なるほど、そういうことか…。


「リーナさん、昨日の事は済んだことだ。

今日、みんなにもう一回言うよ、リーナさんと話してって。

そしたら必ず、友達になってくれるよ。駄目なら何度でも頼むよ。

俺の友達はみんな良い奴だから、必ずリーナさんの良い所を解って友達になってくれるよ」



 珍しく熱弁を奮う俺を凝視する白い三角頭巾がコクンコクンと左右に傾く。


『…大丈夫でしょうか…?私が変な事をしたのに…、…多分…』


 …リーナさん、小首を傾げてるのか…?その格好でそんなことをしたら、暗黒の波動の受信し始めたのかと思ったよ…。

 まあ、昨日の亀家君のような祟り(?)に会うと思えば腰も引けるだろうが、それも彼の悪事があったからこそ。リーナさんに悪意有る行為をしなければ大丈夫だ。

 もしリーナさんに関わったり少々のスケベ心を持っただけで祟られるなら、俺なんか最初から祟られまくりだよ。


 …よく考えたら、一昨日、昨日と俺ってよく五体満足でいれたもんだ…。


「昨日の事は誰が見ても亀家君が悪いよ。ああなってあたりまえだよ。

でもね、一昨日からリーナさんと会っている俺は何ともないんだから、みんな解ってくれるさ」


 …まあ、俺は悪魔的な姿には成っちゃってはいるんだけどね…。

 誰も気にしてないみたいだから…、…うん、もういいや…。



ムクッ



 突然、テーブルの上に立ち上がるリーナさん。


 …今、予備動作無しで起きあがったように見えたんですが…。ワイヤーアクションですか…?


『…そうですね。私、まだ何も努力しないままヘコんでたら、今までと一緒です。

目指せ、友達100人!

匠さん、有り難う御座います。

私、制服に着替えてきます!ちょっと待ってて下さい!』


 どうやら気持ちに整理が着いて、やる気(と言っても、学校に行くだけなんだが…)になったようだ。

 リーナさんはテーブルから飛び降りると、勢いよく階段を駆け上がっていった。

 …ふうっ、取り敢えず何とかなったかな?






 あっ、裾踏んでコケた。







 という訳でどうにこうにか、時間ぎりぎりで教室に到着しました。

 だけどリーナさん、教室の扉を前に動きません。


「…リーナさん?」


 もう入らないと遅刻しちゃうよ?

 廊下には生徒の姿も疎らだ。

 あと二、三分もしたら朝のショートホームルームをやりにクラスの担任達が来るよ? おやっ…?リーナさんの肩が震えてる。


「…たたた匠さーん…」


 …うーん、昨日の今日でいきなり普通に教室に入れって言うのは無理か…。ここは俺が一肌脱ぎますか。

 こちらを涙目で見つめるリーナさんの瞳を見つめ、俺は無言で頷く。

 そして俺が扉に手を伸ばそうとすると、リーナさんが素早く動いた。


ズパンッ!!







 ……おーい、リーナさん……。


 何故に全力全開で扉を開けるのですか?

 俺が頷いたのは「俺が先に教室に入るよ」って意味だったのに…。


 その様子を見ていた俺でさえビックリしたのに、教室の中のみんなの反応は言わずもがな。

 リーナさん越しに開け放たれた扉から教室の中を見ると、みんな目をまん丸にしてそれぞれの格好でこっちを見てる。

 リーナさんが直立して眉間に皺を寄せると、元気イッパイに叫んだ。


「みのさん、お早うございもす!!」




 …リーナさんまた噛んだよね…。“みのさん”は特別な個人名だから問題がいっぱいだよ…。“みなさん”って言いたかったんだね…。

 そしてまた「もす」?呪い?呪いなの?




 突然のリーナさんの奇襲(?)に固まる我らがクラスメート。

 リーナさんの奇行(?)で廊下で固まった俺。

 みんなの出方を眉間に皺を寄せて教室の中を睨むリーナさん。




…。





……。




………。



 ……何だ、この時間……。


 そして突然時間が動き出した。

 クラスのみんなの首が窓際の前の席、亀家君の方にギギギ~ッてなかんじで向く。


 …怖~…。地味に怖~。


 みんなの無感情な視線に亀家君はビクンと体を震わせる。


 …おやおや、こりゃ相当酷い目にあったな。


 昨日の放課後の時点で頭に包帯だけだったのが、右目に眼帯と左手に包帯がグルグル。

 もしか…しなくても、リーナさんの呪いのせいだよね。

 “呪い”への恐怖が凄まじく彼の精神を痛めつけたらしく、亀家君はその端正な顔に恐怖の表情を張り付けてリーナさんを見つめている。

 …いや、見つめているというより、恐怖で目が離せないようだ。…こりゃ、トラウマ決定だな…。


「…ゅ、ゅゅ、ゅ…」


 亀家君は突然口を開いて何かを言おうとしたが、恐怖にヒキツった筋肉が邪魔をして喋ることが出来ない様子。

 すると、岩さんが席から立ち上がりのっしのっしと亀家君に近付くと、彼の背中に張り手を一発お見舞いした。



バチコーン!!



 強烈な一撃に二、三度咳込んだ亀家君は、恨めしげに岩さんを一睨みすると咳払いをして立ち上がると、先程より大きくハッキリとした声で喋り出した。


「…ゆ、許してくれ…。…き、昨日は悪かった…。…許してくれ…」


 そして、ギクシャクとリーナさんに頭をペコリと下げた。



 …嫌々感満載な謝り方だな…。誠実さが一欠片しか感じないよ。



 亀家君が頭を上げると岩さんが、もう一度亀家君の背中をバチンと叩いてにっこりと笑った。


「リーナはん、コイツも反省しとるから昨日の事、勘弁したってな。

それとやな…、儂等も…、…その…、すまなんだ!」


 岩さんがペコリと頭を下げると共に、クラスの全員が立ち上がってリーナさんに頭を下げた。クーもドロイドも頭を下げている。

 リーナさんは目が点。でも俺は何となく理解した。

 俺はリーナさんの両肩を持つ(セクハラじゃないぞ)と、グイと教室の中に押し込む。


「わっ!?た、匠さん!?」


 驚いて振り向いたリーナさんに俺はにっこりと笑いかけた。


「リーナさん、クラスのみんなが友達に成ってくれるってさ♪」


 リーナさんに軽くウインク♪


「へっ?友達?」


 まだ現状を理解していないリーナさんは目を白黒。

 俺は頭を上げた岩さんに目配せをして、言葉の先を促す。

 俺の視線に頷いた岩さんは申し訳なさそうに頭を掻きながら口を開いた。


「リーナはんの昨日のやったことは正当防衛や。何の落ち度も攻められる事もあらへん。

せやけど、儂等は“見た事無いもん”と言うだけでリーナはんの事を怖がってしもた。ほんな事したらあかんのにや。

恥ずかしながら、それに気付いたんが昨日の夜や。

みなもそんな感じちゃうか?」


 岩さんが教室を見回す。

 頷く者、うなだれる者、視線を逸らす者。でも、それが表すのただひとつ、肯定の一言。


「見ての通り、このクラスのみなが多かれ少なかれ悪い事してもうたと思とる。

せやから、リーナはんにこのクラス全員が友達になるいうことで勘弁してもらえへんやろか?

たっつぁん…、匠はんから聞いとるんやけど、失礼な話、リーナはんには友達がおらなんだと聞いとったんや。

勿論、弱みに付け込むようなつもりは無いんやけど、儂等クラス全員が友達になるっちゅうことで今回の事は堪忍してもらえへんやろか?」


 岩さんをはじめ、クラスの全員の真剣な眼差しがリーナさんに向けられる。

 …若干一名、亀家君と言う名の捻くれ坊主が視線を斜め下にむけているが…。



 ありゃ、岩さんが亀家君の向こう脛を蹴り飛ばした。見てないのに器用に蹴るな~。亀家君の脛にクリーンヒットしたぞ。



 俺は痛がる亀家君の様子に苦笑しながらリーナさんの肩をぽんと軽く叩く。


「…って言ってるけど、どうするリーナさん?」


 だけど、俺の言葉にリーナさんは無反応。



 …あれ?



 リーナさんの顔をのぞき込むと、焦点の合わない目を見開き、口を半開きにして固まったままのリーナさん。


 ありゃりゃ、脳内処理が追いついてないな。


 …突然リーナさんが激しく身震いすると、おどおどと小さな声で話し始めた。


「…あの、本当に、私なんかの、友達に、なって、くれるんですか…?」


 そんな小さな問いかけにクラスのみんなが次々に答える。


「昨日は申し訳なかった。是非、友達になってくれ♪」


「リーナさん、もしよかったら学園の案内するわよ♪」


「でもさ、友達と言えば、まずは自己紹介だろ?」


「ヤン・クリンでーす。よろしくー♪」


「俺、堀田 武。俺の創った超常現象研究部にはいらないか?」


「そんな妖しい部活より、私たちの占い研究会に入らない?

あっ、私は斉藤 望美だよ♪」


「それよりも僕達女子で放課後にフルーツイッパイのタルトが名物なカフェでお茶するんだけど、リーナさんがよければ一緒に行こう?

僕はセリーナ・ワギンナ。宜しく♪」


「素敵なお嬢さん、僕とお食事にでも行きませんか?駅前に雰囲気の良いリストランテがあるのですが…♪

その後、時間が許せば海の見える素敵なホテルの一室でシャンメリーで乾杯♪なんて素敵だと思いませんか?」


「リストランテやホテルなんかのチャラチャラしたもんはいらん!

…俺を昨日の言葉遣いで罵ってくれ!」


「それよりも俺をピンヒールで踏んでくれ!」


「ならば俺はM字開脚縛りと低温蝋燭攻めを要求する!」


「…生八つ橋と…萩の月、…食べる?」


 クラスのみんながリーナさんに笑顔で次々と話しかける。(一部、聞き捨て成らない言葉とカミングアウトがあったが、それは無視の方向で)

 もう一度俺はリーナさんの肩をポンと叩く。

 と、それに答えるように

「イリーナ・フォルムングです!リーナと呼んで下さい!宜しくお願いします!」

と満面の笑顔でみんなに答えた。正に破顔一笑♪


「よろしく!」


「よろしく!」


「ヨロシク!」


「ヨロシクお願いするよ、ふっ…♪」


「よろしゅうたのんます!」


「…よろしく」


 リーナさんの笑顔にクラスのみんなが笑顔で返答する。



 うんっ、これで何とか一件落着だね♪無理にでもリーナさんを学校につれてきてよかった♪



 とその様子を眺めていた俺のほうに少し振り返り、リーナさんが

「…匠さん、ありがとうございます…♪…匠さんに連れ出してもらったおかげで、私にこんなに友達が出来ました…♪」

と囁いた。


「いえいえ、親友として当然の事をしたまでです♪」


 と返すと、リーナさんの肩を掴んで(だからセクハラじゃないって)教室の真ん中に押してゆく。

 するとみんなはリーナさんの回りに集まってきてくれた。

 リーナさんは笑顔、みんなも笑顔。

(若干一名笑顔でないがそれは無視♪)


 うーん、青春だなー♪


 …ところが次にリーナさんの一言で俺は凍り付いた。


「あの、私、皆さんと仲良くなれたらと思ってクッキーを焼いてきたんです♪

食べていただけませんか?」




 え゛っ…。




 不安な予想で固まった俺をよそにクラスのみんなは大喜び。


「いいの?!」


「美少女手作りクッキー、来たー!」


「リーナさんお菓子作るの?私も作るんだ♪

今度一緒に作ろー!」


「マンセーはん、まだ来おへんみたいやから、みなで食てまお♪」


「わーい、おっかっしっ、おっかっしっ♪」


「…生八つ橋と…萩の月と…ウナギパイ、…食べる?」

 リーナさんのクッキー食べる?宣言に大いに盛り上がるクラスメイト達を余所に、俺の背中には冷ややかな汗がダリダリと流れ落ちていた。




 …リーナさんの手作り…。…嫌な予感しかしない…。




 俺の気持ちを知らないみんなは囃し立て、リーナさんは鞄の中をごそごそと探す。

 そして出てきたのは業務用サイズの特大タッパー。






 …ぉぃ…。…ちょ、ちょっと待てー!何だ今の鞄より大きな物が鞄から出てくる物理法則を無視した物は?!あれか?!ドラ○えもんの○次元ポケット的な物か?!




 俺の疑問を共感してくれる人は誰もおらず、クラスメイトの関心はリーナさんの手作りクッキーへ。


「うわっ、うまそー♪」


「ほんとにおいしそー♪」


「メッチャあるやん♪これ全部食てええんかいな?」


「はい♪遠慮なく召し上がれ♪」


『いただきま~す♪』


 そしてみんながタッパーに手を入れてつまみ出したクッキーを見て俺は再び固まった。


 ……なんだろう、このデジャヴュ……。


 みんなの手には、クッキーに短い触手のような物が生えている物体が捕まれていた。

 そう、それは小学生の理科の教科書で見た池に住んでる微生物のような物体X。

 それをクラスメイト達は躊躇なくぽりぽり食べ出した。









 …しゅ~るな画…。




 俺はただ、みんなと一緒にクッキーを食べることしか出来なかった…。


 せめてもの救いは、その物体Xが非常に美味なクッキー味であったことだろうか…。



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